小野リサさん、スペシャルインタビュー | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

News & Features

小野リサさん、スペシャルインタビュー

小野リサさん、スペシャルインタビュー

ブラジルの名曲を歌った新作を携え、
爽やかな歌声が運ぶリオの風

約15年間、音楽で世界の旅を続けてきた小野リサが、久しぶりに故郷のブラジルに里帰りした新作『Brasil』を手みやげにブルーノート東京に帰ってくる。新作について、そしてライヴへの意気ごみを聞いた。

READ MORE

 こういうアルバムを待っていた!というファンの方も多いだろう。ブラジル・リオのミュージシャンたちとの共演で、小野リサがブラジルの名曲を歌ったニューアルバム『Brasil』。ボサノヴァやサンバからブラジル北東部の音楽のエッセンスを取り入れた曲まで幅広く取り上げ、小野リサのナチュラルでハートウォーミングな歌声がブラジル音楽のカラフルで多面的な魅力を描いている。

「今回は、60年代から70年代に作られた楽曲を中心に歌いました。当時のブラジルでは、50年代の終わりに生まれたボサノヴァの影響を受けた大勢のミュージシャンがそれぞれ、自分たちの音楽を追求していて、素敵な曲をたくさん作っていました。とても素晴らしい時代だったと思います。私自身にとっても、昔からずっと聴いてきたけれども実際に歌ったのは今回が初めて、という曲がたくさんあって、とても新鮮でした。と同時に、とても懐かしく感じました。録音に参加してくれたミュージシャンもカリオカ(リオっ子)で、リオのいい空気が入っているアルバムが出来たと思います」

『Brasil』の共同プロデューサーとアレンジャーは、ギタリストのマリオ・アジネー。自身のリーダー・アルバムを数多く発表しているほか、アントニオ・カルロス・ジョビンをはじめとするブラジル音楽界のレジェンドたちの作品集など、数多くのプロジェクトを手がけている敏腕プロデューサーだ。小野リサの長年の友人で、彼女の過去のアルバムでもアレンジを数多く手がけてきた。小野リサが最も信頼する音楽家でもある。

「マリオと初めて会ったのは1990年、私がリオでセカンド・アルバムの『ナナン』を録音していたときで、すぐに気心が知れた友人になり、家族ぐるみのおつきあいが続いています。私をアントニオ・カルロス・ジョビンに紹介してくれたのもマリオでした。素晴らしい音楽家で心から音楽を愛していて、キャラクターは根っからのリオっ子、イパネマっ子です。彼の家は音楽ファミリーで、弟のシコ(ピアノ)はマリオと一緒に今度のライヴにも参加します。2人の妹、マウシャとムイーザも歌手として、そしてマリオのお嬢さんのアントニアも歌手、ギタリストとして活躍しています。ちなみに、もう一人のお嬢さんの名前はジョアーナで、マリオが尊敬するアントニオ・カルロス・ジョビンとジョアン・ジルベルト、この2人の名前を女性の名前にして娘につけたと話していました」

 信頼するパートナーと共に作った『Brasil』のサウンドは、これまでの小野リサのアルバムと比べてサンバのリズムが強調されている。マリオ&シコ・アジネーのコーラスもふんだんにフィーチャーされ、より賑やかで快活な印象を受ける。マリオ・アジネーらをリオから迎えて行なう今回のライヴも、今までの "しっとりとボサノヴァを歌う小野リサ" というパブリック・イメージだけにとらわれない、ヴァリエーション豊かな内容になるだろう。

「アルバムにも入っている、私の歌と男性のコーラスのかけ合い、そして今回のバンドにはホーン・プレイヤーも3人いますので、賑やかでハッピーなライヴにしたいと思っています。最後はぜひ踊ってください」

 今年でデビュー25周年を迎え、約15年ぶりに母国ブラジルの音楽に里帰りした小野リサの新たな門出が、14年ぶりとなるブルーノート東京でのライヴからスタートする。折しもブラジルでは、4年に一度のサッカーの祭典の真っ最中。小野リサが歌うブラジルの名曲に耳を傾けながら地球の反対側に想いをはせ、真夏の祝祭気分を先取りしよう。

写真は、5月、前日の雨のせいか清々しい気候の中、ブラジル通が集う渋谷の〈BAR BOSSA〉での取材にて。英雄ペレがいたワールドカップのときはブラジルにいたという小野リサさん。試合中の不思議なくらいの街の静けさ、勝利のときの喝采、一体感を今でもよく覚えていると、当時の思い出を語ってくれた。

photography = Hiroyuki Matsukage [ portrait / lisa ono ]
interview & text = Jin Nakahara
cooperation = 駐日ブラジル大使館、BAR BOSSA

小野リサ(オノ・リサ)
サンパウロ生まれ。89年、『カトピリ』でデビュー。アントニオ・カルロス・ジョビンやジョアン・ドナードらと共演し、99年の『DREAM』は20万枚のヒットを記録。7月、モントルー・ジャズ・フェスティバルに出演!

中原 仁(なかはら・じん)
J-WAVEの人気長寿番組「SAUDE! SAUDADE...」の選曲/制作、ブラジル音楽を中心にCDやライヴ/イヴェントのプロデュース、コンピレーションCDの選曲を行なう他、ライター、DJ、MCとしても活動。

 LISA ONO_DISC

(上)
小野リサ『Brasil』
(Dreamusic)

(下)
『Cheek to Cheek─Jazz Standards from RIO─』
(avex trax)

RECOMMENDATION