マルコス・ヴァーリとステイシー・ケントが心地良い風を届ける | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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マルコス・ヴァーリとステイシー・ケントが心地良い風を届ける

マルコス・ヴァーリとステイシー・ケントが心地良い風を届ける

ブラジリアン・ポップ・マエストロのデビュー50周年に、歌姫が華を添える

マルコス・ヴァーリという今年で71歳となるブラジルの偉大な音楽家の魅力を語るとき、ヴィオランと鍵盤を共に完璧に弾きこなす優れたパフォーマーであることは然ることながら、最も評価されるべきはあまりに突出したメロディー・メイカーであることだろう。

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ボサノヴァに限らずジャズ、ソウル、ポップスまで地平を見渡すなら、ビートルズのレノン&マッカートニー、スティーヴィー・ワンダー、バート・バカラック、アントニオ・カルロス・ジョビンらのそれにも匹敵する。「サマー・サンバ(ソー・ナイス)」「ジェンチ」「パッサ・ポル・ミン(通り過ぎる君)」「バトゥカーダ」「ピグマリオン70」「クリケッツ・シング・フォー・アナマリア」「ザ・フェイス・アイ・ラヴ」と挙げればきりがない名曲の数々はどれもが時代や国境、世代を越えて多くのリスナーに愛される永遠のマスターピース。

今回リリースされた『マルコス・ヴァーリ&ステイシー・ケント・ライヴ~マルコス・ヴァーリ・デビュー50周年記念盤』では、「ベスト・オブ・マルコス・ヴァーリ」と言いたくなるようなめくるめく選曲を、"ジャズ・ソングバード"とも呼ばれるステイシー・ケントが可憐に歌う。彼女の艶やかで透明感溢れるヴォーカルは曲の持つポテンシャルを最大限に引き出しながらその魅力を丁寧にオーディエンスに伝え、凛とした姿にステージは華やぐ。

今僕はリオのクラブ「ミランダ」で録音されたというこのアルバムを実際にプレイヤーで再生しながら文を綴っているが、不思議と既にブルーノート東京の空間に身を委ねているような錯覚に陥っている。

DJ的な視点からの再評価を切っ掛けに行われた素晴しきオデオン音源の国内盤CDリイシュー(あれからすでに13年もの時間が経っていることに驚く)から、英ファーアウト・レーベルがイニシアティブをとったアルバム・リリースを受けてのマルコス・ヴァーリ来日公演は過去にもあったが、今回予想されるフェミニンでジャジーなアコースティック・セットは、都会的に洗練されたスペースであるブルーノート東京に間違いなくより相性の良いものとなるだろう。

そしてかのカルロス・リラもお気に入りだという「ラ・ペティーテ・ヴァウセ(小さなワルツ)」がマルコスとステイシーの二人で美しいユニゾンを描くとき、横にいる貴方の大切な人との掛け替えのない思い出の時間が、また一つ増えることになるはずだ。 (文・中村智昭)

世界的な人気を誇る二人が創る音世界に浸る

MARCOS VALLE

MARCOS VALLE

1943年生まれのブラジル音楽界を代表するシンガー・ソング・ライター。1964年にデビュー。ボサノヴァ、サンバ、MPBなどジャンルの枠にとらわれず、ジャズやロック、ソウルなどの要素も巧みに取り入れたスタイルは欧米でも高く評価され、ここ日本でも人気が高い。『サンバ'68』『マルコス・ヴァーリ』『プレヴィザォン・ド・テンポ』など、様々な時代に多くの名盤がある。代表曲は「サマー・サンバ(ソー・ナイス)」など。

『プレヴィザォン・ド・テンポ』 (ユニバーサル ミュージック)
『マルコス・ヴァーリ』 (ヴェリタ・ノーテ)
Left / 『プレヴィザォン・ド・テンポ』 (ユニバーサル ミュージック)
Right / 『マルコス・ヴァーリ』 (ヴェリタ・ノーテ)

STACEY KENT

STACEY KENT

"ジャズ・ソングバード"の愛称でも知られるアメリカはニュージャージー出身の人気フィメイル・ヴォーカリスト。現在はイギリス在住で、夫であるサックス奏者のジム・トムリンソンと共にヨーロッパを中心に活動する。幼少期における祖父からの影響もあり、フランス語も非常に堪能な才女である。アルバム『パリの詩』は全編フランス語で歌われヒット、2009年にはフランス芸術文化勲章"シュヴァリエ(騎士)"を授章している。

『パリの詩』 (ユニバーサル ミュージック)
『チェンジング・ライツ』 (ワーナーミュージック)
Left / 『パリの詩』 (ユニバーサル ミュージック)
Right / 『チェンジング・ライツ』 (ワーナーミュージック)

マルコス・ヴァーリ&ステイシー・ケント・ライヴ~マルコス・ヴァーリ・デビュー50周年記念盤ソニーミュージック・インターナショナル・ジャパン ※3.5発売

マルコス・ヴァーリ&ステイシー・ケント・ライヴ~マルコス・ヴァーリ・デビュー50周年記念盤

ブラジル音楽界の至宝がステイシー・ケントをヴォーカルに迎えリオで行ったライブの実況録音盤。自身の持つヒット・ナンバーを素晴らしいアレンジで丁寧に綴ったファン必聴の一枚

中村 智昭 (MUSICAÄNOSSA / Bar Music)
DJ / 選曲家 / 音楽ライターとして「ムジカノッサ」を主宰、渋谷「バー・ミュージック」店主。2013年に新レーベル「ムジカノッサ・グリプス」をスタート。コンピレーションCD『Bar Music 2013』をリリースした。

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