チャールス・ロイド、ビル・フリゼールがいよいよステージに | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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チャールス・ロイド、ビル・フリゼールがいよいよステージに

チャールス・ロイド、ビル・フリゼールがいよいよステージに

ロイドとフリゼール、
ジャズ界の鬼才同士の共演

60年代、ロック・ファンに最も支持されたジャズマンで、タレント・スカウトとしても名高いサックス奏者チャールス・ロイドが、ギターの魔術師ビル・フリゼールと共に来日!

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text = Koji Murai

 チャールス・ロイドの新作『アイ・ロング・トゥ・シー・ユー』(ユニバーサル ミュージック)は、ボブ・ディランの「戦争の親玉」や、アメリカのフォーク・トラディショナルを採り上げた意欲作だ。ロイドはこのアルバムで、ウィリー・ネルソンとノラ・ジョーンズをゲスト・ヴォーカルに迎え、さらにアメリカン・ミュージックに精通したギタリストのビル・フリゼールと初めて共演したが、なんと今回のブルーノート東京での公演にもフリゼールが参加することになり、大きな話題を呼んでいる。

 他のメンバーは、ベースがリューベン・ロジャース、ドラムスがエリック・ハーランドという、今のジャズ・シーンの中核を支える腕利きたち。この二人はピアノのジェイソン・モランとともにロイドが2007年から活動していたグループのメンバーであり、『アイ・ロング・トゥ・シー・ユー』のレコーディングにも参加している。

 1938年生まれのロイドが最初に注目されたのは、彼が66年に結成したグループでの活動だった。当時20代前半だったキース・ジャレット(ピアノ)とジャック・ディジョネット(ドラムス)を抜擢し、ロック的なフィーリングを盛り込んだ斬新なサウンドを聴かせたロイド・グループの音楽は、当時隆盛だったロック世代の心を捉え、サンフランシスコにあったロックの殿堂「フィルモア」に初めて出演したジャズ・バンドとなった。

 70年代はスタジオ・ミュージシャンとしてビーチ・ボーイズなどの録音に参加していたロイドが、ジャズ界に復帰したのは80年代初頭のこと。今度はフランス出身のピアニスト、ミシェル・ペトルチアーニをメンバーに起用したロイドは、かつてとはひと味違った内省的な音楽を披露し、ジャズ・ファンに深い感銘を与えた。前述したように、ここのところはモラン、ロジャース、ハーランドとグループを組み、若い才能を見出す目利きぶりは衰えていない。

 南部のブルースのメッカであるメンフィスに生まれ、アフリカン・アメリカン、チェロキー・インディアン、アイルランド、そして黄色人種の血も混じっているというロイドは、さまざまな人種が混在する「アメリカ」という国を象徴するような音楽家だと言える。その彼がカントリーや黒人霊歌などのアメリカの伝承曲を採り上げるのは必然的なことだろう。そしてロイドは、こうした曲のために最良の助っ人を呼んできた。それがビル・フリゼールだ。

 1951年生まれのフリゼールは、ジャズにとどまらず、ロック、ブルース、アヴァンギャルド音楽、サーフ・ミュージックなど、あらゆるタイプの音楽に精通し、しかも何を弾いてもすぐに彼だと分かる強烈な個性を持ったギターの巨匠。カントリー・ミュージックにも造詣が深く、レパートリーにはカントリーやフォークの伝承曲も数多く含まれている。『アイ・ロング・トゥ・シー・ユー』でのフリゼールは、淡々としたロイドのサックスを優しく包み込む、味わい深くしかもスリリングなギター・プレイを聴かせてくれた。この二人の夢の共演を間近に体験できる今回の公演は、忘れがたい感動を残すに違いない。

 

音楽情報・ レヴューサイト〈 Mikiki 〉
http://mikiki.tokyo.jp

見応えのある映像も含めた本特集の拡大版も是非、ご覧ください!

村井康司(むらい・こうじ)
音楽評論家。尚美学園大学講師。1958年北海道生まれ。ジャズを中心とした評論活動を行う。著書に『ジャズの明日へ』(河出書房新社)、『JAZZ 100の扉』(アルテスパブリッシング)などがある。

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