[特別対談]小沼ようすけ × 藤本一馬 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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[特別対談]小沼ようすけ × 藤本一馬

[特別対談]小沼ようすけ × 藤本一馬

デュオ・アルバムのリリースから2年を経て
各々のプロジェクトを進化させる二人のギタリスト

 8月25日(日)に「YOSUKE ONUMA "Jam Ka Quartet"」を行う小沼ようすけ、8月28日(水)に「orange pekoe / Sings songs from Organic Plastic Music」を開催するorange pekoeの藤本一馬。交流の深い二人のギタリストに今回の公演について語ってもらった。

interview & text = Tomoyuki Mori
photography = Kana Tarumi

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 共通の趣味であるサーフィンをきっかけに交流が始まり、2017年7月には"Inspired Guitar Duo"名義によるアルバム『Naja』を発表するなど、公私ともに深い関りがある小沼ようすけと藤本一馬。1990年代後半からギタリストとしてのキャリアをスタートさせた両者は、ジャズをルーツに持ちながら、幅広いジャンル、さまざまな地域の音楽を吸収し、独自のスタイルを確立するに至った。



「90年代後半は、それ以前に確立されていたジャンルの壁が壊れて、混ざっていった時代だと思うんですね。オーセンティックなジャズを表現していた上の世代のミュージシャンを見て、"自分たちの世代にしかやれない音楽とは何だろう?"と模索して。当初はニューヨークのシーンに注目していたんですが、さまざまな民族音楽、プリミティヴな要素を取り入れはじめて、クレオール・ジャズ(グアドループ島の民族音楽"グォッカ"のリズムと現代的なジャズを融合させた音楽)と出会ったんです。いろいろと探っているうちに、ここまでたどり着いたということですね」(小沼)

「確かに90年代後半、00年代前半の時代の空気の影響はありましたね。僕の場合は、ルーツはジャズなんですが、orange pekoeでポップスを追求するところから始まり、その後、ソロの演奏家として、インストゥメンタルや即興的な音楽に入っていって。2011年に最初のソロアルバム(『SUN DANCE』)を出した後、また自分を模索し始めたんです。2016年に4thソロ作『FLOW』を発表した後、アメリカに行って、ニューヨークに2年、LAに1年いて。いろいろな出会いと経験を重ねるなかで、ようやく"これが自分の音楽だ"という実感が持てるようになりましたね」(藤本)

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 8月のブルーノート東京公演は、小沼が"Jam Ka Quartet"、藤本はナガシマトモコとのデュオ"orange pekoe"での登場となる。"Jam Ka"は、小沼が立ち上げた、クレオール・ジャズの中心的ミュージシャンたちとのインターナショナル・プロジェクト。今回はグレゴリー・プリヴァ(ピアノ、キーボード)、レジー・ワシントン(ベース)、ソニー・トルーペ(ドラムス、カ)という多彩なルーツを持った演奏家ともに、さらに進化したアンサンブルを体感できそうだ。

「"Jam Ka"をはじめて約10年。ブルーノート東京での公演は今回が3回目になります。これまでの2回はレコーディングメンバーを呼んだんですが、今回のメンバーとはまだレコーディングをしていなくて、パリやミュンヘンなど、ヨーロッパで一緒にライブをやっているプレイヤーなんですよ。ソニーはグアドループ島出身のパーカッショニストで、ひとりでカーニバルのような演奏ができる。ピアノのグレゴリーはマルティニーク出身のミュージシャンで、ベースのレジーはもともとニューヨーク出身なんですが、いまはベルギーで最先端のジャズ・シーンを支えていて、僕はその渦のなかで自由に演奏させてもらってる感覚ですね。もちろんリーダーは日本人の自分なので、"日本発のインターナショナル・バンド"だと思っています。フレンチ・カリブの音楽が日本に旅することも、彼らにとっては大きな喜びのようですね」(小沼)

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"マルティニーク・ジャズ・フェスティバル"(2018年12月)出演時のライブ&ドキュメンタリー映像

 そしてorange pekoeの公演は"Sings songs from Organic Plastic Music"というタイトル通り、1stフルアルバム『Organic Plastic Music』に焦点を当てた内容。2002年にリリースされた本作は、先鋭的なトラックメイクとジャズのエッセンスを含んだソングライティングを共存させた作品で、当時のJ-POPシーンで大きな話題を集めた。リリース当時は"ダンスミュージックとジャズの融合"と評されたアルバムだが、今回はアコースティック編成のライブとなる。

「『Organic Plastic Music』は生の演奏もありますが、トラックは8割くらいの曲が打ち込みですね。ウエストロンドンのクラブミュージックやドイツのJazzanovaなどが大好きで聴いていて、インスピレーションを受けまくっていたので、その影響が大きかったと思います。クラブミュージックを通過して、ジャズをルーツにしたポップスをやるんだったら、ビートは絶対にカッコ良くなくちゃいけないと思って、むちゃくちゃこだわっていたんですよね。今回のブルーノート東京公演で『Organic~』に焦点を当てたのは、デビュー20周年を迎えたことがきっかけ。メンバーは、自分のソロのライブにも参加してくれている林正樹くん(ピアノ)、西嶋徹さん(ベース)、昔からよくやっている斉藤良くん(ドラムス)。いま自分がやっている音楽ともリンクさせられるかなと。ナガシマ(トモコ)もニューヨークの音楽活動でさらにディープな表現をまとっているので......相方をホメるのもおかしいですけど(笑)」(藤本)

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 これまでに幾度となくセッションを繰り返し、豊かな音楽を生み出してきた小沼と藤本。「一馬くんは歌モノから即興までいろいろなプロジェクトをやっているし、一緒にセッションすると、相手の音にコネクトする能力に長けていることがわかります」(小沼)、「ようすけくんは世界中のプレイヤーと共演していて、野生の勘というか、瞬発力、その場ですぐに反応する力がすごいんですよね」(藤本)とリスペクトし合う二人にブルーノート東京公演に対する思いを話してもらった。

「憧れのミュージシャンの演奏を何度も聴いてきたし、ブルーノート東京は特別なステージなんですよね。フレンチ・カリブのリズムはまだ日本には浸透してないですが、世界にひとつしかない"Jam Ka"の音楽をぜひ楽しんでいただけたらなと」(小沼)

「orange pekoeとしてブルーノート東京のステージに上がるのは今回が初めて。『Organic Plastic Music』の曲を演奏することもそうだし、特別な夜になると思うし、ナガシマも武者震いしてるんじゃないかなと(笑)。せっかくこうやって二人でインタビューしてもらったので、いつかぜひ、ようすけくんと一緒にブルーノートで演奏してみたいですね」(藤本)

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YOSUKE ONUMA "Jam Ka Quartet"
featuring GRÉGORY PRIVAT, REGGIE WASHINGTON & SONNY TROUPÉ
2019 8.25 sun.

[1st]Open4:00pm Start5:00pm [2nd]Open7:00pm Start8:00pm

小沼ようすけ(g), グレゴリー・プリヴァ(p,key), レジー・ワシントン(b), ソニー・トルーペ(ds,ka)
公演詳細はこちら → https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/yosuke-onuma/

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orange pekoe
Sings songs from Organic Plastic Music
2019 8.28 wed.

[1st]Open5:30pm Start6:30pm [2nd]Open8:20pm Start9:00pm

オレンジペコー:
ナガシマトモコ(vo), 藤本一馬(g)
バンドメンバー:
林正樹(p), 西嶋徹(b), 斉藤良(ds)
公演詳細はこちら → https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/orange-pekoe/

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森朋之 (もり・ともゆき)
1999年から音楽ライターとして活動をスタート。ポップス、ロック、ジャズなど幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『エンタメステーション』など。

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