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[インタビュー|OFFSTAGE]チャールス・ロイド

[インタビュー|OFFSTAGE]チャールス・ロイド

僕のサックスは僕の歌です。僕の声です。

 9月に来日公演を行ったテナーサックスのレジェンド、チャールス・ロイドは何を意識して演奏しているのか。何を目指して演奏し続けているのだろうか。

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 サクソフォン奏者のチャールス・ロイドは力強くブロウする。その音に、人が携える悲しみや、喜びがにじむ。今世紀に入ってから少なくなってきた王道のジャズを聴かせてくれるレジェンドだ。

「僕のサックスは僕の声です。いつも歌う気持ちで演奏しています。若いころはシンガーになりたかった。でも、声に自信が持てなくて、サックスを演奏しています。僕はビリー・ホリデイが大好きでした。今も好きです。最初、彼女はいつも僕のために歌っていると思っていました。でも、誰もが僕と同じような気持ちで彼女の歌を聴いていたのでしょうね」

 チャールスは、ビリーをはじめ、数多くのレジェンドたちと同じステージに立った。

「チャーリー・パーカー、マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン、セロニアス・モンク、ビリー・ホリデイ、オーネット・コールマン......など、ジャズのレジェンドたちと僕は同じ時代を生きて、一緒に演奏をして、プライベートの時間も共有してきました。そういう亡きジャズジャイアンツのスピリッツや音楽への愛情をリスナーにも、若い世代のミュージシャンにも感じてほしい。それが今の僕の役割の1つだと思っています」

 ブルーノート東京で2日間4公演を一緒に演奏する新バンド、キンドレッド・スピリッツが若手中心のメンバーであることも、1950年代、1960年代のジャズを継承する意味があるのだろうか。

「彼らが僕の演奏を通して亡きレジェンドたちのスピリッツを得ようとしていることは感じています。ただし、音楽のクオリティに年齢やキャリアは関係ありません。僕も彼らから多くを得ています」

 時代を経ても、世代を超えて、聴き継がれるレジェンドが共通して持っていた資質とは何なのか。

「まず、謙虚だということです。コルトレーンはショーの後にどんなに称えても、いや、そんなことはないよ、としか言いませんでした。けっして自画自賛はしなかった。そして、彼らは皆、魔法のような何かを持っていたと思います。空の上からのメッセージを音楽を通して、自分を媒介として多くの人に伝えようとしていました。そのために演奏技術を磨き、心を研ぎすませて、シンプルな自分になるように努めていました。僕自身も経験値を重ねながらも、シンプルになること、常に新鮮な自分であることを意識して、今も演奏しています」

 約60年のキャリアを重ねてなお新鮮でいられるには、何が必要なのだろうか。

「自分がいかにちっぽけであるかを自覚することじゃないでしょうか。自分は何者でもない、という認識を持つことは大切です。すると、まだまだ、もっともっと、と高みを目指すようになります。それが音楽の質も高めるのです。その結果、より高揚感ある演奏ができて、しかもリスナーは安らかな気持ちになれます。これからも僕は演奏を続けます。拍手をいただいても、ブーイングを浴びせられても、今日が最後のチャンスと思って、演奏を続けます」

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Photo by Yuka Yamaji

CHARLES LLOYD "Kindred Spirits"
2019 9.3 - 9.4
CHARLES LLOYD
(チャールス・ロイド)
1938年、テネシー州生まれ。65年にキース・ジャレットやジャック・ディジョネットらと自身のカルテットで『フォレスト・フラワー』等を発表。70年代は第一線を退いたが、80年代にミシェル・ペトルチアーニとの出会いを機に復帰し注目を浴びた。

photography = Hiroyuki Matsukage
interview & text = Kazunori Kodate
interpretation = Kazumi Someya

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