米音楽界の重鎮ハーブ・アルパートが48年ぶりの来日公演 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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米音楽界の重鎮ハーブ・アルパートが48年ぶりの来日公演

米音楽界の重鎮ハーブ・アルパートが48年ぶりの来日公演

ハーブ・アルパート&ラニ・ホール公演:延期のお知らせ

4月17日(金)から20日(月)まで行なわれる予定でしたハーブ・アルパート
&ラニ・ホール公演は、 体調不良により公演を延期することとなりました。


ハーブ・アルパート氏から日本のファンの皆様にメッセージが届いております。 皆様には大変ご迷惑をおかけすることとなりまして誠に申し訳ございません、深くお詫び申し上げます。
 延期をしての新たな公演日程については、決定次第、ブルーノート東京HP等で改めてご報告いたします。

※本公演をご予約いただいていたお客様には順次メール、電話でご連絡を差し上げます。
※インターネット予約で事前にクレジット決済がお済みのお客様には、返金の手続きをさせていただきます。
 ご不明の点がある場合は、お電話にてお問い合わせいただきますようお願い申し上げます。
 CALL:03-5485-0088

2015年4月11日
ブルーノート東京

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Message from Herb Alpert

April 11, 2015

Dear Beloved Fans in Japan,
Lani and I came home after a 3 week tour in the unusually cold eastern part of the United States,
and were looking forward to presenting our concerts at the world famous Blue Note in Tokyo.
Just 2 days after we returned home, we both came down with upper respiratory infections.
Due to our illnesses we had to reschedule, on our doctors orders,
claiming that we both should not fly and that I should not play the trumpet at this time,
due to my ear infection.
Hope you understand. We are very sorry and looking forward to seeing you soon.

Herb Alpert

親愛なる日本のファンの皆さまへ

ラニと私はアメリカ東海岸で3週間に渡るツアーのあと、ブルーノート東京で演奏することをとても楽しみにしておりました。しかし東海岸での異例な寒い気候のなかツアーを追えて自宅に帰った私たちは体調が悪くし、医師から飛行機に乗ることまた演奏することを止められてしまい、今回の公演は延期せざるを得ない決断に至りました。
非常に心苦しい決断となり申し訳ない気持ちでいっぱいですが、皆さまにご理解いただきたく、そう遠くない日にお会い出来ることを楽しみにしております。

2015年4月11日
ハーブ・アルパート

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HERB ALPERT & LANI HALL
2015 4.17 fri. - 4.20 mon.
西海岸のサウンドを作り上げた
米音楽界の重鎮が
48年ぶりの来日公演

(( インタビュー:朝妻一郎/フジパシフィックミュージック ))

 "ポップ・マエストロ"ハーブ・アルパートは、誰の耳にも届いている西海岸の空気を纏ったあの音を作り上げたひとりと言っても過言ではない。今回は、長きに渡りハーブ主宰のA&Mレコードと日本の橋渡しをしてきた朝妻一郎氏とともにその功績を振り返ってみたい。

朝妻一郎(あさつま・いちろう)
株式会社 フジパシフィックミュージック 代表取締役会長
フジサンケイグループの音楽出版社フジパシフィックミュージックに設立より携わり、大瀧詠一、山下達郎、サザンオールスターズ、オフコース等のレコード制作に関わる。ハーブ・アルパートをはじめA&Mレコードとは1970年より親交をスタートさせる。

 ハーブ・アルパート作品には名曲がたくさんあるが、日本のリスナーにもっともなじみ深い曲は「Bittersweet Samba」だろう。1967年にスタートして現在も続くラジオの深夜番組『オールナイトニッポン』のテーマ曲として、50年近く愛され続けている。朝妻一郎さんが、ニッポン放送プロデューサー、高崎一郎さんに選曲を依頼されたことがきっかけで番組のテーマに採用された。

「番組スタート当時、高崎さんはフジパシフィック音楽出版の専務で、僕の上司です。さっそく僕はハーブ・アルパート、ティファナ・ブラスの『Whipped Cream & Other Delights』(邦題・以下同/蜜の味~ビタースウィート・サンバ)から「Lollipops And Roses」(あめんぼうとバラ)を提案しました。しかし、高崎さんの反応は微妙で、悪くはないけど、もっと合う曲はないのか? と。そこで2人で同じレコードのほかの曲をチェックして、『Bittersweet Samba』を見つけたんです。高崎さんが、コレだ! と」

 2人のセレクトは当たった。「Bittersweet Samba」はリスナーに大いに歓迎された。 「何かを期待させるメロディとリズムだからでしょう。新しい明日、新しい時代を予感させてくれる明るさがある。ラジオの深夜放送のメインリスナーである受験生が希望をイメージしたのだと思います」

妻ラニ・ホールはセルジオ・メンデス&ブラジル'66でリード・ヴォーカルを務め、ハーブの作品にも参加してきた。ジャズとラテンが融合されたホットなステージが日本でも実現する。

カーペンターズのレコーディングに
ハーブがいた

 朝妻さんが初めてハーブ本人に会ったのは1970年。ロサンゼルスのA&Mスタジオだった。
「カーペンターズのレコーディングを見に行ったら、そこにいたのがハーブでした。彼は当時ティファナ・ブラスのリーダーであると同時にA&Mレコードの社長でした。カーペンターズは'69年にビートルズのカヴァー『Ticket To Ride』(涙の乗車券)でデビューしていますが、2枚目のシングルとして、彼らの代表曲の1つにもなった『Close To You』(遥かなる影)を歌わせたのがハーブです。『Close To You』は、バート・バカラックとハル・デイヴィッドの黄金コンビによる楽曲です。しかし、'63年にリチャード・チェンバレンが、'65年にディオンヌ・ワーウィックが歌ったものの、大きなヒットにはなっていません。バカラック=デイヴィッドの作家チームは、ハーブにも歌うことを提案しています。しかし、断ったそうです。『Close To You』の歌詞は若い男女の恋愛をイメージさせる内容で、ハーブはすでに30代後半にさしかかっていたからです。でも、作品の完成度は高い。そこで、ハーブの勧めでカーペンターズが歌うことになったわけです」

 その後、A&Mの日本での出版権をフジパシフィックが手掛けることになり、朝妻さんとハーブとの関係はより近いものに育っていった。

「ご承知の通り、A&Mはハーブ・アルパートのイニシャル"A"とジェリー・モスの"M"で命名されました。所属ミュージシャンにもAとMの個性が反映されていたように思います。カーペンターズをはじめアメリカ西海岸らしいサウンドはハーブの主導。ポリスやスーパートランプなどイギリスのロックバンドはジェリーが主導だったように感じます。今回来日するハーブの奥さん、ラニ・ホールがシンガーとして参加していたセルジオ・メンデス&ブラジル'66はまさしくハーブのテイストでしょう。セルジオはブラジル人なのに、ブラジルの音楽にありがちな土臭さがなく、洗練を感じますよね。だからといって、いわゆるCTIレーベルの域まではいかない。多くのリスナーに受け入れられる絶妙なさじ加減の洗練です。まさしくハーブのセンスだと思いますよ」

「デザインも素晴らしいですよね」とライナーノーツも手がけた朝妻氏。ディレクターのトム・ウィルクスは当時のトップ・グラフィック・デザイナーであり、サイケ/ヒッピー文化をデザインで先導した人物でもある。

西海岸を奏でる、洗練された音色

 その個性は、トランペット奏者としてのハーブ自身の演奏にも表れている。

「心を動かされる音楽には、僕は大きく分けて2種類あると思うんですよ。1つは、切ない気持ちに浸って涙の海で泳ごうよ、という音。もう1つは、すかっと明るく、元気にやろうぜ!という音。アメリカは大きな国ですから、東海岸と西海岸では音楽の質がまったく異なりますよね。極端に言えば東は涙系、西は元気系が多い。この東西の違いは管楽器とドラムスの音に特にはっきりと表れているんじゃないでしょうか。ニューヨークのジャズミュージシャンのトランペットは、ミュートを利かせることもあり、濃密で、情緒的な響きが多い。一方、ロサンゼルスを中心とした西海岸の音には乾いた響きがある。透明感を覚えます。そして、大らかです。私たちが出張でニューヨークへ行くと、まる一日ぎっしりとビジネスができます。東京と同じです。ところが、ロサンゼルスでは、午前に1件、午後に1件、案件をすませたら、3時には上がりです。そういうゆったりした感覚が、音楽にもはっきりと表れています。なんというのでしょうか、夜クラブで生演奏を聴くのはもちろん、晴れた週末の朝にCDで聴くにも最高の響きです」

 さて、今回の来日公演では「Bittersweet Samba」をはじめ「Rise」「Lonely Bull」「Taste Of Honey」(蜜の味)「Tijuana Taxi」......などが演奏曲として予定されている。

「代表曲はひと通りやってくれる印象ですね。いいショーになることは間違いないでしょう。オーディエンスにとって楽しい夜になるはずです」

 妻のラニさんが参加することから、セルジオ・メンデス&ブラジル'66がレコーディングした曲を メドレーで披露する案もある。「Mas Que Nada」をはじめ「Fool On The Hill」「Night & Day」「One Note Samba」「The Look Of Love」......あたりだ。

「3年前にロサンゼルスのシビック・センターでハル・デイヴィッドの90歳のバースデー・パーティーがありましてね、僕も観に行ったんです。ハーブとラニも出演しました。ステージに登場したラニが『The Look Of Love』を歌い、間奏部でハーブがトランペットで参加して、客席は総立ちになりました。この曲は間違いなくやってくれるでしょうね」

 こうした代表曲に加えて、ハーブが何を演奏し、ラニが何を歌うか、期待は膨らむばかりだ。

「僕はね、やっぱり『オールナイトニッポン』のテーマ曲になり損ねた『Lollipops And Roses』が聴きたい。ライヴでね。オーディエンスが、これもテーマ曲として悪くなかったんじゃないかな、って感じてくれたら嬉しいですね。でも、『Bittersweet Samba』にはかなわないかな......。それでも聴きたいなあ。『Lollipops And Roses』を。いい曲なんですよ。やってくれることを祈っています」

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 '62年に同じくプロデューサーのジェリー・モスとともに設立したレコードレーベル。契約アーティストにジョー・コッカー、リタ・クーリッジ、カーペンターズ、ピーター・フランプトン、ポリス、ジャネット・ジャクソン等。"A"はアルパート、"M"はモスの頭文字である。

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 ソングライター ルー・アドラーとともに制作したサム・クックのヒット曲「ワンダフル・ワールド」がキャリアのスタートとなる。左のジャケットはサム・クック『ベスト・オブ・サム・クック』

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 '67年公開の「007/カジノ・ロワイヤル」は音楽担当にバート・バカラック、メインテーマがハーブ・アルパート&ティファナ・ブラス。左のジャケットはバート・バカラック『007/カジノ・ロワイヤル』オリジナル・サウンドトラック。

photography = Hiroyuki Matsukage [ portrait / Ichiro Asatsuma ]
interview & text = Kazunori Kodate

❶『South of the Border』1964 ❷『Whipped Cream & Other Delights』1965 ❸『Rise』1982 ❹『Fandango』1982 ❺Herb Alpert with Lani Hall『Steppin' Out』2013 ❻『In The Mood』2014 (全てShout! Factory)

神舘和典(こうだて・かずのり)
1962年東京出身。音楽ライター。『新書で入門 ジャズの鉄板50枚+α』(新潮新書)『25人の偉大なるジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)、『上原ひろみ サマーレインの彼方』(幻冬舎文庫)など著書多数。

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