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[インタビュー|OFFSTAGE]ルー・ドワイヨンにインタビュー

[インタビュー|OFFSTAGE]ルー・ドワイヨンにインタビュー

音楽が私の人生の扉を開いてくれた

 女優やモデルとして活躍を続けてきたルー・ドワイヨン。
ジェーン・バーキンとジャック・ドワイヨンの娘という
呪縛から救ってくれたのが音楽での成功だった。

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 「まるでヴェルヴェットのように、なめらかで、温かなサウンドで歌い演奏できました」

 1月に2日間2ステージ行われた初日のショウを終え、ルー・ドワイヨンはふり返った。

 「私の音楽のアレンジは控えめ。バンドも少ない音を心がけています。音の鳴っていないスペースを私が大切にしているからです。音数が少ないと、歌、つまり言葉が客席にきちんと伝わるでしょ」

 彼女には高い音域の声と低く力のある声がある。

 「意識的にコントロールするのではなく、歌に導かれるように切り替えを楽しんでいます。ただし、私のやり方はリスクと隣り合わせです。最小限の音の演奏だと、ほんのわずかなミスもはっきりとわかってしまうから。なので、高い技術を持ち、さらに私の音楽を理解している演奏家としかやれません。会場のサウンドシステムも重要です。私たちのシンプルな演奏はありのまま、伝えてほしい。その点では、ブルーノート東京のPAは愛情をもって仕事をしてくれました。演奏を増幅することなく、温かいまま客席にとどけてくれました。私も、バンドのメンバーたちも、感激しています」

 今回の来日公演は、2枚目のアルバム『レイ・ロウ』の曲が中心だった。本編のラストも、タイトルチューンの「Lay Low」で盛り上がった。

 「"レイ・ロウ"という言葉は、私にとって、マジカル・モーメント・ストーリーの象徴です。愛する人とのベッドで、世の中とは関係ないところに自分たちが存在すると思える感覚です。"レイ・ロウ""レイ・ロウ"とリフレインしていくと、心が落ち着いていく。社会から逃れられている気持ちになれます」

 この「社会から逃れられる」という感覚は、ルーにとって、とても重要だという。女優でありシンガーでもあるジェーン・バーキンを母親に、映画監督のジャック・ドワイヨンを父親に持つ彼女は、その呪縛から逃れられずに育ってきた。

 「子どもの頃からずっと、私はフランスでは有名人でした。何一つ実績がなくてもセレブとして扱われてきました。そういったいわゆる"お膳立てされた人生"から私を救ってくれたのが音楽だったのです」

 実際に彼女の人生において新しい扉を開けたのは、ファースト・アルバム『Places』(原題・日本盤未発売)のフランスでのヒットだった。

 「思いもよらない成功でした。ずっと私は女優やモデルとして仕事を続けてきました。それはそれで楽しかったし、ある種職人性の高い仕事に対して適正も感じています。安心感も覚えました。ただし、女優というのは、自分ではない誰かが作ったストーリー、言い換えるとほかの人の夢に身をゆだねる存在です。一方、音楽は自分自身のストーリーです。自分で歌詞を書き、曲を作り、歌う―。私自身が脚本家で、演出家で、アクターでもある。生まれ育った環境から、やっと救われたような、音楽のおかげで、実体のある自分を感じることを、今楽しんでいます」

live photo

Photo by Tsuneo Koga

LOU DOILLON(ルー・ドワイヨン)
1982年、パリ生まれ。父は映画監督のジャック・ドワイヨン、母はジェーン・バーキン。テレビと映画を中心に経験を重ねつつ、近年はパリのスタイルアイコンを代表する存在として注目されている。

photography = Hiroyuki Matsukage
interview & text = Kazunori Kodate
interpretation = Kazumi Someya

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