【スペシャル・インタビュー】PAT METHENY | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

News & Features

【スペシャル・インタビュー】PAT METHENY

【スペシャル・インタビュー】PAT METHENY

パット・メセニー、2つの異なる編成でブルーノート東京に登場
その熱い想いを語る

 待ちに待ったパット・メセニーの来日公演が、全国規模で開催される2024年。ブルーノート東京には、「2週間腰を落ち着けて、トリオとソロで臨みたい」と語るパット。ご本人に、来日直前の抱負を語ってもらった。

Interview & text = Yo Nakagawa

READ MORE

 ギター界を牽引してきたパット・メセニー、5年ぶりの来日公演が、「日本各地を周りたい」というパットの強い願いを叶える形で実現する。 

 2024年1月14日の札幌公演をスタート地点に南下していき、1月21日には「やはり東北地方に行きたい」と、最後の地方公演は岩手県盛岡市で開催される。

 そしてツアー後、ブルーノート東京で2週間、腰を落ち着けて2つの編成でステージに臨む。まずは、ロン・カーター(b)との"夢の共演"が、やっと日本でも聴けることになった。デュオを繰り返してきた2人にとって、初めての日本公演。しかも、世界初演となるトリオ編成は、サイドアイズの現行メンバー、ニューオーリンズ出身の若き才能、ジョー・ダイソンがドラマーを務める。

20240130_PATMETHENY_image01.jpg

 パット自身に、この共演の意義を語ってもらおう。「できれば若手を揃えた自己のトリオ、サイドアイズではなく、ロン・カーターとそいう大御所を迎えた理由も聞かせてください」と言うと、パットが勢いを込めて言った。

「楽しみな点は、すべて!だいたい、ぼくがロンさんを選んだのではなくて(笑)、彼がぼくを共演相手に選んでくれたんだ。ぼくにとって、ロンさんが在籍していたマイルス・デイヴィス・クインテットの存在が、ぼくが『プロの音楽家になろう』と思ったモチベーションになっているからね。ロンさんとは何度もツアーをしたけれど、すべての要素で素晴らしかった。ジョー・ダイソンはこの初トリオ公演にふさわしい、完璧なドラマーだ。聴いてくださる皆さん以上に、ぼくの方がワクワクしているよ」

 パット・メセニーがマイルス・デイヴィスを深く敬愛していたことは、つとに有名だ。マイルスと同じジャズフェスに出演した時は、「マイルスの前をギターケースをもってウロウロ歩いてみた」ことも一度ではなかった。しかし、帝王マイルスからパットにグループへの誘いがかかることはなく、マイルス逝去の報に接したパットの落胆ぶりは大きかった。

20240130_PATMETHENY_image02.jpg

 パットは、若い頃からおよそ30歳代まで、"共演したいミュージシャンのリスト" を作り、それを一人ひとり叶えていった人である。

 一方にオーネット・コールマン人脈があり、堀を埋めるようにチャーリー・ヘイデン(b)らメンバーとの共演を続け、ついにワーナーミュージックへの移籍作で契約書の条件の一つとして、オーネット・コールマンとの共演作『ソングX』(1985年)を実現させた。

 もう一方の頂きにいたのが、マイルス・デイヴィスで、パット本人の熱はこちらの方が高かったのだけれど、黄金のクインテットのメンバーだったハービー・ハンコックとは何作も共演したが、想いが帝王マイルスに届くことはなかった。

 その現実を救うように現れたのが、ロン・カーターだった。このデュオは、パットがいつもは演奏しないジャズ・スタンダードも率先して弾くので、オーディエンスに実に受けがいい。

 そして、ソロ・ギターでの公演についてである。パットが次のように語った。

「ギター・ソロではあるけれど、ぼくがギターを1本しか持っていかないということはあるはずもなく、常のソロ・ギターとはイメージが異なるかもしれない。ソロで全米/ヨーロッパを周り初めて半年近く。ソロでの表現が深化していることを、自分でも喜んでいる。まったく新しい音楽的地平が開けた心境なんだ。またコロナ禍を経て、現在の自分がもつに至った音楽への熱き想いを、日本の皆さんに聴いてもらえることがとても嬉しい」

20240130_PATMETHENY_image03.jpg

 筆者が、ふと思ったことを聞いてみた。パットには、構想5年、5人の研究者と組んで完成させた自動演奏システム "オーケストリオン"がある。大々的なオーケストリオン・ツアーは、アルバム『オーケストリオン」発表時(2010年)だけだったが、一つの"楽器"として、そのミニ版を持ってくる可能性があるのではないかと思ったのだ。珍しく、パットが即答を控えて言った。

「それは、観てのお楽しみ!」

 え?では、その可能性もあるということなのか。筆者がしつこく訊ねて、その可能性を潰してはいけない。これは、ソロ公演をご覧になる皆さんからのご報告を待つことにしよう。

 実は、ツアーの傍、ニュー・アルバムの準備も進んでいる。しかし、翌年の日本ツアーが彼自身にとっても、2024年の一大プロジェクトなのだと語る。

「ソロ・ギターでのツアーを続けてきて、自らの演奏で、ダイレクトに皆さんに音楽を伝える喜びを日々感じているところなんだ。自分でも予想していなかった、今までとまったく異なる表現に至ったところだ。これを日本で発表できることを、心から嬉しく思っているよ。ソロと、ロンさんとのトリオでの日本の旅。そのすべてが嬉しくて、興奮を抑えられないでいる」

 日本の冬に、一陣の春風を巻き起こすだろう今回のブルーノート東京公演。パット・メセニー、首を長くして待っています。

LIVE INFORMATION

0130_Pat_Metheny_base_1.jpg

PAT METHENY
Dream Box Solo Tour


https://www.bluenote.co.jp/jp/lp/pat-metheny-2024/

1.14 sun.  札幌文化芸術劇場 hitaru

1.16 tue.  りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 / 劇場

1.17 wed.  高崎芸術劇場 / スタジオシアター

1.18 thu.  東海市芸術劇場

1.19 fri.  サンケイホールブリーゼ

1.21 sun.  トーサイクラシックホール岩手 (岩手県民会館)

1.30 tue. 〜 2.4 sun.  ブルーノート東京

1019_PAT_METHENY___RON_CARTER_base_1.jpg

PAT METHENY & RON CARTER

1.23 tue. 〜 1.28 sun. ブルーノート東京
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/pat-metheny-ron-carter/

<MEMBER>
パット・メセニー(g)
ロン・カーター(b)
ジョー・ダイソン(ds)



中川ヨウ(ナカガワ・ヨウ)
音楽評論家、ジャズ研究者@慶應義塾大学アートセンター
'80年代から、ジャズを核にジャンル、国境を超える音楽の応援で高い評価を得てきた音楽評論家/ ジャズ研究者。21世紀の"グローカル"(グローバル+超ローカル)な音楽についての知見も深い。慶應義塾大学アートセンター、油井正一アーカイヴ【拡張するJazz公開研究会】で学生、一般の音楽愛好家とジャズ考察を続けている。洗足学園音楽大学名誉教授、ミュージック・ペンクラブ・ジャパン理事。
#JazzMovesOn

RECOMMENDATION