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[インタビュー|OFFSTAGE]デイヴ・グルーシン

[インタビュー|OFFSTAGE]デイヴ・グルーシン

物語の音楽はチームワークで特別になる

 2018年11月に3日間6公演、デイヴ・グルーシンの『ウエストサイド物語』の公演は連日満員になった。物語には現在版にするためのさまざまな知恵があった。

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 「へえー、バーンスタインって、ミュージカルの音楽も手掛けるんだ」

 ピアニストで作編曲家のデイヴ・グルーシンが初めて『ウエストサイド物語』の舞台を観たのは、1950年代の終わり、コロラド州のデンバーだという。

「ツアーカンパニーが演じた舞台だった。オーケストラは地元の演奏家が雇われて、知り合いのトランペット奏者が参加していたんだ。バーンスタインといえば、ニューヨーク・フィルハーモニーの指揮者で音楽監督のイメージだよね。ところが、いくつものブロードウェイミュージカルを手掛けていることをあのときに知った。新鮮に感じたよ。『ウエストサイド物語』にはニューヨークのギャングの対立が描かれている。そこに少しシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』のような要素が加わった物語だ。クラシックとは離れた音楽のイメージだよね。でも、バーンスタインにとっては特別な仕事ではなかったのだろう。初めて『ウエストサイド物語』を観たときすでに、ジャズのバージョンにしたらおもしろいと感じた。ショーを観ながら頭の中でイメージをふくらませてワクワクしたよ」

 デイヴが『Dave Grusin Presents~West Side Story~』をレコーディングしたのは1997年。そして2018年、レナード・バーンスタイン生誕100周年記念で、ビッグバンドを起用して『ウエストサイド物語』のツアーを行うことになった。

「この物語にはまだたくさんの可能性がある。原作はポーランド系アメリカ人とプエルトリコ系アメリカ人の抗争と恋愛を描いている。でも、それは50年以上経った今ではあまりリアルではない。そこで僕のツアーでは、キューバ系の移民の抗争をイメージしたんだ。だから、キューバ音楽のリズムを取り入れたジャズのアレンジになっている。こういうとき、ジャズという音楽は実に自由だね」

 腰を据えて『ウエストサイド物語』と向き合うと、ほかにもさまざまな発見があった。

「ツアーでは『ONE HAND, ONE HEART』をやっているけれど、この曲は1950年代には演奏されていなかったと思う。バーンスタインには、こういうかくれた名曲がいくつかある。そんな曲を掘り起こしていくのも、興味深い作業だったね」

 さて、今回はバーンスタインへのオマージュだったが、デイヴ自身、数多くの物語に曲を書いている。ヘンリー・フォンダとキャサリン・ヘプバーンの『黄昏』やロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープの『恋におちて』など、名曲がたくさんある。

「僕はいつも映像を観て触発される、自分の心の動きに素直にしたがって作曲をする。その象徴は『黄昏』だろうね。あの映画はニューイングランドの美しい森と湖が舞台だった。鳥のさえずり、湖面のさざなみ......など、自然の美しさに刺激された」

 『黄昏』はアカデミー3部門など多くの賞を受賞。

「ただし、物語の音楽は作曲家だけではなくスタッフのチームワークで特別になる。僕は思っているよ」

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Photo by Yuka Yamaji

DAVE GRUSIN BIG BAND
"THE MUSIC FROM WEST SIDE STORY"
-Leonard Bernstein Centennial Celebration-
2018 11.15 - 11.17
DAVE GRUSIN(デイヴ・グルーシン)
1934年、米国コロラド州生まれ。大学で獣医学を学びながら音楽活動を続け、61年に初ソロ・アルバム『Subways are for Sleeping』を発表。76年にラリー・ローゼンとともにGRPレーベルを設立し、フュージョン・シーンを牽引する存在となった。

photography = Hiroyuki Matsukage
interview & text = Kazunori Kodate
interpretation = Kazumi Someya

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