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パキート・デ・リベラの、叙情的なメロディを奏でる2本の愛器

パキート・デ・リベラの、叙情的なメロディを奏でる2本の愛器

ラテンからジャズ、クラシックまでを吹きこなす
往年の名プレイヤー、パキート・デ・リベラ。
彼が愛用する 2本の楽器について迫る。

 キューバ出身のパキート・デ・リベラは、伝説的ラテン・ファンク・バンド「イラケレ」をはじめ、ディジー・ガレスピー・ビッグバンド、クラシックの交響楽団との共演など、各フィールドで地位を築いている名プレイヤー。サックスとクラリネットのサウンドを巧みに使い分けるのが彼のスタイルで、去る10月に行なった来日公演でも、 2つの愛器を手に叙情的なメロディを奏で、極上の空間を演出した。

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 この写真で床の上にある彼のクラリネットはルイス・ロッシ製のオーダーメイド・モデル。一般的にクラリネットは樹脂製、あるいは「グラナディラ」という木材を使った黒いボディのものが多いが、彼のモデルは「ローズウッド」材を使用した茶色の木目が美しい 1本である。また、彼が手にしているアルト・サックスは何と日本製。ヤマハYAS875のブラック・ラッカー仕様という、ゴージャスな外観が目を引くモデルで「黒い管体が気に入って、1995年ごろに手に入れたんだ。デイヴ・サミュエルズ(vib)とカリビアン・ジャズ・プロジェクトをやっていたときだよ」とのこと。ちなみにサックスは塗装によって金属の振動の仕方が変わるため、ブラック・ラッカーはサウンドにも大きく関わっている。曰く「ゴールドのものとは違う、個性的な音色に魅了されたんだ。しかもすごく吹きやすい。日本の匠の技が生きてるね」と、絶対的な信頼を寄せているようだ。

 ラテンを演奏するに必要なのものは?という質問には、冗談まじりにこう答えてくれた。「ラテンに大事なのは1にリズム、2にリズム。とにかくリズムだ。もしリズムが苦手なら、クラシックにでも転向することを考えたほうがいいね(笑)」。シンプルかつ深い、巨匠のお言葉である。

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セルマー・メタル Fを模したという特注のラバー製マウスピース(マイケル・マニングス作)。
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ベルには植物の彫刻が施されている。ブラックのボディにゴールドが映える、豪華な外観だ。

photography =Takashi Yashima
interview & text = Kenichiro Kawahara
cooperation =Rittor Music

Paquito D'Rivera(パキート・デ・リベラ)
1948年生まれ。キューバのハバナ出身。幼少よりクラシックに親しみ、70年代にはラテン・ファンク・バンド、イラケレを結成。その後、現在までさまざまな活動を展開してきたラテン/ジャズ界の大御所プレイヤー。
河原賢一郎(かわはら・けんいちろう)
1982年生まれ。編集者/ライター。サックス&ブラス・マガジン、ギター・マガジン、ベース・マガジン、大型ロック・フェスのパンフ、教則本、 Webといった音楽系メディアを中心に、編集・執筆中。

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