ナッシュビルの現在を体現するスペシャル・ショウケース | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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ナッシュビルの現在を体現するスペシャル・ショウケース

ナッシュビルの現在を体現するスペシャル・ショウケース

カントリー・ミュージックの未来を切り開く
3名の実力派シンガーソングライターが集結

 音楽の街・ナッシュビルを拠点とする旬のアーティストを、日本の音楽ファンに紹介するスペシャル・ショウケースが、3月30日、ブルーノート東京で開催。世界的にも注目を集める、話題のシンガーソングライター3名が出演する本公演の見どころを、音楽評論家の五十嵐正氏が解説する。

text = Tadd Igarashi

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 第61回グラミー賞で、ケイシー・マスグレイヴスの『Golden Hour』が年間最優秀アルバムを受賞した。昨年のフジロックにも出演するなど、今や幅広い人気を誇るケイシーとはいえ、カントリー系アーティストが主要部門の最優秀アルバムをさらうのは、日本の音楽ファンには驚きだったろう。だが、彼女の音楽はカントリーに様々な影響を取り込んだポップなサウンドに加え、現代を生きる女性の考えや感性が的確に表現されており、それは音楽ジャンルや地域性を超えて人びとの心に訴えると証明されたわけだ。

 そのケイシーを一躍人気者にした13年のメジャー・デビュー・アルバム『Same Trailer Different Park』にソングライターとして貢献したのが、ブランディ・クラークだ。小さな町が押し付ける保守的な規範や狭量な考えに疑問を投げかけ、多様性を肯定し、夢を追いかけ、自分の望む人生を生きることを歌った共作〈Follow Your Arrow〉はCMA(カントリーミュージック協会)賞の年間最優秀楽曲にも輝いた。

 それ以前にもブランディはミランダ・ランバートなどにヒット曲を書いていたが、ケイシーの成功を追いかけるように、同年に彼女自身のデビュー・アルバム『12 Stories』を発表。そのフォーキーなカントリー・サウンドと現代女性の人生の現実を独特の視点で鮮やかに描く曲が高く評価され、全米のメディアの多くが年間ベストの1枚に選び、第57回グラミー賞の最優秀新人賞候補ともなった。ブランディはケイシーと共に音楽界に新風を巻き起こしたのである。

 そんな大注目のブランディ・クラークに、新進気鋭のデヴィン・ドーソンとリンジー・エル、3人のシンガー・ソングライターが、ナッシュヴィルからやってくる。これはCMAが主催する「INTRODUCING NASHVILLE」という特別なライヴだ。

 テネシー州ナッシュヴィルはもちろんカントリー音楽界の首都だが、実はあらゆるジャンルのミュージシャンがひしめく通称「ミュージック・シティ」でもある。近年は元ホワイト・ストライプスのジャック・ホワイトが拠点とし、街のイメージを変えたと言われるほどの強烈な存在感を放っているし、イースト・ナッシュヴィル地区は新しいカルチャーの発信地として「南部のブルックリン」と呼ばれるほどで、インディ・ロックやアメリカーナ系のアーティストが続々と移り住む。

 ただし、その一方で変わらぬところもある。ナッシュヴィルが常に「ソングライターの街」であることだ。ここでは歌で人びとの物語を語るという伝統が脈々と受け継がれ、多くのソングライターたちが競い合って、その技巧を磨き、心に残る名曲を生み出している。

 カリフォルニア出身のデヴィン・ドーソンにしても、デスメタル・バンドにいたという異色の経歴を持つが、ソングライティングに興味を移したとき、向かった先は当然ナッシュヴィルだった。昨年のデビュー作『Dark Horse』はカントリー・アルバム・チャートでトップ5入り。ヒット・シングル〈Asking For A Friend〉はその巧みなソングライティングの好例に挙げられる。友人のために女性に声をかけていると思いきや、実は恋人に詫びる気持ちを三人称で表現していると最後に判明するのだ。ジョニー・キャッシュからマーヴィン・ゲイまでに影響を受けたという彼の音楽は、ジョン・メイヤーやエド・シーランのファンにも聴いてほしい。

 リンジー・エルはカナダのカルガリー生まれ。15歳のときに母国のロック・リジェンド、ランディ・バックマン(ゲス・フー~BTO)に見出された。優れたギタリストでもあり、バディ・ガイのツアーに加わるなど、ロックやブルーズも愛するリンジーの音楽性は、シェリル・クロウやボニー・レイットらを引き合いに出してもいい。10年にナッシュヴィルに移り、17年に米国デビュー・アルバム『The Project』を発表。セールス・チャートでNo1になり、シングル〈Criminal〉もトップ20入りした。また、ブラッド・ペイズリーとキース・アーバン、名ギタリストでもあるカントリー・スター2人にその腕前を認められ、彼らのツアーに参加したときは、どちらの機会にも毎晩ギターの競演を聞かせた。

 そんな才能豊かな3人が揃うだけでも楽しみだが、今回のショウは「ソングライターズ・イン・ザ・ラウンド」形式で行われるのも大きな魅力だ。つまり、3人が一緒に舞台に立ち、自作曲にまつわる逸話や作詞作曲の裏話を披露しながら歌い、お互いに伴奏やコーラスを手伝うという趣向だ。これは元々ナッシュヴィルやテキサスのソングライターたちの間で、仲間が集まったときに自作曲を順に披露する「ギター・プル」(1本のギターを回すという意味)と呼ばれる習慣を引き継ぐもの。友人たちと競い、学び合う機会が、数多くの名曲を生み出す土壌となってきたのだ。

「INTRODUCING NASHVILLE」はそんなソングライターたちの創作の舞台裏も垣間見れる貴重な機会となる。心に響く「良い歌」とそれがどのように生まれるかに興味がある音楽ファンには間違いなく必見だ。


五十嵐 正(いがらし・ただし)
音楽評論家。社会状況や歴史背景をふまえたロック評論からフォークやワールド・ミュージックまでを執筆。著書『ジャクソン・ブラウンとカリフォルニアのシンガー・ソングライターたち』『スプリングスティーンの歌うアメリカ』他。18年は「トム・ウェイツ」「エルヴィス・コステロ」の2冊のムックを監修、執筆した。

COUNTRY MUSIC ASSOCIATION presents
"イントロデューシング・ナッシュビル"
featuring ブランディー・クラーク、リンジー・エル & デヴィン・ドーソン
2019 3.30 sat.
[1st]Open4:00pm Start5:00pm [2nd]Open7:00pm Start8:00pm
公演詳細はこちら → http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/cma/

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