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イリアーヌ・イリアス - ELIANE ELIAS


公演初日リポート:ELIANE ELIAS



ピアノとヴォーカル、ブラジル音楽とジャズ、スタンダード・ナンバーと自作曲・・・・いろんなものを“両輪”にしながら、イリアーヌは自身の音楽に磨きをかけています。

彼女が久々に「ブルーノート東京」に出演を果たすという情報が伝わってきたのは、今年の初夏ごろだったでしょうか。「今回はジャズでいくのか、それともボッサ中心でいくのか」、「ピアノ主体だろうか、それともヴォーカルが中心だろうか」などなど、ぼくはあれこれ想像をめぐらせました。そして来日メンバーが正式に発表されました。イリアーヌ、その夫君であるマーク・ジョンソン(ベース)のふたりに加え、ブラジル・サンタクルース生まれのヒカルド・ヴォート(ギター。先ごろテリ・リン・キャリントンのバンドで「ブルーノート東京」に出演したエスペランサ・スポールディングのバンドでも活動しています)、リオ出身のハファエル・バラータ(ドラムス。ホーザ・パッソス、レニー・アンドラーヂ、イヴァン・リンスらと共演)というメンバーを見たとき、ぼくは「今回はブラジリアン・ミュージック色が濃厚になりそうだな」と思いました。

それは、ある意味正解でした。ジルベルト・ジルの「LADEIRA DA FRAGUISA」、アントニオ・カルロス・ジョビンの「CHEGA DE SAUDADE」、ジョアン・ドナートの「BANANEIRA」といったブラジル・ナンバーを次々と聴かせてくれたからです。しかも「I THOUGHT ABOUT YOU」や「MAKE SOMEONE HAPPY」などアメリカ生まれのスタンダード・ナンバーも快いボッサにして聴かせてくれました。

しかし、いったん間奏パートに入ると、イリアーヌの持っている“ジャズ・ピアニストの血”が騒ぐのでしょう、エキサイティングな即興フレーズが次から次へと飛び出します。意外なほど強いタッチで、スピード感にあふれたアドリブが展開されてゆくのです。一時はハービー・ハンコックからの強い影響がうかがわれたこともありますが、今の彼女のピアノは“イリアーヌ・スタイル”としかいいようのないものです。ヴォーカル・パートをしっとりと味わわせてくれる一方で、ピアノ・ソロ部分になると何かに取り付かれたようにホットな指さばきで圧倒するイリアーヌ。他のメンバーの好演もあいまって、この日のステージはすべて、“1曲で何度もおいしい”パフォーマンスで占められていました。

4人ともよほど乗っていたのでしょうか、最後は異例のダブル・アンコールで締めくくられました。そのなかのひとつが、ジャズの名トランペット奏者であるケニー・ドーハムがブラジル旅行の印象を基に書いた「UNA MAS」を基にした「STAY COOL」である、というのも心憎いですね。もともとインストゥルメンタルとして書かれた曲を、ダンサブルかつ小粋なヴォーカル・ナンバーに衣替えしたイリアーヌ。ライヴはいつも超満員、高い人気を保ち続けている彼女ですが、今回のステージは、いつもよりさらに見逃せない、聴き逃せないものになっているといっていいでしょう。
(原田 2010/9/12)


● 9.12sun.-9.14tue.
ELIANE ELIAS
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