【公演直前インタビュー】大友良英 〈後編〉 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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【公演直前インタビュー】大友良英 〈後編〉

【公演直前インタビュー】大友良英 〈後編〉

8/23(月)に予定しておりました『大友良英 Small Stone Ensemble』公演は、新型コロナウイルス感染拡大の状況を踏まえアーティスト側と協議のうえ、開催を延期することとなりました。

Small Stone Ensemble
参加メンバーとプロジェクトの背景にあるもの

 ブルーノート東京における初の公演で、新たなプロジェクトSmall Stone Ensembleを始動させる音楽家・大友良英。前後編に分けてお届けするロング・インタビューの後編では、今回の編成と参加メンバーについて、また2019年からMCを務めているラジオ番組『ジャズ・トゥナイト』からの影響や同時代のジャズ、ブルーノート東京への思いなどを伺った。

Interview & Text = Narushi Hosoda

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- 前編でお話しいただいたように、Small Stone Ensembleはライヴごとに編成が変わる、メンバーが流動的なプロジェクトというのが一つの特徴でした。今回は12人編成ですが、一癖も二癖もあるミュージシャンが揃っていて、世代や普段活躍しているシーンも比較的バラバラで、ものすごいメンバーです。人選はどのように進めたのでしょうか?

「この日に集まることができるメンバーだったというのはありますが、今回はこれまであまり一緒に演奏したことがない人にも積極的に声をかけました。あとできるだけ若い世代を起用しようと思ったかな。男女比のことも考えなかったわけではなくて、男女半々になればよかったですけど、そこだけにこだわるのも変だなと。本当はジャンルをもっとバラバラにしたかったんですよ。ポップス寄りの人だったり、フリー・インプロヴィゼーションだけを突き詰めている即興演奏家だったり、バラエティ豊かにしたかったけど、ひとまず初回はこの編成になりました」

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- 例えばジョン・ゾーンのコブラだと、すごくよくできたシステムではありますけど、バラエティ豊かなメンバーが参加していることを暗黙の前提としているところがあります。Small Stone Ensembleはその辺りどのように考えていらっしゃいますか?

「最初はあまり強くこだわらない方がいいと思っています。今回はどちらかというとジャズ寄りの編成で、最初からバックグラウンドが大きく異なるメンバーを揃えてしまうと、それぞれのジャンルの腕っこきが集まって持ち前の技術を披露し合うという、選手権みたいになってしまうことがあるんですよね。そうはしたくなくて。ただ、今回すごく迷ったのは、角銅真実さんや原田郁子さんのような"歌"を用いる人に声をかけるかどうか。いずれは一緒にやれればと考えているんですが、最初から広げてしまうよりも、まずは比較的ジャズ寄りのメンバーでシステムを作っていくところから始めようかなと」

- 今回の編成はサインウェイヴやエレクトロニクスのような電子楽器がいなくて、ほぼ全員アコースティック楽器です。そこには何か狙いがあったのでしょうか?

「確かに! 今言われて気づきました(笑)。まあオレがエレクトリック・ギターではあるけど、今回のメンバーを考える時にエレクトロニクス奏者は思いつかなかったなあ。もちろん面白いミュージシャンはたくさんいるんですけどね。やっぱりどこかでジャズの呪縛の中から始めようとしているのかもしれない。あと迷ったのは邦楽器奏者なんですよ。けれど最初から広げない方がいいと思って、いきなり邦楽器奏者が入るとインパクトが大きいし、能管の人が入ったら"他のメンバー+能管"みたいに見えかねないですから。電子楽器もそういうことなのかもしれない。まだ始めたばかりのプロジェクトなので、出自が違いすぎるとそこにフォーカスが当たってしまう気がするんです。プロジェクト自体は必ずしもジャズとは限らなくて、将来的にはいわゆる音楽家じゃない人とも一緒にやっていけたらとは思っているんですが」

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- 今回に関しては、楽器編成としては確かにジャズのフォーマットを踏襲しています。ところで大友さんから見て現在のジャズ・シーンはどのように感じていらっしゃいますか?

「正直に告白すると、ずっと同時代のジャズには興味を抱いていなかったんです。日本も海外も自分の中では射程に入ってなくて。もちろんチャーリー・パーカーとかオーネット・コールマンとか、過去のジャズはすごく好きなんですよ。それに自分の音楽もジャズのヒストリーから出てきたものの一つであるとは思うんですけど、ジャズというジャンルで自分が何か新しいことをやる意味はあまりないなと。けれど2019年からNHK FMのラジオ番組『ジャズ・トゥナイト』でMCをやらせていただくようになって、同時代のジャズを意識的に掘るようになったんですね。ジャズの歴史をあらためて勉強し直した上で、新譜を大量に聴き出して、今は週に2日ぐらいは『ジャズ・トゥナイト』に費やしているんです。その影響は大きかった。それで国内のジャズをいろいろと掘っていたら、自分の足元で面白いことが起こっているなと気づいて。例えばアーロン・チューライだったり、あとは松丸(契)くん。去年出た『Nothing Unspoken Under the Sun』を聴いてものすごく驚いて、もう1音目で"誰これ!?"って大声を上げちゃった」

- いきなりマルチフォニックから始まるんですよね。あれは自分も衝撃的なアルバムでした。

「そうそう。あんなジャズ・ミュージシャンは日本にはいなかった。しかもジャズの語法をちゃんと知っているけど、そうじゃない音楽の語法も持っていて、音色的なアプローチもすごいし、本当にビックリした。他にも石若駿とか、面白いミュージシャンがたくさん出てきていて。あるシーンとしてまとめて見ているわけではないけど、1種類の音楽、例えばジャズという音楽のヒストリーだけを背負っているわけではない人たちが、自分自身のヴォイスを持ち出したなと感じています。オレの場合はジャズではなくて、デレク・ベイリーから始まるフリー・インプロヴィゼーションのヴォイスにすごく縛られている人間なんですよ。自分にとってその語法はものすごく尊いものだし、日本ではいつまでも根付かないなと感じて、なんとか根付かせようとしていた時期もあったけど、そういうことじゃないやって今は思ってる。気づいたら若い世代が全然違うヒストリーの中から新しいことをやり出していて、『ジャズ・トゥナイト』を始めてからはその動きが手に取るようにわかる気がしてきたんです」

- すると、今回の編成がジャズ寄りであることもある意味では必然的だと言えそうです。

「そうだね。とはいえ、多少はバックグラウンドが違いそうな人たちを選びました。同じアルトサックスでも松丸契と吉田野乃子だと全くタイプが違いますよね。野乃子ちゃんはジョン・ゾーン直系の語法を扱うことができるプレイヤーで。あとジャズ寄りとは言っても、山本達久はいわゆるジャズ・ミュージシャンではないし、鈴木正人はジャズもできるけどポップスの世界でも活躍している。上原(なな江)さんと相川(瞳)さん、今込(治)くんはもともとクラシック出身で、永武幹子さんに至っては会ったことすらないんですよ。でも『ジャズ・トゥナイト』でかけた『Into The Forest』というアルバムを聴いたら面白かった。ライナーノーツもミシャ・メンゲルベルクについて書いてあって面白くて。これは今回のメンバー全員に共通して言えるけど、その人が今やっている音楽以外にも開かれているかどうかが重要だと思うんです。それは自分自身もそうでなければダメで、だからそうしたミュージシャンにメンバーとして声をかけたことには、自分自身を開くという意味合いもありますね」

- とにかくものすごいメンバーだと思います。ブルーノート東京という場所で今回のプロジェクトが始まることもたいへん意義があると思ったのですが、意外だったのは、大友さんがブルーノート東京に初めて出演するということでした。

「本音を言うと、ブルーノート東京は客層的にも自分とは縁がない世界だとずっと思っていました。じゃあなぜブルーノートでやることにしたのかと言うと、声をかけていただいたというのはもちろんあるんですが、ブルーノートって海外から来日したミュージシャンを受け入れるシステムを作ってきたと思うんです。けれど今はコロナ禍の影響でそれができない。だから海外からミュージシャンを呼ぶ以外の仕組みも作らなきゃいけない時期かなと」

- なるほど、コロナ禍の中で音楽の場を生み出す仕組み作りに取り組むと考えると、今回のSmall Stone Ensembleというプロジェクトそのものと通底しているとも言えそうです。プロジェクトに関しては、今後は例えばコブラのように"○○部隊"みたいな試みが各地に広がっていくことも想定していますか?

「う~ん、"部隊"という言い方はあんまり好きじゃないかも。戦争を彷彿させるからね。ただ、それとは別に、自分の手を離れてもいろいろなところで機能するシステムという意味ではそう思っています。そもそも音楽をやるということは、どのような形であってもなんらかのシステムを使うということですよね。即興だって明文化されていなくても即興というシステムを使ってる。ジャズももちろんそうで、何小節かのテーマをもとにアドリブするというシステムがチャーリー・パーカー以降自然発生的に出来上がって、今やそれをやるのが当たり前になっているけど、あれも明らかに一つのシステムなんですよ。そういうものの一つとしてSmall Stone Ensembleも機能すればいいなと思っています。指揮を取り入れることで楽曲を即興的に作り上げていくシステム。ジョン・ゾーンのコブラのようにいろいろな技を披露し合うゲーム的なものではなくて、ある楽曲を共同で作り上げていくときに機能するツールになればと思っているんです」

[前編はこちら]


細田成嗣 (ほそだ なるし)
1989年生まれ。ライター/音楽批評。2013年より執筆活動を開始。『ele-king』『JazzTokyo』『Jazz The New Chapter』『ユリイカ』などに寄稿。2018年より「ポスト・インプロヴィゼーションの地平を探る」と題したイベント・シリーズを開催。2021年1月に編著を手がけた『五十年後のアルバート・アイラー』(カンパニー社)が刊行。

LIVE INFORMATION

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8/23(月)に予定しておりました『大友良英 Small Stone Ensemble』公演は、新型コロナウイルス感染拡大の状況を踏まえアーティスト側と協議のうえ、開催を延期することとなりました。

☆大友良英 Small Stone Ensemble
2021 8.23 mon.
[1st]Open4:00pm Start5:00pm [2nd]Open6:45pm Start7:30pm
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/otomo-yoshihide/

<MEMBER>
大友良英(ギター、コンダクター)
類家心平(トランペット)
今込治(トロンボーン)
吉田野乃子(サックス)
松丸契(サックス)
吉田隆一(サックス)
永武幹子(ピアノ)
鈴木正人(ベース)
山本達久(ドラムス)
林頼我(ドラムス)
上原なな江(マリンバ)
相川瞳(パーカッション)

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