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公演直前SPECIAL座談会

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ヤン富田とHIPHOP黎明期

 夏の終わりを告げる夜風とともに、ブルーノート東京にヤン富田が帰って来る。去年の今頃は、原美術館の芝生の上で、野戦通信基地から奏でられるスイートな音色に酔いしれた人も多いだろう。遠くの雷鳴、ギターとDOOPEESのハーモニー......。ヤン富田の公演は、いつも映画のワンシーンのような世界に誘ってくれる(それがスペースシップでの宇宙だったり、ジャンボジェットでの夜間飛行だったりするから気が抜けない)。

 約1年半ぶりの公演を目前に、多忙なスケジュールの合間を縫って、大野由美子、小山田圭吾、高木完、DUB MASTER Xを迎えての座談会が行われた。話はプリン体から、80年代のヒップホップにまでおよび......。

text = Mai Nakata
photography = Great The Kabukicho

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ヤン富田(以下、富田):最近ノンアルコールビールにハマってて。銘柄によって全然違うのね。売り上げNO.1ってパッケージに書いてあるやつが美味かった。

高木完(以下、高木):だいたいどれもNO.1って書いてありません(笑)?

富田:よくわかんないけど、プリン体ゼロのやつだよ。そういえば、この前ラジオでA.S.L.(オーディオ・サイエンス・ラボラトリー)のことを改めて説明する機会があって(http://asl-report.blogspot.com/2019/08/911-blue-note-lazy-sunday-part-1.html / https://www.interfm.co.jp/news/single/lazy_postshow08182019)、また「宮ちゃん(DUB MASTER X)は、18歳から俺の楽器運んでくれてる」とか(藤原)ヒロシ君やいとう(せいこう)君と作った音源の話とか、今ではヒップホップのライブでみんな当たり前に「騒げ~~~!」って言うけど、あれ、最初にオレたちが「エビバディ スクリーム!」って言ったら、お客さんが「スクリーム!」って返してきて、これは如何なものかっていうことで「騒げ」が生まれた話とかをした(笑)。A.S.L.は、「音楽による意識の拡大」をテーマに89年に開設したから、今年で30年になるんだね。

DUB MASTER X(以下、DUB):ヤンさんが『FUNKY KING』(※♪ギロッポン~広~尾な~など伝説的シャウトで知られる楽曲)や『MESS/AGE』(※日本初のヒップホップアルバム)をプロデュースして......、俺もDJとして30年になります。お互いプリン体を気にする年になりましたけど、ヤンさんはあの当時から何も変わってない(笑)。ずっとこう。

富田:そうなの?

DUB:俺が10代で、10個上のヤンさんが20代ってのもすごいけど。みんなで一緒に朝から集合して新宿でレコード掘ってた頃と、何一つ全然変わらない。その頃から、やたら腰が低いし。

富田:30だったよ。宮ちゃんが早生まれだからでしょ。でも、それはそうなんだよ。運動選手にスポーツマン・シップがあるように、ミュージシャン・シップというかミュージシャン・マインドが大事だと思う。そうすると結局は人柄だね。

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大野由美子(以下、大野):それは本当に。ミュージシャンとしてはもちろん、人としてってことを最初からずっと、いっぱい教わってる。

富田:一緒に音楽を奏でる上で、テクノロジーが進歩すればするほど、最高のエフェクターは友情になる。どんなに楽器や歌がうまくても、すごい機材があっても、友情に勝るものは無いと思う。30年以上経った今も、こうして皆さんにお越し頂いておしゃべりして、演奏してってなるんだから。最近はPAをお願いすることが多い宮ちゃんに、ショーケースとしてDJやってもらう(※第一部のみのプログラム)。小山田君は、宮ちゃんのDJさばき見たことある?

小山田圭吾(以下、小山田):ない......かもです。

富田:オールドスクールで、すごくカッコいいよ。宮ちゃんとは随分ライブやってないから、楽しみだね。

DUB:言われてみたら、ヤンさんとセッションとしてタンテを使うのは、もしかしたら当時以来かもしれない。頂いた音源で、毎日稽古しています。
※一夜限りの公演を記念し、A.S.L. kute nete dojoのグッズも販売される。 http://asl-report.blogspot.com/2019/09/asl-t.html

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高木:30年以上前......僕なんかは、ブラボーもそうですけど、その後、せいこうをメインにしたショーをやる時に、ヤンさんから「完ちゃん、ブラボーの時のおしゃべりの名調子を頼む!」って声かけて頂いたのがすごいでかかったから。それは、84、5年かな? それまでやったことなかったけど、そこで初めてラップを意識して。

DUB:「あの調子で頼むわ」から始まる、日本語ラップの黎明期だ。

富田:完ちゃんは正義の味方で、こう見えて意外と不器用な人なんだよね......。

高木:え、それどういう(笑)?

富田:正義感から、不条理に対してちゃんと意見を言う人だから。ラッパーなんだね。

DUB:歯に衣着せないのはヒロシもそうだけど、完ちゃんは「おかしいものは、おかしい」と真正面から言う人だから。昔、怖かったよね。目をカーっと見開いてさ。

高木:怖かったのは、俺よりダブちゃんでしょ!

DUB:俺は、酷かっただけ。怖かったのは、(須永)辰緒とかツバキ(ハウス)軍団!

富田:宮ちゃんとヒロシは、「辰緒より年上で良かったね」って話してたもんね。

DUB:年下だったら、結構人生変わってるもんなぁ(笑)。大野さんはどうでしょう?

大野:え! ここで私に振るの。私は、ハバナエキゾチカ(※バッファロー・ドーターの前身となるガールズバンド)のデビューアルバム(※91年『踊ってばかりの国』)をヤンさんにプロデュースして頂いて、そのレコーディングがやっぱり88、9年?

富田:ロンドンで40日間鬼コーチとなって涙のレコーディング合宿。アハハ

大野:最初ヤンさんは「子供が生まれたばかりだから、海外へは行きたくない!」ってすご~く嫌々で。でも当時は東京の方が費用が高いから、ロンドンでってね。レコーディング中も私たちがひよっこすぎたから、いっぱい怒られて。合宿だと人が丸出しになるからね。若いと我慢できないじゃない。だからすごい大変だった(笑)。でも良い機会でした。

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富田:集中できたよね。当時、同時期に完ちゃんのソロもプロデュースしていたから忙しかった。いとう君の『MESS/AGE』、マーチン・デニー、阿川泰子さんも同時並行で。思い出したけど、本当は完ちゃんのライブがあるクリスマスにはロンドンから帰国するはずだったのに、伸びてしまって。国際電話で「ごめん、ちょっと戻れなくなっちゃった」って言ったら、スネちゃったのね。

高木:余計な話です(笑)。

大野:ヤンさんが、スタジオから電話してたの覚えてる。

富田:完ちゃんの1枚目のソロアルバム(※『フルーツ・オブ・ザ・リズム』)は、出すのが大変だった。1回全部やり直したりしていて、1年ぐらいかかったよね。

高木:1年以上かかりました。オケだけ持ってNYに行って、ヤンさんのトラックに、Qティップとかジャングル・ブラザーズとレコーディングしてとか......。

小山田:完さんと大野さんは、同時期にヤンさんとデビュー作を作っていたんですね。

富田:出来上がった時に完ちゃんが泣いてるの見て、自分もグッときて、もう、そんな話ばっかりなの! 涙、涙のね。アハハ

大野:ヤンさんのライブに小山田君が初めて参加したのは、ソナー(※2006年に行われた「SonarSoundTokyo」)かな?

富田:あ、それ楽屋で大野が大泣きした時だね。

大野:そうですね(笑)。照明が強すぎてヤンさんからの指示が見えなかったの!

小山田:オールスターでみんないて、ファミリー感があるというか。面白い家族みたいだなって思いました。

高木:涙、涙の。

富田:宮ちゃんも、結婚式で泣いたのね。アパッチ田中がビデオ係で、宮ちゃん泣きながら「こんなところ撮ってるんじゃねぇ!」って。その日の夜のパーティで、いとう君が司会でそのビデオを見ながらつっこむっていう、後にみうら(じゅん)さんとやるスライドショーの原型になった。自分が見た中で、あれが一番面白かった。

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小山田:ソナーと、その後某ビールのCMでも演奏をご一緒させてもらうのですが、ヤンさんと初めてお会いしたのは、2001年頃に『POINT』というアルバムでリミックスをお願いしたときだと思います。その時はちゃんとお話しできてなくて、その後に砂原君と一緒にご飯に誘って頂いた。ご飯のあとは、ラウンジでお茶をして。

DUB:大人っぽい。

高木:ヤンさんは、最初から大人だったよね。ピテカン(トロプス・エレクトス ※原宿にあった伝説のクラブ)で一番音楽を知ってる人で、当時、誰も知らないことも教えてくれた。ついこの前もヒロシとかと、「あの頃ヤンさんはどういう気持ちで俺らと接してくれてたのかな?」って話してたんです。

富田:年は離れてたけど、みんなよくしてくれるから、もう一度20代に若返れたみたいな。ヒップホップは音楽の知識量がとても大事で、それは自信があったから、これは自分の出番だなって思ったの。

DUB:マジで一緒にレコ屋で掘ってましたもんね。また、俺が通り過ぎた箱でいいの見つけるんだ(笑)。

小山田:何人くらいで行ってたんですか?

富田:6人くらいかなぁ。宮ちゃん、ヒロシ、完ちゃん、KUDO君、ゴータ、オルガンバーのオーナーの晢ちゃんとか......。

大野:私は行ってないけど当時、楽しそうだなって話をよく聞いてた。

高木:東京でもロンドンでも、ヤンさんとレコ屋に行くのがほんと楽しくて! レアグルーヴのネタも何も、当時教えてもらったことが全部今に繋がってる。ヤンさんよく、店入った瞬間に「良いレコードは光って見える」って言ってましたよね。

富田:みんな不思議がってたけど、古書マニアの人は「店の匂いを嗅いだだけで自分の探してる本があるかどうか分かる」って言うのね。自分もレコードに関してはそこまで行ってたかな? 光って見えるのは、レコードが訴えかけてきているわけ。だからそれを買うの。アハハ

DUB:そしたら、ネタがドン! それこそ、ヒップホップは本当に新しい概念、それまでにない系譜から出てきた新しい音楽だったけど、遡ってネタを探して......。ヤンさんの当時の教則レコードなんか、今も高値で取引されてますしね。ヤンさんは本質的には何も変わってないけど、この30年で業界は大きく変わった。

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富田:サンプリングに関していうと、当時は特に面白かったね。ヒップホップはカウンターカルチャーで、レコード会社と対峙もしていたわけでしょ。そういう思想があった。今は、サンプリングもビジネスとして別のものになってしまったけど。でも、そうやって時代や業界が変わっても、音楽でもなんでも、基本は積み重ねということがすごく大事だと思う。

大野:そうですね。私の場合スティールパンは特に、集中して練習しなくっちゃ。

DUB:集中していないとバレるんだよ、一緒にやると......。

富田:物事は8割が準備で、残りの2割に普段の行いが出るから。って、こんなお話でお客様はライブに来たくなるのかな? 昔話にもなっちゃったしね。

一同:アハハ

小山田:参加するようになって改めて思いますけど、僕は、ブルーノートで初めてヤンさんのショーケーススタイルのライブを見て、これまでのベスト盤のように凝縮した形で聴けたのがとても新鮮で楽しかったです。

DUB:あ、なんかその話しましたよね。こういう風に色々あると楽しいですねって。

富田:おしゃべりなので、その分お口にチャックなんで、楽しんで頂けるようにしないとね。皆さんのお力を借りてよろしくお願いします。



☆前回2018年4月のブルーノート東京公演のムービーを一部公開!






☆通算3度目となるブルーノート東京公演、9/11(水)に開催!

YANN TOMITA & DREAM TEAM
for AUDIO SCIENCE LABORATORIES SHOW CASE

2019 9.11 wed.
[1st]Open5:30pm Start6:30pm [2nd]Open8:20pm Start9:00pm
※1st Showと2nd Showは別プログラムとなります。
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/yann-tomita/

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ヤン富田(やん・とみた)
70年代後期よりスティールパン奏者、作・編曲等、多くの作品に参加。プロデューサーとして日本初のハウスアルバム『Miss A』(阿川泰子)、日本初のヒップホップアルバム『MESSS/AGE』(いとうせいこう)などを手がける。89年より、オーディオ・サイエンス・ラボラトリー主宰。

オーディオ・サイエンス・ラボラトリー・ドリームチーム
A.S.L.は、「音楽による意識の拡大」をテーマに開設された在野の民間研究機関。そこには多くの研究員、協力者が存在する。本公演には、M.C.BOO、大野由美子、小川喜之、小山田圭吾、金尾修治、COMPUMA、椎名謙介、SUZI KIM、高木完、DUB MASTER X、田村玄一、DOOPEES、東海枝尚恭、パルオ、HIPHOP最高会議-千葉隆史、永井秀二、ロボ宙が参加する。

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