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VINCENT GALLO

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VINCENT GALLO - ヴィンセント・ギャロ


公演初日リポート:VINCENT GALLO

俳優、映画監督、画家、ミュージシャンなどさまざまな顔を持つ男がヴィンセント・ギャロです。「天は二物を与えた」どころか、ギャロの場合、天から三物も四物も与えられ、しかも、いずれも高く評価されているのですから、心憎い限りです。『Essential Killing』という作品で本年度のヴェネチア国際映画祭で最優秀主演男優賞に輝いたのも記憶に新しいですね。

今回はミュージシャンとしてのギャロが120%満喫できるクラブ公演です。俳優として知られるようになる前から音楽活動をしていたというだけあって、ギターもヴォーカルもキャリアの深みを感じさせ、いわゆる“役者さんの音楽”だと思って接すると吹っ飛ばされるほどのインパクトを受けることでしょう。曲によってはベースやドラムスも演奏し、さらにメロトロンまで弾いておりました。メロトロンというのは1960年代後半から70年代前半にかけて、主にプログレッシヴ・ロックの世界で使われた楽器で(といっても、ジャズ畑でもハービー・ハンコック等が演奏しておりましたが)、元祖サンプリング・マシーン的な楽器です。鍵盤を押すと中に入っているテープがまわり、ストリングスのような音やフルートのような音を出します。理屈の上ではデジタル・シンセでも似たような響きは出せるはずなのですが、あえてメロトロンを持ってくるあたり、ギャロの“ヴィンテージ志向”と音楽オタクぶりを感じ、なんだか彼が一層身近に感じられました。

オープニング・ナンバーでギャロはオーディエンスに背中を向け、アンプにギターを近づけながら演奏します。2曲目からは正面を向いてくれるかなと思ったのですが、それはかなわず、ドラムスを叩いているとき以外は基本的に背中、もしくは横顔しか客席からは見えなかったはずです。ヴォーカルはつぶやくように、ささやくように披露されました。その歌声には晩年のチェット・ベイカーの歌唱を思わせる退廃的な美しさがありました。映画「ティファニーで朝食を」からの「MOON RIVER」、キング・クリムゾンの「MOONCHILD」等のカバーも絶品で、ぼくはなんだか霧深き月夜をさまよっているような気分になりながら、ギャロの一音一音に耳を傾けてしまいました。他にも、2001年にリリースしたアルバム『When』からのナンバーも数曲演奏がありました。

曲間のMCもおじぎもなく、最後に「サンキュー、グッドナイト」と言っただけ。しかし、このそっけなさがいいのです。曲目やメンバーを丁寧に紹介し、深々とおじぎをし、有名曲で観客を乗せ、何度もアンコールに応えるだけがライヴ・パフォーマンスではありません。ぼくはギャロの“つっぱり”が、すごく気持ちよいものに感じられました。“俺はちっともつっぱってないよ”と返されそうですが・・・。
彼にはいつまでも、ヴィンセント・ギャロという美学を貫き通してほしいものです。
(原田 2010 11.30)


● 11.30 tue. - 12.2 thu.
VINCENT GALLO
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*** 本公演はアーティストの意向により、ライブの写真及びセットリストの掲載がございません。

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