アフロビートの奥義を現代に継ぐ男、シェウン・クティ初登場 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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アフロビートの奥義を現代に継ぐ男、シェウン・クティ初登場

アフロビートの奥義を現代に継ぐ男、シェウン・クティ初登場

アフロビートの真髄をライヴで
最新作を携え、その後継者が初登場!

現代アフロビートの頂点を自ら更新し続けるシェウン・クティが、真夏のブルーノート東京に初降臨。至近距離でその強靭なグルーヴを浴びるステージは、あらゆる音楽ファンに最大級のインパクトを残すこと必至です。

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★偉大な父親=フェラ・クティが築いたスタイルを継承する、最強の正統後継者


 ナイジェリアのフェラ・クティが 1960年代末に確立し、ハイライフやモダン・ジャズ、ジェイムス・ブラウンのファンクなどからの影響を独自に統合した強靭なグルーヴと、権力者を糾弾する痛烈なメッセージに満ちた歌詞で世界的な支持を集めたアフロビート。創始者のフェラが '97年に亡くなって以降も、エリカ・バドゥやコモンらを筆頭とする米国のネオソウル勢、レア・グルーヴを通過したクラブ・ジャズやハウスなどを含むアフロセントリックなダンス・ミュージック全般に多大な影響を与え、2000年代以降はアンティバラスを筆頭とするアフロビー トを演奏するバンドが世界各国から次々と登場して国境や人種を越えたシーンを形成。もはやその音楽的遺伝子は、ヒップホップや現代ジャズからインディ・ロック、テクノに至るまでのあらゆる現在進行形のサウンドに浸透している。

 そんなアフロビートの、現行の音楽シーンにおける最強の継承者といえるのが、フェラ一族の末っ子でもある '82年生まれのシェウン・クティだ。晩年の年の父のステージを見ながら育ち、フェラのバックを務めてきたバンドであるエジプト80をそのまま引き継いで音楽活動をスタートさせた彼は、'08年に数多くのワールド・ミュージック史に残る傑作を手がけてきた名匠マルタン・メソニエをプロデューサーに迎えた『メニー・シングス』で華々しくデビュー。父親譲りなフロントマンとしての圧倒的な存在感と、ストレートでありながらもアフロビートの奥義を知り尽くしたエジプト80の面々による鉄壁のグルーヴで現行シーンの頂点に立つと、'11年にはブライアン・イーノのプロデュースでよりタイトな境地を示した傑作2nd『怒りのアフリカより:RISE』を発表。フェラの正統後継者としての立ち位置を不動のものとした。

 しかし、初期の2作で頂点を極めてしまったシェウン・クティのアフロビートは、その後も着実に現代的なアップデートを続けている。'14 年に発表した3枚目のアルバム『ロング・ウェイ・トゥ・ザ・ビ ギニング~始まりへの長い道のり』では、新世代ジャズの躍進をリードし続けるロバート・グラスパーをプロデューサーに迎え、ラッパーや女性R&Bシンガーも随所にフィーチャーしながらよりハイブリッ ドな新境地を提示。リズムやアンサンブルにも過去作になかった新たなアプローチが盛り込まれ、より同時代性の高いグルーヴを獲得した快作となった。そして、引き続きグラスパーとのコラボによる配信のみでリリースされたEPを経て、今年に入って届けられた最新アルバム『BLACK TIMES』では前作で示していた新地平をしっかりと血肉化し、より強靭さを増したバンド・サウンドで表現し切ったような新たな高みへと到達。ゲストにはラテン・ロック界の偉大なイノヴェーターであるカルロス・サン タナを1曲で迎えながら、切れ味の鋭さと風格を兼ね備えた別次元のグルーヴで揺るがぬ絶対王者ぶりを示した会心作に仕上がっている。

★ロバート・グラスパーらとの邂逅を経て、よりソリッドで強靭な境地へと到達


 そんな現行アフロビートの最高峰にして、最新作からも隙のない好調ぶりを伝えるシェウン・クティ が 、真夏のブルーノート東京にエジプト80を率いての総勢14名のフル編成で登場するとあっては、どう考えても見逃す理由が見当たらない。レコーディング作品を大きく上回るグルーヴの雄大さと、パフォーマーとしてのカリスマ性の高さをダイレクトに伝えるライブの素晴らしさは、これまでの来日公演でもすでに実証済みだが、場所がブルーノート東京とあってはまた話は別。これまでの来日では例のない至近距離でアフロビートの洗礼を受けることになる今回の公演は、これまでの公演を目撃してきたファンにとっても今回が初体験となる。聴き手にとっても、忘れることのできないスペシャルな音楽体験となることだけは間違いないだろう。

 ワールド・ミュージックがひとつのジャンルとして確立される以前から世界中のポピュラー音楽を積極的に日本に紹介してきた音楽評論家の故・中村とうよう氏は、'78年に初めて日本盤として発表されたフェラ・クティの代表作『ゾンビ』のライナーノーツにおいて以下のように記している。「後世の歴史家がポピュラー音楽の歴史を書くときに、1970年代の世界の音楽に占めるフェラ・クティの位置を、1960年代におけるビートルズやボブ・ディランに匹敵するくらい大きなものに見るのではないか」と。もちろん当時にこの記述はあまりにも早過ぎたが、冒頭でも少し触れたように現行の音楽シーンにおけるアフロビートの広範な影響力の大きさを踏まえてみれば、とうよう氏が指摘した"未来"はもうすでに到来しているものであるとも言えるのかもしれない。アフリカ音楽という範疇すら超えて、世界中の様々な音楽を刺激し続けてきたアフロビートの最強の後継者を二度とないだろう至近距離で体感することができる貴重な機会を、ぜひお見逃しなく。

 

『BLACK TIMES』
( Strut )

ポール・マッカートニーもコメント
アフロビートの創始者、父フェラ

フェラ・クティが確立した"アフロビート" はファンクやジャズ、アフリカ音楽が元となり、そこに黒人の解放や母国政府への非難といったメッセージがのせられた。単にダンサブルなサウンドと言えないその音楽性は、ポール・マッカートニーやザ・ルーツのクエストラヴをはじめ、世界のミュージシャンに影響を与えている。

text = Hidesumi Yoshimoto

吉本秀純 (よしもと・ひですみ)
ワールド・ミュージックを中心に様々なジャンルや媒体で執筆する大阪市在住の音楽ライター。これまでに『GLOCAL BEATS』『アフロ・ポップ・ディスク・ガ イド』を監修。『Jazz The New Chapter』でもワールド色の強いジャズを担当。

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