【スペシャル対談】マーティ・ホロベック&井上銘 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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【スペシャル対談】マーティ・ホロベック&井上銘

【スペシャル対談】マーティ・ホロベック&井上銘

日本のジャズ・シーンで活躍するオーストラリア人ベーシスト
気心の知れた2人と作り上げた最新トリオ・アルバム

 オーストラリア、アデレード出身のベーシスト/作曲家のマーティ・ホロベックは、デキシーランド風の軽快な演奏が魅力のジャズ・バンド、ザ・ラガフォンズの一員として2015年に初来日して日本が気に入り、2018年から東京に拠点を置いている。2020年には、オーストラリアの腕利きピアニスト、ジェームス・バウワーズと、初来日時に出会って意気投合した才気煥発のドラマー、石若駿を迎えて、初リーダー作『Trio I』を発表した。そして今回、ドラムスの石若はそのままに、プロデューサーやラジオ・パーソナリティ、ヴォーカリストなど、ジャズ・ギタリストの枠を超えて多彩な活動を展開する井上銘を迎えたギター・トリオの編成で、リーダー作第2弾『Trio II』を録音。3月2日には丸の内コットンクラブでアルバム発売記念公演を行う運びとなった。

interview & text = Akira Sakamoto
live photo = Tsuneo Koga

※ブルーノート東京公演を記念して、コットンクラブ公演に向けて行われたスペシャル対談を再掲載

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マーティ・ホロベック(以下、MH):銘とはラガフォンズで初来日した時に出会って以来、いつか一緒にやりたいと思っていたんですよ。

井上銘(以下、MI):ああ、ありがたいですね。マーティと石若君とのトリオでは、2年くらい前の夏に新宿PIT INNでやったんですよ。で、その半年ぐらい後にはマーティのバンドとして同じメンバーでもう一度一緒にやりました。

MH:もともと銘のバンドだったから、それを乗っ取っちゃったみたいで、申し訳ないなあと思っています。

MI:いやいや、もう、全然嬉しいですよ。その年の暮にマーティと会った時、僕のトリオがその年で最も楽しいギグのひとつだったって言ってくれたのもすごい嬉しかった。

MH:メッチャ楽しかったよね。

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 井上と石若は10代の頃から共演を重ね、軽妙で洗練されたポップ・グループCRCK/LCKSでも活動を共にするなど、ジャズ以外にも様々な音楽スタイルを共有している。一方、ホロベックも、パンク・ロックのパワーを帯びた怒涛のグルーヴがクセになる石若のバンドSMTKでもベースを担当しているということで、このトリオは音楽をどんな方向性にでも展開できるポテンシャルを持っている。新作でも、マーティがアップライト・ベースを弾く「Naruyouninaru」や石若の「Room」といった空気感のある美しい曲から、エレクトリック・ベースに持ち替えての「Karuizawa」や井上の「Polygon」といったSMTKにも通じるようなパワフルな曲、トリッキーな変拍子の「Nagoya no Ie」まで、バラエティに富んでいる。

MH:エレクトリック・ベースは2008年に自分のバンドを組んだ時以来、ジャズ系のバンドではあまり使っていなかったけれど、今回はエレクトリックもやりたかったんです。『Trio II』では録音エンジニアも自分でやったから、いろんな意味でものすごく良い勉強になりました。「Polygon」のグランジやパンクっぽい音はどうやって作ったらいいかとか。でも、これだけ違うスタイルの曲を集めて統一感を出すのは難しくはなかったですね。

MI:すごく普通にやりましたよね。ごく自然に。

MH:「Nagoya no Ie」は終わりの部分がすごく難しくて、僕も含めたみんなが間違っちゃって何度もやり直したけれど(笑)、最後のテイクはすごく良かったと思う。ちなみに、5拍子や6拍子が入り乱れる終わりの部分はグレッグ・シーハンという、オーストラリアの有名なパーカッショニストのコンセプトを取り入れています。

※2021年3月2日 新宿PIT INNライヴより

MI:録音したのも、小淵沢にある面白いスタジオだったんですよね。音楽好きの歯医者さんが診療所の2階に作ったスタジオで。

MH:そうそう、「星と虹レコーディングスタジオ」っていう、DIY風の変わったところだけれど、窓から南アルプスが見渡せる素晴らしいスタジオでした。

MI:ギターは普通、アンプだけブースで鳴らして、自分は別の部屋で弾いて録音するんだけれど、今回は自分もアンプと同じブースで弾いたから、「Polygon」みたいにフィードバックが使えて楽しかったです。フィードバックって、自分が思ったのとは違う音になるのが面白くて、メッチャ好きなんですよ(笑)。

 石若の「Room」はもともと3拍子の曲だが、リハーサルをやっているうちに拍子をなくして、メロディを中心に3人の呼吸で合わせていくような演奏にしようということになったという。そのような演奏ができるのも、3人の息が合っているからこそである。

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MH:駿君とは2015年に出会ってから、すごくたくさん一緒に演奏していて、去年だけでも80回ぐらいやっているんですよ。

MI:へえー!

MH:だから、彼とならJ-POPでもジャズでも、何でも自由にやれると思っています。銘君と駿君もすごく長い間一緒にやっているし、そういう深い関係はメッチャ大事ですね。ものすごく遅い3拍子の「Closer」も、このバンドだからこそ演奏できる曲だと思います。

MI:「Closer」もメチャメチャ良い曲ですよね。ジョー・タリア(※オーストラリア人のドラマー/作曲家/プロデューサーで、今年1月まで日本在住)のミックスもよかった。

MH:ジョーは『Trio I』もミックスしてくれているし、『Trio II』では4人目のメンバーみたいな感じで、彼じゃなければ全然違うサウンドになっていたと思います。

『Trio I』も『Trio II』も、音楽的には"ジャズ"に分類されるのかもしれないが、これまでのホロベック自身の広範な音楽歴が集約されているのは間違いない。

※「Body and Soul」 from『Trio I』 Marty Holoubek Trio featuring James Bowers, Shun Ishiwaka

MH:若い頃からビッグバンドやビバップもたくさんやっていたけれど、自分がジャズ・ミュージシャンだとは思っていないんです。父親はブルース・ギタリストだけれど、子供の頃からクラシックの現代音楽もブルースもロックもジャズも聴いていたし、ラジオから流れて来るポップスも好きでした。11歳の頃、母親が教会でギターを弾いて歌っていて、その時に少しだけベースを弾いたことがありましたが、芸術専門だった中学校と高校ではサクソフォンを専攻していたんです。でも、サクソフォンがメッチャ下手で、中学1年の時にいろんなスクールバンドやクラシックのアンサンブルのオーディションを受けたけれど、全部落ちちゃった(笑)。それで、先生に相談して「他に弾ける楽器はあるかい?」と聞かれて、ベースがやりたかったから「ベースが弾けます」と答えたんです。これ、メッチャ嘘(笑)。

MI:(笑)

MH:そうしたら、翌日にベースを欲しがっている2年生のバンドのオーディションがあるから受けてみるように言われました。それで、家に帰って父親のベースで弦とフレットと音の関係を覚えて(笑)、なんとか合格したというのがベースを始めたきっかけです。その後すぐにベースのレッスンを受け始めて、アデレード大学に入ってからは6弦ベース・プレイヤーのジョン・アウイ(John Aue)という素晴らしい先生と出会って、インプロヴァイズする時の音の選び方や楽曲重視の考え方など、多くのことを学びました。同じコードでも、ベースの音の選び方次第で全体のサウンドがいかに大きく変化するかとか。コード楽器のプレイヤーの中には、そこが気に入らないという人もいたりしますが(笑)。

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MI:僕はベースが好きで、好きなタイプのベース・プレイヤーっていうのは、音楽をコントロールしてくれる人なんです。自動車のドライバーみたいに、右や左にハンドルを切ってくれる人というか。マーティの持っているヴァイブはいつもナチュラルですごくハッピーなんだけれど、演奏する時には、常にその瞬間の音楽の状態をしっかり把握してくれているところが好きなんですよ。僕も誰かの伴奏をする時には同じような気持ちでやっているし、このトリオのメンバーはみんな、そういう感覚が共通しているんだと思います。だから、たとえば僕が間違えたりしても、マーティと駿は瞬間的に反応して、僕が間違えていないように合わせてくれるんですよ(笑)。

MH:僕は、演奏中にそういうことが起きるのは大好きですよ。Aセクションを2回繰り返すところを1回やっただけでBセクションに行っちゃったとしても、それは、その時にそう感じたということでオッケーなわけで、そういう自由さが大事なんだと思います。


坂本 信(さかもと・あきら)
札幌市出身。レコード会社や音楽出版社、楽器メーカーのための翻訳、数百人のアーティストのインタヴュー、通訳を務める。ベーシストとしても活動し、高崎晃や伊東たけし、マイク・オーランドなどと共演。

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Marty Holoubek
『TrioⅡ』
(APOLLO SOUNDS)
※2022年4月発売予定

LIVE INFORMATION

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マーティ・ホロベック・トリオ featuring 井上銘&石若駿
MARTY HOLOUBEK TRIO featuring MAY INOUE & SHUN ISHIWAKA


2022 5.2 mon.
[1st]Open4:00pm Start4:45pm
[2nd]Open6:30pm Start7:30pm
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/marty-holoubek/

<MEMBER>
マーティ・ホロベック(ベース)
井上銘(ギター)
石若駿(ドラムス)


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【コットンクラブ】
マーティ・ホロベック・トリオ featuring 井上銘 & 石若駿
MARTY HOLOUBEK TRIO featuring MAY INOUE & SHUN ISHIWAKA


2022 3.2 wed.
[1st.show] open 4:00pm / start 5:00pm
[2nd.show] open 6:45pm / start 7:30pm
※公演時間が当初の予定から変更になっております。
http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/marty-holoubek-trio/

<MEMBER>
マーティ・ホロベック (b)
井上銘 (g)
石若駿 (ds)


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