《CIRCLE OF LEGENDS vol.1》時代と共に受け継がれるエッセンスが今のジャズに結びつく | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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《CIRCLE OF LEGENDS vol.1》時代と共に受け継がれるエッセンスが今のジャズに結びつく

《CIRCLE OF LEGENDS vol.1》時代と共に受け継がれるエッセンスが今のジャズに結びつく

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《CIRCLE OF LEGENDS vol.1》時代と共に受け継がれるエッセンスが今のジャズに結びつく

 歴史と伝統を持つジャズは、時代の流れの中で枠に囚われない様々なアーティストたちによって変化を遂げ、今に結び付いている。
過去も現在も、その精神、またそこから生まれる音楽は受け継がれ、"現在進行形"として走り続けている。

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 スタンリー・クラーク・バンドの『アップ!』は、音楽に対するポジティヴな想いを形にしたアルバムだ。自身のキャリアを網羅するように、アコースティック・ジャズから、フュージョン、ファンク、ソウル、ブラジル音楽、ロック、そしてクラシックまで、時代と共に演奏してきた音楽のエッセンスが込められ、ベースによってそれらが繋がっていることを、多彩なゲストと共に表現してみせた。

 『アップ!』のもう一つの注目点は、ドラムのロナルド・ブルーナーJrと、彼が招いたサックスのカマシ・ワシントンだ。ロナルドの弟のベースのサンダーキャットことスティーヴン・ブルーナー、今回の来日に名を連ねるキーボードのキャメロン・グレイヴスの4名は、ヤング・ジャズ・ジャイアンツというグループを組み、ロサンゼルスのジャズ・コミュニティで若い頃から活動した仲だ。思えば、フライング・ロータスのブレインフィーダーからのサンダーキャットのデビューは、スタンリー・クラークの音楽と、現在のビート・ミュージック及びジャズを繋げた。クラークとその朋友のジョージ・デュークの音楽を再評価して、継承したのがブルーナー兄弟たちだったからだ。

STANLEY CLARKE
天才ベーシストが気鋭の若手を率いた
最新のバンド+シンガーとともに登場
STANLEY CLARKE
スタンリー・クラーク
2015 9.30wed. - 10.3sat.
※詳しくは公演詳細ページまで
『アップ!』

『アップ!』

(キング・インターナショナル)

 ヒップホップのみならずブラック・ミュージックの重要作となったケンドリック・ラマーの『トゥ・ピ ンプ・ア・バタフライ』に、ロバート・グラスパーやサンダーキャットと共に深く関与したカマシ・ワシントンもブレインフィーダーからの大作『The Epic』でブラック・ミュージックとしてのジャズを刷新した。リリース・ツアーでニューヨークのブルーノートにも出演し、大きなインパクトを残した。ニューヨークはジャズのメッカであり続けるが、ロサンゼルスのようなジャズ・コミュニティが、ニューヨークに才能を送り込んでもいるのだ。そして、コミュニティの地域性を超えて、横のネットワークが形成されてもいる。それがネット世代のジャズの特徴でもある。

 KAMASI WASHINGTON
ブレインフィーダーから今春アルバムをリリース
LAジャズの最重要人物日本で初のリーダー公演
KAMASI WASHINGTON
カマシ・ワシントン
2015 10.30 fri. - 11.1 sun.
※詳しくは公演詳細ページまで
 『The Epic』

『The Epic』

(BEAT RECORDS / BRAINFEEDER)

 ニューオーリンズから登場したトランペットのクリスチャン・スコットもそうなのだ。ジャマイア・ウィリアムスらとのネクスト・コレクティヴで、グラスパー以後のクロスオーヴァーな活動を先導する存在となったが、地元のマルディグラ・インディアンの血も引く彼は、一方で自身のルーツへの問いかけを作品に反映させてきた。最新作『ストレッチ・ミュージック』では、ルーツ・オリエンテッドな部分とフューチャリスティックな志向を重ね合わせ、「紛れもなくジャズだが、インディ・ロックでもありヒップホップでもある」と本人が断言するサウンドを作り上げた。

 CHRISTIAN SCOTT
ジャズの新世代を先導するトランペッターが
3年ぶり待望の新作を携え東京へ
CHRISTIAN SCOTT ATUNDE ADJUAH
クリスチャン・スコット・アトゥンデ・アジュアー
2015 10.7 wed. - 10.9 fri.
※詳しくは公演詳細ページまで
 『ストレッチ・ミュージック』

『ストレッチ・ミュージック』

(AGATE / インパートメント)

 グラスパーと同じくヒューストン出身のドラマー、ケンドリック・スコットは、、ブルーノート・レコードからのデビュー作『ウィ・アー・ザ・ドラム』において、プロデューサーにデリック・ホッジを迎え、テイラー・アイグスティら実力者を従えたグループで、ジャズの前進にフォーカスしている。フライング・ロータスの"Never Catch Me"のカヴァーが象徴的だ。原曲のケンドリック・ラマーのラップを譜面に起こし、フロウとリズムをなぞり、ラップの構造をジャズとして組み立て直すことに挑んでいるが、ラップのエッセンスからメロディを作り、メンバーと共に新たなフォルムの構築に向かっている。このアルバムは全編にそうした意志が貫かれている。

 KENDRICK SCOTT
トップ・ドラマーがブルーノート・レコード
移籍第一作を携え、ユニット"オラクル"名義で来日
KENDRICK SCOTT ORACLE
ケンドリック・スコット・オラクル
2015 11.10 tue. - 11.11 wed.
※詳しくは公演詳細ページまで
 『ウィ・アー・ザ・ドラム』

『ウィ・アー・ザ・ドラム』

(ユニバーサル ミュージック)※2015 9.30発売

 ケンドリック・ラマー、フライング・ロータス、それにロバート・グラスパー。その相互に交わる活動も引き金となって、現在進行形のジャズのネットワークも動き始めた。クリスチャン・スコットも、カマシ・ワシントンも、ケンドリック・スコットも、そこからそれぞれが違うスタイルで向かうべき方向を歩んでいる。その違いも含めて、現在進行形のジャズを楽しめるはずだ。そして、スタンリー・クラークもいる。グレイヴスら若いプレイヤーたちと演奏する彼の現在は、このラインナップに加わる価値が充分にあるのだ。

text = Masaaki Hara

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原 雅明(はら・まさあき)
音楽ジャーナリスト、DJ、レーベル<rings>のプロデューサー。LAの非営利ネットラジオ局の日本ブランチdublab.jpの運営も手掛ける。単著『音楽から解き放たれるために─21世紀のサウンド・リサイクル』

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