[鼎談 VOL.2]松蔭浩之×中原昌也×村尾泰郎が語るジェームス・チャンス | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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[鼎談 VOL.2]松蔭浩之×中原昌也×村尾泰郎が語るジェームス・チャンス

[鼎談 VOL.2]松蔭浩之×中原昌也×村尾泰郎が語るジェームス・チャンス

>>鼎談 VOL.1はこちら

アートワーク〜ライブパフォーマンスまで
ブルーノート東京でのライヴの見どころ

ジェームス・チャンスが残してきたものは何だったのか。70年代に起こった潮流"ノー・ウェイヴ"の実体を語ったVOL.1に続き、今回はトレードマークのリーゼントや恋人アーニャが撮った写真などのアートワーク、そしてブルーノート東京のライヴの見どころまで、松蔭浩之氏、中原昌也氏、そして村尾泰郎氏がさらに語ってゆく。

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村尾 そんななかで、中原さんはジェームス・チャンスを初めて聴いた時、どんなところに惹かれました?

中原 なんだろうなあ。勢いだけで良いんだなって(笑)。あと『バイ』のジャケがカッコ良かった。




中原昌也氏


松蔭 飾っておけるデザインだよね、おネエちゃんカッコつけてるけど胸が小さくて、それがまた良いというか(笑)。

中原 ピンクの〈BUY〉っていう文字も良いんですよ。このジャケってアーニャのデザインなんでしたっけ?

村尾 そうです。当時、ジェームスと付き合ってたアーニャ・フィリップス。81年に26歳で癌で亡くなっちゃうんですけど、彼女がジェームスのファッションからアートワークまで、ヴィジュアル面をすべて取り仕切ってたんです。

松蔭 そう、ジェームスってルックスが良いでしょ。そこにも惹かれたんだよね。一貫してリーゼントでネクタイ締めてさ。

村尾 あのリーゼントは彼がリスペクトするエルヴィス・プレスリーやジェームス・ブラウンへのオマージュなんでしょうね。

松蔭 だろうね。ニュー・ウェイヴの時代にあのルックスは新鮮だった。俺は九州の小倉育ちだから、ルースターズとかチェッカーズとかロッカーを見てたんでジェームスのルックスに親近感を感じたってのはあるね。美形っぽいイギリスのニュー・ウェイヴとは違うカッコ良さ。

村尾 『ノー・ニューヨーク』の裏ジャケの写真では目に痣をつけてたりして、そういう不良っぽいところもジェームスの魅力というか。








『ノー・ニューヨーク』のジャケット裏面の写真では目に痣をつけるジェームス・チャンスが。(最上段左から2番目)








JAMES WHITE AND THE BLACKS『Off White』のジャケット裏面。Ginger Leeとクレジットされている中央の黒髪のアジア系女性が、当時ジェームスと付き合ってたアーニャ・フィリップス(1955-1981)。

松蔭 当時、ジェームス・チャンスって喧嘩っぱやくて、ライヴ中に客席に降りていって客を殴るっていう伝説があってさ。恐い人なんだって思ってた。

村尾 ほんとに殴ってたみたいですね。盛り上がってくると客を殴るっていうのが、JBのマントショウみたいなお決まりの演出で。もっぱら音楽評論家とか文化人っぽいヤツを見つけて殴ってたらしいですけど、中原さんは音楽評論家とか観客を殴ったことは?。

中原 ないですよ! そんなの(笑)。

村尾 よかった(笑)。ジェームスは最近は穏やかになったみたいで、インタビューを読むと〈俺はみんなが思ってるほど暴力的な人間じゃない〉とか言ってます。

中原 殴っといて何言ってんだって感じですよ(笑)。スーサイドとかライヴでムチを振り回してたけど、それは観客が暴動を起こすから、それを守るためにやったんだとか言ってて。言い訳でしょ!




松蔭浩之氏




村尾泰郎氏


村尾 ジェームス、5年前に来日した時はさすがに殴ってませんでしたが、お二人はこれまでジェームスのライヴを見たことは?

松蔭 ないんですよ。だから今回すごく楽しみですね。

中原 僕も見たことなくて。2005年に来日した時にジェームス・チャンスの本が出て、そこに原稿書いたんですけど貧乏なんでライヴには行けなかったんです。

松蔭 今回ブルーノートでやるっていうのもスゴいよね。ジェームスみたいなキレキレのロック・ミュージシャンがブルーノートでやることにとやかく言う人がいるかもしれないけど。ハコの雰囲気が違うとかさ。

中原 そういう考え方が古いんですよ。僕はブルーノートが、ちゃんとこういう人を呼んでくれるのが嬉しいですね。

村尾 今回はオリジナル・メンバーではないけどコントーションズ名義ですからね。きっと『バイ』からの曲もやってくれるはず。

松蔭 やっぱり〈コントート・ユア・セルフ〉とか〈サックス・マニアック〉とか代表曲は聴きたいよね。僕はどちらかというとライヴでは新曲より名曲を聴きたい懐メロ愛好家だから(笑)。

中原 誰でもそういう部分はありますよ。昔のままを期待するのか、〈こんなんじゃなかったのに!〉という驚きを期待するのか。どっちにしても初めてだから楽しみですね。

松蔭 昔みたいに勢いがなかったとしても、山あり谷ありのなかでずっと音楽をやってて、今もサックスを持ってステージに上がれるのであればそれはもう絶対観たいよね。この前来たスワンズもさ、若い時は勢いだけだったけど、今では演奏が達者な人が集まってて。成熟という言葉はあまり使いたくないけど、熟練した演奏を聴かせてくれたしさ。

中原 成熟は否定したいですけど、いつまでも同じだと飽きられるし。難しいんですよね、成長って。成長っていうか加齢の仕方が(笑)。

村尾 最近、ポップ・グループとかPILとかポスト・パンクのバンドが再結成して新作出してますけど、彼らはストレートなロック・バンドが再結成する以上に風当たりが強いと思うんですよ。加齢による成熟が許されないバンドなので。それでも表現せずにはいられない業というか、それをジェームスにも見せてもらいたいですね。生涯ノー・ニューヨークな心意気。で、中原さんにはぜひジェームスとコラボレートして欲しいし。

中原 嫌ですよ! そんな恐いこと。ヘタしたら殴られそうだし。遠目に見てるだけで大丈夫です。

松蔭 この前、アート・リンゼイがブルーノートでやった時、ジム・オルークさんと一緒にやったステージを見たけど、あそこに中原君が入ったら面白いなって思ったよ。

中原 まあ、やれって言われればやりますけど、殴られそうになったらすぐ逃げます(笑)。


★James Chance & Friends - Sax Maniac





[プロフィール ※写真左から]

松蔭浩之(まつかげ・ひろゆき)
現代美術家。1990年アートユニット「コンプレッソ・プラスティコ」でヴェネツィア・ビエンナーレ・アペルト部門に世界最年少で出展。以後個展を中心に国内外で活動。アート集団「昭和40年会」の活動でも知られる。

中原昌也(なかはら・まさや)
ミュージシャン・映画評論家・作家。新刊に『知的生き方教室』(文藝春秋刊)がある。

村尾泰郎(むらお・やすお)
音楽/映画ライター。監修/執筆を手掛けた書籍に、ノー・ニューヨークからポスト・ロックに至るアメリカのオルタナティヴなロック・シーンを年代別にまとめたディスクガイド『USオルタナティヴ・ロック 1978-1999』(シンコーミュージック)がある。

photography = Hiroyuki Matsukage
interview & text = Yasuo Murao

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[ブルーノート東京 B1フロア、バー]
Bar BACKYARD
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★1.22 fri. 6:00pm~9:30pm
北村信彦(ヒステリックグラマー)、高橋盾(アンダーカバー)
★1.23 sat. 4:00pm~8:00pm
中西俊夫 (ミュージシャン/音楽プロデューサー)、中原昌也 (ミュージシャン/作家)
★1.24 sun. 4:00pm~8:00pm
伊藤桂司(イラストレーター/アート・ディレクター)、松蔭浩之(現代美術家)

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