【スペシャル対談】馬場智章、西口明宏、中島朱葉、松丸契 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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【スペシャル対談】馬場智章、西口明宏、中島朱葉、松丸契

【スペシャル対談】馬場智章、西口明宏、中島朱葉、松丸契

インパルス・レコード創立60周年記念ライヴ・シリーズ vol.2「Re:コルトレーン」への意気込みを語る

 9月23日にブルーノート東京で開催される、インパルス・レコード創立60周年記念ライヴ・シリーズ vol.2「Re:コルトレーン」は、現在ジャズ・シーンで活躍する気鋭のサックス奏者4人と3人のリズム・セクションが、コルトレーンゆかりの曲を演奏するスペシャルなプログラムだ。この日はコルトレーンの95回目の誕生日。ジャズを代表するアイコンとも言える偉大なサックス奏者の音楽を、新しい世代のミュージシャンがどう演奏するのか、馬場智章、西口明宏、中島朱葉、松丸契の4人のサックス奏者に意気込みを語っていただいた。

interview & text = Koji Murai

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コルトレーンとの出会い


- まずはみなさんのコルトレーンの音楽との出会いを教えてください。

馬場智章「僕はおそらく中学生か高校生だと思います。テナー・サックスを始めたきっかけがマイケル・ブレッカーで、もともとフュージョンが好きでした。それで、ブレッカーが影響を受けたのがコルトレーンだ、という雑誌の記事を読んで、では聴いてみようと思ったのが最初です」

- 第一印象はどうでした?

馬場「メロディがどこなんだろう、と(笑)。メロディとソロのつなぎ目がどこなのか、わからなかったですね。フュージョンはそのあたりがはっきりしていますので、いったい何なんだこれは? と」

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西口明宏「僕は高校のときですね。中学生のときにカウント・ベイシーのビッグバンドからジャズを始めたので、コンサートの後で観客のおっちゃんがやってきて、お前いい音してるなあ、誰が好きなんや? と訊かれたら"カウント・ベイシーです"と答えて、はあ? みたいな(笑)。その後プロの先生に習うことになって、その先生に勧められて『ブルー・トレイン』を聴きました。それで、コピーもしたのですが、最初はよくわからなかったですね。"ぶるぅぅぅぅぶるぅぅぅぶるぅぅぅ"みたいな感じで。それでもコピー・バンドを作って<モーメンツ・ノーティス>とかを演奏していました。ジャズクラブにそのバンドで出て、ソロを"ぶるぅぅぅぅぶるぅぅぅ"とやったら、後でマスターに呼び出されて、"お前はジャズ舐めとる"と怒られて(笑)。その後コピーをして、ちゃんと音階になっていることがわかりました」

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中島朱葉「私は中学校三年生ぐらいです。吹奏楽部をやめてジャズをやろうと思った当初は、サックス1本のカルテットというのはまだ難しくて聴けなくて、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズをよく聴いていました。ですから、『ブルー・トレイン』の3管のサウンドが、私には聴きやすかったんですね。テーマがかっこいい、という感じで聴いていました」

- 中島さんはアルトサックスですが、コルトレーンをコピーしたんですか?

中島「アルトでのコルトレーンのコピーは、最初は難しかったのですが、最近はしています」

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松丸契「僕はずっとパプア・ニューギニアに住んでいたのですが、中学生のときにサックスを始めて、そのときにジャズを聴けるものがコンピレーション・アルバム1枚しかありませんでした。ネットもつながらなくて。その中にマイルスの『カインド・オブ・ブルー』の曲が入っていて、それが最初のコルトレーン体験です。ずっとコピーしたり譜面に起こしたりしていました」

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コルトレーンのすごさとは


- 演奏家として見て、コルトレーンのいちばんすごいところはどこなんでしょう?

馬場「音がすごくいいな、と思います。他のビバップや同じ時代の奏者に比べて音がクリアで聴きやすい、という印象がありますね。楽器のコントロールが上手い。あと、ソロの音列もすごくおもしろくて、ありそうなフレーズを吹くのではなく、音をひとつひとつ繋いでいる、という印象を受けて、そういう部分は参考にしています」

西口「それは練習でできるものではない、と思います。僕はコルトレーンの音色もフレーズも好きですが、生き様というか、ああいう演奏をするために身を捧げたわけじゃないですか。そういう姿勢だったから、あのストレートな音になったのかな、と思ったりもします」

- たしかに、真面目な人だというイメージがありますよね。

西口「性格が真面目だったかはわかりませんが、音楽についてはすごく真面目だったと思いますね」

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- コルトレーンは10年ほどの間に、音楽をすごい速度で変化させていった、という感じがしますが、松丸さんはそのあたりについてどう思われますか?

松丸「ジャンルに囚われずに、常にいろんな音楽に触れていたい、いろんな音を出したい、いろんな景色を見てみたい、という気持ちは自分もあります。コルトレーンも"ジャンル"という枠組みでは考えていなかったと思います」

- 中島さんはチャーリー・パーカーをお寺の境内で毎日吹いていた、とインタビューでおっしゃってましたが、パーカーとコルトレーンの違いについてはどうでしょう?

中島「そんなに違う種類の音楽だとは私は思っていないです。どっちもかっこいいしどっちも好きだし。あまり分けては考えていません。ジャンルじゃなくて、ヒューマンな、ひとりひとりの音楽だと思っています」

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コルトレーンのオススメはこれ!


- では、みなさんがお勧めするコルトレーンの作品を教えてください。

松丸「ラシッド・アリのドラムとのデュオ・アルバム『インターステラー・スペース』です。いったん聴き始めると永遠に聴いていられるような演奏で、すごく共感できる、大好きなアルバムです」

中島「コルトレーンの歌物も好きなんです。『ジョン・コルトレーン・アンド・ジョニー・ハートマン』が大好きで、自分もヴォーカルの方と演奏するときに参考にしています。あの静謐な感じが好きですね」

西口「僕は『トランジション』が好きです。あと、この企画が決まってからコルトレーンをまとめて聴いていますが、You Tubeで聴いた『ライヴ・アット・ザ・ジャズ・ギャラリー』、これは『コルトレーン・サウンド』の頃の1960年のライヴですが、めちゃめちゃかっこいい。今はそれがいちばん好きかもしれませんね」

馬場「僕はバラードが好きで、中でも『ソウルトレーン』に入っている<アイ・ウォント・トゥ・トーク・アバウト・ユー>が大好きです。すごいテクニックをバラードに落とし込んだ、一音入魂的な(笑)。最近ライヴでも演奏しています」

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『インターステラー・スペース』

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『ジョン・コルトレーン・アンド・ジョニー・ハートマン』

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『トランジション』

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『ソウルトレーン』



今、コルトレーンにどう取り組むのか?


- さて、「Re:コルトレーン」のことについてお訊きします。コルトレーンはある意味歴史上の人物ですが、未だにたいへんな人気を誇るジャズ・ミュージシャンです。2021年にコルトレーンにちなむコンサートを行うにあたっての、みなさんの抱負をお願いします。

馬場「コルトレーンに限らず、誰かのトリビュートをやるときには、そっちに引っ張られないようにしたい、と思っています。ですので、コルトレーンみたいに吹きたくはないな、と。亡くなって50数年たって、その後いろんなミュージシャンが出てきて、そして僕らが出てきて、という積み重ねがあって、今僕らはコルトレーンの音楽をこんな風に捉えています、というスタンスでやりたいと思っています。コルトレーンに特化して演奏する機会はなかったので、同じぐらいの世代の、コルトレーンを通ってきていない人たちにどんな風に届くのかが楽しみです。若い人たちにいっぱい来てほしいですね、来てくださーい!(笑)」

西口「まあ、いつも通り演奏すればいいのかな、と思います。コルトレーンの再現ではなく、みんながいつもやっていることを、コルトレーンというフィルターを通してやれればいいと思っています。以前から、9月23日のコルトレーンの誕生日にライヴをやりたかったので、それが実現できてうれしいですね」

中島「ここに来るときにコルトレーンを聴きながら来たのですが、コルトレーンの曲ってすごく美しいんですよね。私たちがコルトレーンの曲をこんなに美しいと思っている、ということが伝わればいいな、と思っています。どんなアレンジが来るのか、とても楽しみです。素晴らしい方々と演奏できるので、楽しんでやりたいですね」

松丸「僕もコルトレーンを聴きながら来ました(笑)。中高や大学生のときはコルトレーンを聴いていましたが、最近はあまり聴いていなかったんですよね。だから、コルトレーンを聴いてインタビューとかも読んで、コルトレーンが見てきた世界を考えて――もちろん同じ世界を見ることはできませんが――こういう音楽をやりたい、ということだけじゃなくて、自然に準備できるといいな、と思っています」

馬場「ライヴ用にこれからコルトレーンの曲をアレンジするのですが、それが演奏よりもドキドキしてます(笑)」

松丸「サックス4管のアレンジでコルトレーンを吹いたことがないので、むちゃくちゃ楽しみにしています、馬場さん(笑)」

- 当日のリズム・セクションも素晴らしいミュージシャンが揃っていますね。この3人について、馬場さんからコメントをお願いします。

馬場「ドラムは石若駿。彼は僕と同い年で小学校3年生からの仲間です。ピアノのデイヴィッド・ブライアントはニューヨークで出会った素晴らしいピアニスト。ベースの須川崇志さんには、ベースとチェロの両方を弾いていただきたい、とアレンジを考えています。彼らは普段から一緒にやっているトリオですし、ホーンズの4人も気心の知れた仲間ですので、ホーンズとリズム・セクションの交わりを聴いていただき、コルトレーンの音楽の魅力と新しい風を感じていただければうれしいですね」

- 当日を楽しみにしています!今日はどうもありがとうございました。

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村井康司(むらい・こうじ)
音楽評論家。1958年生まれ。著書『あなたの聴き方を変えるジャズ史』『JAZZ 100の扉』『現代ジャズのレッスン』『ページをめくるとジャズが聞こえる』他。尚美学園大学講師『ジャズ史』。

LIVE INFORMATION

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☆インパルス・レコード創立60周年記念ライヴ・シリーズ vol.2「Re:コルトレーン」
featuring 馬場智章、西口明宏、中島朱葉、松丸契、デイヴィッド・ブライアント、須川崇志 & 石若駿

2021 9.23 thu.
[1st]Open4:00pm Start4:45pm [2nd]Open6:30pm Start7:30pm
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/impulse-records-60th-anniversary/
※2ndショウのみインターネット配信(有料)実施予定
※アーカイブ配信視聴期間:9.26 sun. 11:59pmまで
※アーカイブ配信の内容はライヴ配信と異なる場合がございます。予めご了承ください。

<MEMBER>
馬場智章(テナーサックス、アレンジ)
西口明宏(テナーサックス)
中島朱葉(アルトサックス)
松丸契(アルトサックス)
デイヴィッド・ブライアント(ピアノ)
須川崇志(ベース)
石若駿(ドラムス)

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