【スペシャルインタビュー】山中千尋 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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【スペシャルインタビュー】山中千尋

【スペシャルインタビュー】山中千尋

音楽の飽くなき探求とピアノへの真摯な姿勢
20年のキャリアを経て山中千尋が辿り着いた現在地

 2001年発表の『Living Without Friday』でCDデビュー以来、20年にわたりシーンの最前線で活躍を続け、世界的な評価を得てきたジャズ・ピアニスト、山中千尋。キャリア初となるバラード集の発表、2022年2月のブルーノート東京公演決定など、歩みを止めることの無い彼女へ現在の心境を訊いた。

interview & text = Tomoyuki Mori

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 CDデビュー20周年を迎えた山中千尋から、キャリア初となるバラード・ベスト・アルバム『Ballads』が届けられた。「フォー・ヘヴンズ・セイク」「煙が目にしみる」など、これまでの作品から自らセレクトした楽曲に加え、ピアノの独奏で新録された「ダニー・ボーイ」「ルビー・マイ・ディア」「アイ・キャント・ゲット・スターテッド」を収録。豊かな歌心と卓越した技術を共存させたバラードをたっぷりと堪能できる作品に仕上がっている。

「ピアノなので歌詞は聴こえてきませんが、その向こうにあるストーリーが浮かんでくるような楽曲を選んでコンパイルしました。せっかちな性格なのか(笑)、バラードも速いテンポで弾きがちだったんですけど、あるときエド・シグペンに"歌の意味を知って、歌詞を読み、歌うように弾けば、自然とふさわしいテンポになる"と言われて。そのときはよくわからなかったのですが、少しずつ"たとえヴォーカルがなくても、歌詞の意味が伝わるように弾くのが大事なんだ"と理解できて。たとえば(オリジナル曲の)〈オン・ザ・ショア〉も、寄せては返す波の様子、泡のようにスッと消えてなくなる切なさを表現したくて書いた曲なんです。カバーも親しみやすい曲が多いので、ストーリーを想像しながら聴いていただけるとうれしいです」

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 新録された3曲には、ピアノ・ソロの演奏ということもあり、現在の山中千尋の音楽観が強く反映されている。コロナ禍になり、コンサートの中止や延期が続いていた時期、彼女は「気持ちをかきたてない曲が弾きたい」という思いから、バッハの平均律クラヴィーアをよく演奏していたという。特に「ダニーボーイ」と「アイ・キャント・ゲット・スターテッド」には、その影響が如実に表れているのだとか。

「バッハの平均律は神様に捧げられていて、賛美歌のようにも聴こえて。〈ダニー・ボーイ〉〈アイ・キャント・ゲット・スターテッド〉は、ジャズのヴォイシングだけでなく、バッハを弾いていたときの影響もあると思います。みなさんが安心して聴けるような演奏をすることを考えて、そういうアレンジになったということですね。〈ルビー・マイ・ディア〉はセロニアス・モンクの名曲。美しいメロディを浮かび上がらせながら、最後あたりは"モンキッシュ"な演奏も意識していました」

「デビューした当初はヴィジョンも何もなく、まさか20年も続けられるなんて思ってみなかった」と語る山中千尋だが、毎年のようにアルバムを発表し、音楽ファンに豊かな驚きを与え続けているのは周知の通り。

「グレン・グールドのように、録音によって音が変化することに興味があるんですよね。ピアノにクラリネットの音を薄く重ねたりして、ちょっとした工夫をずっと続けていて。今回の『Ballads』もそうですけど、括りを設けて、そのなかで冒険しているような感覚です。こうやって活動を続けられるのはもちろん、CDを聴いてくれる方、演奏を聴きに来てくださる方、支えて下さるスタッフのみなさんのおかげですけどね。昔は取材のときに言い返したりもしてたけど(笑)、自分で文章を書くようになって、レビューすることの大変さもわかって。今は演奏できることに素直に感謝できるようになりましたね」

※2021年7月4日 ブルーノート東京公演より


 2022年2月5日(土)、6日(日)には、"CHIHIRO YAMANAKA TRIO"としてブルーノート東京に出演。20周年のアニバーサリーにふさわしい、スペシャルなステージが期待できそうだ。

「〈八木節〉は毎回演奏しますが、最近あまり弾いてなかったレパートリーからも演奏を披露したいと思っています。ブルーノート東京は食事も美味しいし、ホスピタリティも素晴らしくて。出演できることはとても光栄です」

「今後はピアノ・ソロもやってみたいし、これまでとは違ったレパートリーにも挑戦したい」と21年目に向けて意欲を語ってくれた彼女。20年にわたってジャズ・シーンの最前線で活躍し、幅広いリスナーから支持されている理由は、尽きぬことのない音楽への探求とピアノに向き合う真摯な姿勢にあるのだろう。

「何ができるわけではないですが、全身全霊で、ひとつひとつの音に気持ちを込めて弾くことは心がけていて。私の演奏から何かが伝わって、共感してもらえるところがあるとしたら本当にうれしいですね」


森朋之 (もり・ともゆき)
1999年から音楽ライターとして活動をスタート。ポップス、ロック、ジャズなど幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』など。

LIVE INFORMATION

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☆山中千尋トリオ
2022 2.5 sat., 2.6 sun.
[1st]Open4:00pm Start4:45pm [2nd]Open6:30pm Start7:30pm
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/chihiro-yamanaka/

<MEMBER>
山中千尋(ピアノ)
山本裕之(ベース)
橋本現輝(ドラムス)

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