初来日公演が伝説化、シルビア・ペレス・クルスが再び | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

News & Features

初来日公演が伝説化、シルビア・ペレス・クルスが再び

初来日公演が伝説化、シルビア・ペレス・クルスが再び

深紅の薔薇、苦い血の味、美しい沈黙

 2018年の初来日公演では圧巻のパフォーマンスで観客を魅了、ベスト・アクトの呼び声も高いシルビア・ペレス・クルスが再びブルーノート東京に降臨。スペイン・メノルカ島出身のピアニスト、マルコ・メスキーダとのデュオで唯一無二の世界へと誘う。

photography=Takuo Sato
text=Toru Watanabe

READ MORE



 2018年5月にブルーノート東京で行なわれたシルビア・ペレス・クルスの初来日公演は、ごく控えめに言っても、生涯忘れることはないと断言できるライヴだった。スペインのみならず、ヨーロッパやラテン・アメリカの各国でも、すでに10年に一人の逸材という評価を得ていたシルビアを、至近距離で観ることのできる機会は今後そうないだろうと思ったので、僕はブルーノート東京での計4公演のうちの3公演に足を運んだ。2018年のベスト・ライヴであったことは、言うまでもない。

2019SilviaPerezCruz_image01.jpg

Photo by Takuo Sato

 "カタルーニャ人"というアイデンティティを何よりも大切にしつつ、ユニヴァーサルな視座と幅広い音楽的バックグランドを持ち、あらゆるカテゴリーを超越しているアーティスト。シルビアは、まさしく"ローカルにしてグローバル"を体現している、音楽的かつ文化的なコスモポリタンだ。

 シルビアは自作曲も歌えば、カタルーニャやアンダルシアを中心としたスペインのシンガー・ソングライターの曲も歌い、ジャズ・スタンダードやフラメンコ、ファドも歌う。キューバやブラジル、チリなどラテン・アメリカの名曲も歌えば、シューマンやレナード・コーエン、デヴィッド・ボウイの曲も歌う。もちろん、この幅広いレパートリーは、彼女独特の審美眼に基づくもので、透徹した世界観に貫かれている。カエターノ・ヴェローゾやビョーク、エンリケ・モレンテ、ビリー・ホリデイ、エディット・ピアフ、ジョニ・ミッチェルなどの影響がシルビアの中に取り込まれ、まさに血肉と心の糧になっている。

 シルビアの歌は、燃えさかる炎や深紅の薔薇のようであり、乾いた土や孤独の匂いもすれば、苦い血の味もする。艶やかな光彩を放ち、官能が匂い立つ。しかもシルビアは映画出演の実績を誇る女優でもあり、向日葵のような笑顔がチャーミングな才媛だ。



 2018年の初来日公演は、当時のシルビアの最新作『Vestida De Nit』(2017年)に全面的に関わっていた弦楽五重奏団を伴ってのものだったが、今回はマルコ・メスキーダとのデュオという形での公演である。マルコ・メスキーダは、地中海西部のバレアレス海にあるメノルカ島生まれ。子供の頃からジャズやクラシックのピアノとオルガンを学び、シルビアと同じく、バルセロナにあるカタルーニャ高等音楽院で学位を獲得したピアニスト兼作曲家。影響を受けたクラシックの作曲家やジャズ・ピアニストとしては、ラヴェル、ヘンデル、ショパン、シューベルト、ラフマニノフ、ビル・エヴァンス、キース・ジャレット、ポール・ブレイなどを挙げているが、シルビアとコラボレーションするだけあって、スペインや地中海地域、ラテン・アメリカ全般の音楽にも影響も受けている。今年リリースされたフラメンコ・ギターの名手、チクエロ(フアン・ゴメス)とのコラボレーション・アルバム『No Hay Dos Sin Tres』は、その証左と言える一枚だ。



 シルビアとマルコは2018年から一緒に活動していて、今年に入ってからも、すでにパリやローマ、オランダ、スペインなどでライヴ・パフォーマンスを披露している。ただし、二人のコラボレーションは、未だCDや配信という形ではリリースされていない。だからこそなおさらこのデュオのライヴには、今からわくわくさせられる。これまでのライヴ映像を観ると、二人ならではのレパートリーがすでに生まれているし、マルコがピアノを演奏し、シルビアが生ギターを弾きながら歌っている曲もある。あえてひとつだけ明かしておくと、マリア・ヒタも録音しているヴィトール・ハミルの「Estrela, Estrela」が、過去のライヴで披露されている。もちろん、シルビアは、このブラジルのシンガー・ソングライターの名曲をまったく独自の解釈で歌っている。その、瞬く間に夜の帳が降り、美しい沈黙が生まれる歌を耳にした瞬間に鳥肌が立った。




渡辺亨
札幌市出身。音楽評論家、ジャーナリスト、NHK-FM「世界の快適音楽セレクション」を担当。「Music Magazine」などに寄稿。単著に『音楽の架け橋 快適音楽ディスクガイド』『プリファブ・スプラウトの音楽』。シルビア・ペレス・クルスの日本独自企画による世界初コンピレショーン『ジョイア』の選曲と解説を担当。

SÍLVIA PÉREZ CRUZ & MARCO MEZQUIDA
シルビア・ペレス・クルス & マルコ・メスキーダ
2019 10.9 wed., 10.10 thu., 10.11 fri.

[1st]Open5:30pm Start6:30pm [2nd]Open8:15pm Start9:00pm
公演詳細はこちら → http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/silvia-perez-cruz/

2019SilviaPerezCruz_image02.jpg

RECOMMENDATION