【来日直前インタビュー】グレゴリー・プリヴァ | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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【来日直前インタビュー】グレゴリー・プリヴァ

【来日直前インタビュー】グレゴリー・プリヴァ
Photo by Vilnius Mama Jazz

ヨーロッパを魅了するカリビアン・ジャズ・ピアニスト
初のピアノ・ソロ作を携え待望の再来日

 フランス領マルティニーク出身。伝説のフレンチ・カリビアン・バンド"マラヴォワ"のピアニスト、ジョゼ・プリヴァを父に持つ家庭で育ち、2012年発表の1st作『Ki Kote』以来、数々のリーダー・アルバムを発表するとともに、ラーシュ・ダニエルソンのグループ"リベレット"や"小沼ようすけJam Ka"のメンバーとしても活躍。カリビアン・ジャズの躍動感と抒情的なピアノ表現をフューズさせた独自の音楽を構築し、ヨーロッパを中心に大きな注目を集めているピアニスト、グレゴリー・プリヴァが今年2月に発表した初のソロ・ピアノ・アルバム『Yonn』を携えて再来日。10月31日、コットンクラブのステージに登場する。

Interview & Text = Kazune Hayata

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「アルバム・タイトルの『Yonn』というのは、ハイチ・クレオール語で"1"という意味。とてもシンプルなタイトルですが、これにはふたつの意味が込められています。ひとつには、これがソロ・アルバムであるということ。僕ひとりで作ったアルバムということを表しています。でもこのタイトルの最も大きな意味は"Unity"。みんなで心をひとつにしよう、ということです。この数年、世界はCOVID-19によるロックダウンやステイホームで分断され、多くの人々が孤独という闇の中に閉じ込められてきました。僕がこのアルバムでやりたかったことは、そうした心の闇に希望の光を灯すこと。それこそがこのアルバムのミッションだと考えたのです。でもそのために必要だったのが、自分自身と向き合うということ。人の心を照らすためには、まず自分の心の中を見つめ、人の心に届く光とは何かを問い直す必要がありました。そうしたプロセスを経て、心の奥から湧き上がってきた愛、共感、絆、友情などの想いを音楽で表し、リスナーの皆さんが光を感じることのできる心地好い空間を創り出したいと思ったのです」

 確かに、『Yonn』には、人々の心をひとつに結びつけるような慈愛に満ちた音楽が描かれている。それと同時に、このアルバムを聴いて強く感じることは、プリヴァ自身が持っている、音楽をまとめあげる力だ。彼の音楽には、彼の出自であるフレンチ・カリビアン音楽を核にして、ジャズやクラシック音楽、ロックなどのさまざまな音楽が見事に調和している。

「もともと僕はさまざまな音楽をひとつにするのが好きだったんです。父がミュージシャンだったので、よく家でピアノを弾いていましたし、僕も父のピアノに合わせて歌ったりしていました。また、家の中にはいつもいろいろな種類の音楽が流れていました。その中で最も心を惹かれたのが、僕のルーツであるマルティニークの伝統音楽。父が参加していたマラヴォワやアラン・ジャン・マリーなどをよく聴いていました。それからクラシック音楽やジャズも好きでした。ジャズでよく聴いていたのはミシェル・ペトルチアーニ、ハービー・ハンコック、ブラッド・メルドーの3人。ペトルチアーニの魅力はメロディの力強さです。僕の音楽にとってメロディはとても大切な要素。彼の生み出す旋律は僕の感情に強く訴えかけてきます。ハービーとメルドーのふたりには、常に新しい音楽を生み出し続けようとするパワーに驚かされています。ティーンエイジャーの頃はこの3人の音楽を本当によく聴いていました。 特にハービーは今でも僕のイマジネーションのもとになっています。そうしたさまざまな音楽を聴き続けるうちに、その中にある精神性にたどり着き、ひとつの音楽にまとめあげてみたくなりました。そうすることによって自分自身の音楽を築いてみようと思ったのです」

CC2022Gregory_image001.jpgphoto by Roch Armando

 そうしたプロセスを経て完成させた最新アルバム『Yonn』は、プリヴァにとって初のソロ・ピアノ・アルバム。そのアルバムをもとに展開される今回の来日公演はどのようなものになるのだろうか?

「2018年に日本公演を行なった時はトリオ演奏でしたが、今回は新たにソロ・ピアノということでとても楽しみにしています。僕はソロ・ピアノ演奏も大好きで、ひとりでピアノを弾いていると自然にメロディが浮かんできます。人によっては、ステージにひとりきりでいるのを心細く感じ、ソロ演奏を敬遠するピアニストもいるようですが、僕はステージにいるのが自分ひとりきりであっても、僕の音楽を聴いてくれようとする人たちのエネルギーや、そこに流れる心の結び付きを強く感じるタイプ。僕が感じる一体感を会場のみんなとシェアするのが大好きなんです。日本のオーディエンスの皆さんは非常に熱心に演奏を聴いてくださいますし、コットンクラブはピアノの響きも大変に素晴らしいので、演奏するのが今から楽しみです」

CC2022Gregory_image002.jpg2018 1.19 COTTON CLUB photo by Yuka Yamaji

「今回のライヴは、僕の音楽のすべてを注ぎ込んで作ったアルバム『Yonn』を中心にしたプログラムですが、アルバムの世界とライヴの世界は別の次元にあるもの。ステージではさらに大きく広がっていきますので、楽しみにしていてください」


早田和音(はやた・かずね)
2000年から執筆活動開始。インタビュー、ライヴリポート、ライナーノーツなどの執筆やラジオ出演、海外取材など多方面に展開。米国ジャズ誌「ダウンビート」国際批評家投票メンバー。世界各国のメジャーからインディペンデント・レーベルまで数多くのミュージシャンとの交友を重ねている。

RELEASE INFORMATION


CC2022Gregory_imageDisc001.jpg

Grégory Privat
『Yonn』
(Buddham Jazz/Mocloud)

LIVE INFORMATION

CC2022Gregory_image003.jpg

【コットンクラブ】
GRÉGORY PRIVAT
"Yonn" Japan Tour 2022
グレゴリー・プリヴァ

2022 10.31 mon.
[1st.show] open 5:00pm / start 6:00pm
[2nd.show] open 7:45pm / start 8:30pm
http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/gregory-privat/

<MEMBER>
Grégory Privat (p,key,vo)

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