15年ぶりに復活、チボ・マットにインタビュー | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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15年ぶりに復活、チボ・マットにインタビュー

15年ぶりに復活、チボ・マットにインタビュー

表現したいものがあって、その手段として音楽を使っている。
だから自由な発想でできる

 15年ぶりのニューアルバム『ホテル・ヴァレンタイン』を発表して見事復活したチボ・マット。ニューヨーク在住の本田ゆか、ハトリミホのふたりが作り出すキュートでストレンジなエレクトロ・ポップは健在だ。プロモーションのために来日したふたりに訊いた。

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ーーチボ・マットはあらきゆうこやコーネリアス、バッファロー・ドーターなど日本で育った音楽家と、アメリカで育った音楽家たちの両方とやる機会がありますね。両者の違いを感じることはありますか。

本田「音楽性自体はそんなに感じないです。ただアメリカのミュージシャンはブルースがボトムにある演奏をする。いきなりセッションに加わっても掛け合いになってりして、なんとなく形になってしまう。音のチョイスも、みんな了解事項があってやってる感じがある。でも私達からすると、それは少しつまらないんです。日本のミュージシャンは、そういう基礎はないけど、新しい音楽に対するアプローチがあって、ブルース云々を超えたところで聞こえてるものがあるから、日本人をいれたほうが私達は楽しいし。そういうのは刺激になりますね。私達はその中間にいる感じ。両方おいしいとことってるみたいな(笑)」

ーー今度出るチボ・マット選曲のコンピレーション『WOMEN IN MUSIC』には、おふたりが影響を受けた女性アーティストの曲が選曲されていますが、そこで多く選ばれているニュー・ウエイヴとボサ・ノヴァがおふたりのルーツなんでしょうか。

ハトリ「日本に育った日本人だから歌謡曲だって聴いてきたし、ルーツはなにか説明するのは難しいですね」

本田「もともと私達はミュージシャンじゃなくて、ファンから音楽を始めたところがあるので、雑食でなんでも聴いてましたね。ずっと音楽をやってきた人たちはひとつのスタイルで練習しなきゃいけないから、このルーツ、というのがしっかりあって、そこから広げていくと思うんですけど、私達はただ好きなものを棚から取り出して片っ端から聴いて、それを全部やりたい!みたいな感じでやっていたから」

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3.31 mon. at cafe 104.5

ーー音楽を始めるきっかけはそもそもなんだったんですか。

本田「もともと私は小説家志望で、ニューヨークで雑誌に記事を書くアルバイトをやっていたんです。ちょうどそのころは日本からシーケンサーや、新しいコンパクトなデジタル機器が出てきた時で、同居していたミュージシャンが早速買ってきたんだけど、説明書が日本語で読めない。それで私がマニュアルを一から読んで操作の仕方を覚えて。そのころのデジタル機器は原始的で操作も面倒だったんで、ヒマだった私が、頼まれて打ち込みの作業をやるようになったんです。周りにミュージシャンがたくさんいて、彼らに引っ張られながらいつのまにか音楽をやるようになったという感じですね。その過程でミホちゃんとバンドをやるようになって」

ハトリ「それでジョン・ゾーンが、ふたりでインプロヴィゼーションをやらないかって誘ってくれて。それがチボ・マットの原型になったんです」

本田「運が良かったんだと思います」

ーーハードウエアの操作から音楽を始めるようになったというのが面白いですね。普通に楽器の練習から始めた音楽家と何が違うと思いますか。

本田「自由だと思いますね。目的地を持たないで歩いているような。もちろん自分ではこういう方向にいきたいというのはあるんだけど、それはたぶん音楽によって決めた方向性ではないんです」

ーーというと?

本田「自分に表現したいものがあって、その手段として音楽を使っているだけなんですね。音楽的にいきたい場所があるわけではなくて、自由にあっちからとってきたり、こっちからとってきたりということに躊躇がない。ミュージシャンの人とやっていると、こだわりがあるんです。これはやりたくないとか、これはダサいとか。私達はそういうのはあまりない。自分の表現したいことがあって、そのために音を使っているだけから。だから彼らからすればダサいことであっても、自分がやりたいことを表現するのに有効であれば、どんどん取り入れていきますね」

ーー今はミュージシャンとして豊富な経験を積まれていると思いますが、そうした考え方は変わりないですか。

本田「今はそういうことを意識して、素人感覚というか外野感覚のようなものをなくさないようにしています。音楽理論みたいなものも勉強したんですけど、あまりそれにとらわれないように。最低限周りのミュージシャンとコミュニケーションがとれるぐらいの知識はありますけど、やりたいアイディアをアカデミックに検証するようなことはやりたくないし、やらないようにしています」

ーーそれがチボ・マットの音楽のフレキシブルな発想の面白さに繋がっているわけですね。

本田「音楽の進化というものは、どこかで誰かがセオリーを外れたような変なことをやることで起こると思うんです。自分たちでもそういうものを目指してます」

小野島大
音楽評論家。各雑誌、WEBメディア等に洋邦ポップ・ミュージック中心に執筆。著書に『ロックがわかる超名盤100』『NEWSWAVEと、その時代』(エイベックス)『音楽配信はどこへ向かう?』『フィッシュマンズ全書』等。

 CIBOMATT_DISC

15年ぶり最新アルバム
『HOTEL VALENTINE』

2001年を最後にライヴ活動を休止以来、15年ぶりとなる2月に発売されたアルバムの国内盤を3月3日にリリース。『HOTEL VALENTINE』という映像のない映画をつくることを閃き、"ホテルの廊下を忍び歩くゴーストとのラヴストーリー"というチボ・マット二人のイマジネーションで作った映画であり、その(映像の存在しない映画の)サウンド・トラックとして作られている。

CIBO MATTO
『HOTEL VALENTINE』
(commmons)

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