2011.11.09
MICHEL CAMILO & TOMATITO
artist MICHEL CAMILO , TOMATITO
公演初日リポート:MICHEL CAMILO & TOMATITO
名盤『スペイン』、『スペイン・アゲイン』を生んだラテン・グラミー賞コンビ、ミシェル・カミロ&トマティートが白熱のライヴを行なっています。
ぼくは初日のファースト・セットに駆けつけましたが、「いきなりこんなに盛り上げるのか」と驚いてしまうほどのパフォーマンスでした。アコースティック・ピアノとアコースティック・ギターの組み合わせだけで、ここまで起伏に富んだ演奏を行ない、観客を熱狂させることのできるミュージシャンは本当に稀だと思います。
オープニングはアストル・ピアソラの「LIBERTANGO」。いきなりおいしいところがファンの前に届けられた、という印象を受けました。聴こえてくる音はピアノとギターなのに、ぼくは確かにバンドネオンの響きを感じました。トマティートは上半身をほとんど動かさずに弾きます。ただ指だけが楽器の上を舞うのです。
ステージではその他、カミロのオリジナル曲「TWILIGHT GLOW」、ビル・エヴァンスの「WALTZ FOR DEBBY」とジャズのスタンダード曲「STELLA BY STARLIGHT」のメドレー、「FUGA Y MISTERIO」(フーガと神秘)などが次々と登場しました。カミロのピアノは尋常ではない強弱のニュアンスに富み、この楽器が“ピアノフォルテ”という名称であったことを思い起こさせてくれます。
トマティートは右手のすべての指を駆使して、ナイロン弦のギターから歌うようなフレーズを紡ぎ出します。基本的にカミロのほうを見て弾いているので、殆どの観客は彼の正面ではなく横顔を見ることになるのですが、この横顔がまた、なんとも絵になるのです。俳優としても活動しているという話をきくと「なるほど」とうなずけます。「トマトちゃん」というかわいい芸名と、卓越した演奏、そして渋みのあるルックスのコントラストもまた、彼の魅力といっていいでしょう。
本編ラストでは、チック・コリアの大定番「LA FIESTA」が登場。過去、多くのミュージシャンがとりあげてきたナンバーですが、なにしろ作者自身のヴァージョンが偉大すぎるため、意外と独創的な解釈は少ないような気がします。しかし、このふたりの演奏は例外です。「これが俺たちのラ・フィエスタなんだ」という声が聞こえてきそうな、入魂のプレイでした。思えばカミロとトマティートのコンビは発足当時、チックとパコ・デ・ルシアのそれに比べられたこともありました。しかし今の彼らは、もうどのピアノ〜ギター・コンビとも比較できないほどワン&オンリーの世界を確立しています。
ブルーノート東京のホームページを見ると、この日のセカンド・セットではまったくといっていいほど別の曲が演奏されたことがわかります。なにしろ幅広いレパートリーを持つカミロとトマティートです。本日以降のステージでは、いったい何が飛び出すのか。わくわくしながらライヴを楽しもうではありませんか。
(原田 201111.9)
●11.8tue.-11.12sat.
MICHEL CAMILO & TOMATITO
coming soon