【JAM vol.228】MARISA MONTE | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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【JAM vol.228】MARISA MONTE

【JAM vol.228】MARISA MONTE
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text = Kenichi Aono

現代MPBの発展に大いに貢献してきたマリーザ・モンチ
その魅力をじっくり味わえる初のブルーノート東京公演

 これまで1992年、2007年、2019年と3度の来日公演を行ってきたブラジルのシンガー・ソングライター、マリーザ・モンチが5年ぶりに日本にやってくる。しかも初のブルーノート東京公演となれば、自ずと期待に胸がふくらむというものだ。

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 1967年、ブラジルはリオデジャネイロに生まれたマリーザ・モンチは幼少期から音楽に興味を示し、ピアノやドラムのレッスンを受講していた。子どもの頃のフェイヴァリットはマリア・カラスとビリー・ホリデイ。それからカルメン・ミランダをはじめとするさまざまなブラジル音楽にも親しんだという。ブラジルの大学で音楽を学んでいた彼女だが、関心のあったオペラの歌唱を深めようと思い、ローマに留学。しかしその数ヶ月後には現代ブラジル音楽の魅力を再認識し帰国する。87年、マリーザがリオデジャネイロの人気ヴェニュー「ジャズマニア」のステージに初めて立ってパフォーマンスを披露すると、ブラジル音楽シーンにおける新しい衝撃と称されるほど大きな反響を呼んだ。これにより彼女の名前はジャズやMPB(ブラジルのポピュラー・ミュージック)のファンはもとより、ロック好きな若者層にも急速に知れ渡ることとなった。

 デビュー・アルバム『Marisa Monte』(1989)は異例のライヴ盤。サンバ、ボサノヴァ、ジャズ、ソウル、そしてロックまでとレンジの広い内容のこのアルバムで、マリーザは自身のポテンシャルを遺憾なく発揮し、多くの支持を得る。セカンド・アルバム『マイス』(1991)は、アート・リンゼイをプロデューサーに迎え、坂本龍一やジョン・ゾーン、マーク・リボー、バニー・ウォーレル、ナナ・ヴァスコンセロス、エヂ・モッタといったアーティストが参加したことも話題となった作品。アート・リンゼイのフリーキー加減も相まった斬新なMPBであり、これによりオーセンティックなブラジル音楽ファンだけでない、より幅広いリスナーを獲得することに成功したといえるだろう。リオデジャネイロとニューヨークで録音された3作目『ローズ・アンド・チャコール』(1994)はマリーザ自身と前作に続いてアート・リンゼイがプロデュース。こちらもジルベルト・ジル、マルコス・スザーノ、セルソ・フォンセカ、ローリー・アンダーソン、フィリップ・グラス(アレンジ)など多彩なゲスト・アーティストが目を引くが、カルリーニョス・ブラウン、アルナルド・アントゥニスの参加も見逃せないところだろう。両者とマリーザはユニット「トリバリスタス」を結成、アルバムもリリースしており、マリーザの作品で共作も続けている。

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 先述の初期3作品は、彼女のキャリアの礎となるものなのでやや詳しく記してきたわけだが、実にハイブリッドな内容に改めて感嘆してしまう。そしてこのハイブリッド感は、そのまま20世紀終盤以降から現在まで連なるMPBの発展の歩みといっても差し支えないだろう。歴史のなかで大切にされてきた伝統的なものと新鮮な驚きを与えてくれる現代的なもの、いずれにも自然に触れることができたのは、彼女の世代に特徴的かもしれないが、それを作品やパフォーマンスに落とし込むセンスや技巧はまた別の話。現代まで第一線で活躍し続けていることが、彼女の才能を如実に物語っている。

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 『Marisa Monte』と『ローズ・アンド・チャコール』が『ローリング・ストーン』誌の「ブラジル音楽史上最高のアルバム100作」に選出されているマリーザだが、21世紀に入ってからの作品も名作ばかり。2006年リリースの『私のまわりの宇宙』ではラテン・グラミー賞を受賞。前作から10年ぶりとなった最新作『ポルタス』(2021)は「最もインターナショナルなコラボレーションの多いアルバム」(e-magazine『LATINA』2021年10月15日掲載、中原仁氏によるマリーザ・モンチへのインタビューより)であり、若き才能からアート・リンゼイ、アルトゥール・ヴェロカイといったベテラン勢まで、幅広い世代が参加したトランス・ジェネレーションでカラフルな印象の作品となった。今回の1回限りのブルーノート東京公演では、この『ポルタス』からの曲や自身の代表曲などを披露してくれる模様だ。参加メンバーは『ポルタス』でも八面六臂の活躍を見せたマルチ楽器奏者のダヂ、ギタリストのダヴィ・モライスの両名と、ドラムにプピーロ、パーカッションにぺドリーニョ・ダ・セヒーニャ。小規模アンサンブルということでじっくりと歌、演奏に集中できそうなのが嬉しい。現代ブラジル音楽の真髄をこの機会にぜひ。

RELEASE INFORMATION


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『ポルタス』
(ソニー・ミュージックジャパン インターナショナル)

LIVE INFORMATION

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MARISA MONTE

2024 5.10 fri.
Open6:00pm Start7:00pm ★本公演は1日1ショウのみ
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/marisa-monte/

<MEMBER>
マリーザ・モンチ(ヴォーカル、ギター)
ダヂ(ベース)
ダヴィ・モライス(ギター)
プピーロ(ドラムス)
ペドリーニョ・ダ・セヒーニャ(パーカッション)

後援:駐日ブラジル大使館

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