予測不可能 ?!ショーンとシャーロットの初来日公演 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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予測不可能 ?!ショーンとシャーロットの初来日公演

予測不可能 ?!ショーンとシャーロットの初来日公演

予測不可能 ?!ショーンとシャーロットの初来日公演

ミュージシャンとして確固たる才能を示してきたショーン・レノンと、クリエイティヴィティ溢れる才女、シャーロット・ケンプ・ミュール率いる "THE GOASTT"が初来日。
今回はヨーロッパツアー中の2人にインタビューを敢行。様々な音楽と向き合ってきたショーンの言葉に未知なるステージへの期待が高まる!

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 ビースティ・ボーイズのレーベル、グランド・ロイヤルからファースト・ソロ・アルバム『イントゥ・ザ・サン』を発表したのが98年のこと。その後も実母、オノ・ヨーコのバンドへの参加も含め、マイ・ペースかつ幅広く音楽と向き合ってきた。そんなジョンとヨーコの"ビューティフル・ボーイ"ことショーン・レノンも今年39歳を迎える。

 08年にはレーベル=キメラ・ミュージックを設立。ヴィンセント・ギャロや日本のコーネリアスらと交流、共演するなど充実した創作活動をみせるようになっているが、そのショーンが現在のパートナーであるシャーロット・ケンプ・ミュールと組むユニット、ザ・ゴースト・オブ・ア・セイバー・トゥース・タイガー(THEGOASTT)として、セカンド『ミッドナイト・サン』を引っさげブルーノート東京に登場することとなった。

ビートルズ、フェリーニ...60年代を現代的に再解釈

「最初の1枚は歌詞も聞き取りやすい、アコースティックな作品にした方がいいよって周囲の友人たちがアドバイスしてくれてね。それでファースト『アコースティック・セッションズ』はああいう内容になったんだけど......実は少しいら立っていたんだ。僕もシャーロットもサイケというかロックしまくったアルバムを早く作りたかったから(笑)。だから今度のアルバムは僕もシャーロットもすごく満足しているんだよ」と、来日前の多忙な時期に取材に答えてくれたショーン(今回の発言は全てショーンのものによる)。シャーロットは、モデル、女優、音楽家、フォトグラファーといくつもの顔を持つ才女だが、そんな彼女とショーンは、ロックンロールが変革の中にあった60年代という時代が持つ未知の強さに惹かれているのだという。

「60年代の10年間は、恐らく惑星も恒星もみんな一列に並んで手を組んでいたんじゃないかと思うくらい、ある種の創作的ルネッサンスが起きていたことは間違いないと思うんだ。ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』しかり、フェリーニの映画『81/2』しかり......。あらゆるアーティストが、その後の僕らは出会ったことのない類のインスピレーションに満ち溢れていた気がするよ。しかも当時はベトナム戦争が泥沼化していく混迷の時代でもあった。もちろん現代も混迷しているけど、今、ストレートに"戦争反対!"なんて歌詞を書けばそれでいいわけじゃないよね。今ならもっと陰影を添えた口調になる。それが僕らの時代だ。それと同じで、僕らの音楽は確かに60年代サイケのようなところがあるけど実際は音作りも思想も現代的なものなんだ」

写真右はブルックリンのフリー野外映画イベント。この9月のヨーロッパツアーではベックとの共演もあり、ライヴを精力的に行っている。/メンバー左からロバート・マンガノ(g)、ティモシー・キュール(ds)、ショーン・レノン(vo,g)、ジャレッド・エリオセフ(key)、シャーロット・ケンプ・ミュール(vo,b)

2人の感覚が結実するそれが "THE GOASTT"

 フランク・シナトラやペギー・リーらの歌唱で知られる「GoldenEarring」のカヴァーも含む新作『ミッドナイト・サン』はソングライティングや演奏の9割方をショーンとシャーロットの2人でこなした作品だ。レコーディング自体はデイヴ・フリッドマン(フレーミング・リップス、マーキュリー・レヴ他)のプロデュースのもと、ニューヨークで行なわれているし、部分的にマーク・ロンソンとの作業も含まれているが、全体的に密室的で幻惑的、その一方でどこか洒脱なユーモアも交えたアシッド・サイケ・フォーク・ポップといった内容に仕上がっている。

「このユニットのそもそもの誕生のいきさつっていうのは、最初僕とシャーロットでシド・バレットのアルバム『帽子が笑う...不気味に』を聴いていたことなんだ。あれはフォーク半分、サイケデリック半分、という感じのアルバムだよね。その時ふっと気づいた。僕の曲はアコーステイックが基本でドラムがないことが多い。つまり、シド・バレットのようなポスト・ポスト・モダン的な感覚に近いんじゃないかってね。さらには、サルヴァドール・ダリ少々、映画『マトリックス』少々、ジョージ・オーウェル少々、ルイス・キャロル少々、みたいな感じの世界観。それが今度のアルバムで結実しているような感じがするんだ」

「アルバム・タイトルの意味は...... 'sun=太陽'という言葉が表す僕の世間知らずで楽観的な若さに対する、'dark=暗い'従兄弟という感じ。太陽は確かに日本を象徴する言葉でもあるし、僕の中に日本人の血は流れているけどそこは意識しなかったな。もっとも、潜在意識がいかに表出するか、本当のところは誰にもわからないね」

interview&text = Shino Okamura

Sean Lennon(ショーン・レノン)
1975年、ニューヨーク生まれ。ジョン・レノンとオノ・ヨーコを両親に持ち、'98年に「Into theSun」でデビュー。 2004年にシャーロットと知り合いザ・ゴーストを結成。
ホンダ FREEDのTVCMにも出演。

Charlotte Kemp Muhl(シャーロット・ケンプ・ミュール)
1987年、アトランタ生まれ。 16歳でイギリスの「Harper's andQueenmagazine」の表紙を最年少で飾るなど、ミュージシャン、写真家、女優、モデルといった様々な顔を持つ才女。

岡村詩野(おかむらしの)
ミュージック・マガジン等での執筆の他、京都精華大学の講師も務める。ラジオ『KyotoJumbleStreet』(KBS京都・日曜 20:00〜)のパーソナリティ。

 ミッドナイト・サン(デラックス・エディション)

『ミッドナイト・サン(デラックス・エディション)』
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