【来日直前インタビュー】Butcher Brown | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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【来日直前インタビュー】Butcher Brown

【来日直前インタビュー】Butcher Brown

Interview & text = Mitsutaka Nagira
Interpretation = Keiko Yuyama

音楽に封じ込められた"アナログ"の魔法
ついに来日するブッチャー・ブラウンに迫る

ブッチャー・ブラウンはずっと謎の多いバンドだった。2010年代半ばの時点で知る人ぞ知る存在で、日本にもファンは少なくなかったが、一方で同時期に出てきたアメリカのバンドとは明らかに音楽性が異なっていた。

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▪︎Butcher Brown "Backline" Live in Utrecht, Netherland

ジャズ系ミュージシャンの集合体であり、その影響源はJディラやディアンジェロ、そして、ヒップホップだ。しかし、ロバート・グラスパー以降のジャズの流れとは明らかに違っていたし、カマシ・ワシントンらのLAのブレインフィーダー・コミュニティとも異なっていた。ブッチャー・ブラウンはジャズ系ミュージシャンやネオソウル系譜のバンドとは別の視点で音楽を追求しているような気がしていた。

具体的に言うと、アメリカのアーティストたちがあまり重視していないイメージがあるヴァイナルのカルチャーにも意識があり、そこから連なるサンプリングの文脈にも強い関心を持っている印象がある。技術も理論も現代的にアップデートされているが、過去のレコードに刻まれたサウンドが持つさまざまな魅力を自身の音楽に取り込もうとしているように感じられた。つまりヒップホップの要素を取り入れる際に、サンプリングされた元の楽曲にもフォーカスしているように聴こえていた。

ブッチャー・ブラウンの音源を聴いていると"ヴィンテージ"とはまた別のやり方で、"アナログ"な質感や雰囲気を音楽に封じ込めている気がするのだ。今回はオリジナル・メンバーからドラムのコーリー・フォンヴィルとトランペット/サックスのテニシューが取材を受けてくれた。

  

ーーまずはお二人のお名前を聞いてもいいですか?

Marcus "Tennishu" Tenney(以下、Tennishu):マーカス・"テニッシュ"・テニーだよ。 ヴァージニア州リッチモンド出身。

Corey Fonville(以下、Corey):コーリー・フォンヴィル。ドラムをやってる。

ーーみなさんはどのように出会い、どのようにしてブッチャー・ブラウンを結成したのでしょうか?

Corey:出会いはヴァージニア州リッチモンド。このバンドが生まれた街だよ。ヴァージニアの州都でもある。俺たちはみんな、いろんなバンドや現場で一緒に演奏しながら育ってきたんだ。音楽をやってると、自然と仲間ができるだろ? 同じ音楽が好きで、感覚が合う人たちと出会って、気づいたら一緒に音を出してる。それがそのままバンドになった感じなんだ。「今日からバンドをやろう」みたいな話し合いがあったわけじゃない。ただ、自然と音楽を一緒にやり始めただけなんだよ。

ーーみんなが集まるきっかけのような出来事はありましたか?

Corey:当時は「バンドの中にさらにバンドがある」みたいな状態だったんだよね。今でもそうだけど。たとえば、テニシューは今でもトリオをやっていて、DJハリソンやアンディ・ランダッツォと一緒に演奏してる。俺たちは、いろんな組み合わせ、編成、現場で一緒に演奏してたんだ。だから、特別な事件があったというより、ただ「自然に引き寄せられた」って感じかなぁ。

Tennishu:そうだね。リッチモンドでは、みんなとにかく演奏しまくってた。だから自然と顔を合わせる機会が多かったんだ。仕事の現場で出会って、「あ、こいついいな」って。そこから、「どんな音楽が好きか」「どんなライヴ体験を作りたいか」、そういう話をするようになって、一緒に過ごす時間が増えていった。それで、ゆっくり自然にブッチャー・ブラウンになっていったんだ。

▪︎Butcher Brown - HOURS:AFTER (Official Audio)

ーーブッチャー・ブラウンとして活動を始めた初期の段階で、音楽的なコンセプトや目指していたサウンドはありましたか?

Corey:正直そういう話をした記憶はないかな。みんなそれぞれの音楽的なヴィジョンを信頼してたし、それぞれが持ち寄るものをちゃんとリスペクトしてた。「こいつらが俺の仲間だ」って思えたからこそ、とくに計画を立てることなく、その日の気分をそのまま録音していく感じだった。コンセプトっぽい話をすることはあったけど、結局そこから逸れていくことの方が多かったね。

ーー2014年のデビュー・アルバム『All Purpose Music』を制作する際には、何か話し合いや意識していたことはありましたか?

Tennishu:覚えてるのは、あのとき大雪だったってことだね。本当に吹雪で、みんなスタジオに閉じ込められてた。あそこからライヴをいい感じで録るっていう段階から、「アルバムとして作る」方向へ移行した大きな転換点だった。俺たちはそれぞれ違うスキルを持ってたんだ。リミックスを作るやつもいれば、サンプルを切り刻むやつもいるし、ビッグバンドの譜面を手書きで書けるやつもいる。すべてがその場に揃ってた。だから、「今あるものだけでレコードを作ろう」ってなった。他の要素や工程はあまり考えずにね。その結果、あのアルバムはある意味で"プロダクション感"のある音になったんだと思う。

ーーデビュー作を制作していた当時、参考にしていたアーティストやアルバム、楽曲などはありましたか?

Corey:かなりアナログ・サウンドを意識してたね。DJハリソンは、ディアンジェロの『Voodoo』をめちゃくちゃ聴いてたし、スライ・ストーンの影響もかなり大きかった。(『Voodoo』を録音した)エレクトリック・レディ・スタジオの空気感にも強く惹かれてたよ。エンジニアのラッセル・エルヴァードが『Voodoo』でやったこととか、さらに遡って(ジミ・ヘンドリクス等の作品を手掛けた)エディ・クレイマーみたいな名エンジニアたちの仕事も含めてね。

▪︎Butcher Brown: A Look Inside All Purpose Music (Documentary)

Corey:とはいえ、基本的には「オープンマインドで入ろう」って感じだった。俺たちはあんまりコンセプトに縛られないから。デモ的なアイデアはあるけど、それを出発点にして、その場の流れで方向を決めていく。 たとえば、最新作『Letters from the Atlantic』では、もう少しフォーカスがあった。ハウス、ドラムンベース、アシッド・ジャズ、そういう音楽が好きで、その空間をもっと掘り下げてみようってなった。でも、全曲がそのヴァイブってわけじゃない。「これ、いいね」「アルバムに合うね」って感覚を大事にして、みんなが納得したら、そのまま前に進む。それだけだよ。

  

ーーアナログ・サウンドに関してとくに参照していたものはありましたか?

Corey:俺たちは、ある意味で「勉強するように」そういう音を辿っていった感じだね。自分たちが愛してきたレコード、好きだったアーティストを基準にして。DJのエンジニアリングのスキルとか、プロダクションへの強いこだわりもあって、みんなでその周辺を行ったり来たりしてた。

ーー具体的には、どんな作品を聴いていましたか?

Tennishu:まずはやっぱりディアンジェロの『Voodoo』。でも、とにかくいろんなレコードを聴いてた。ウェザー・リポートやクインシー・ジョーンズ......。

Corey:ハービー・ハンコックのヘッドハンターズ期の作品。

Tennishu:Death Row Recordsの作品。あの辺はハイエンドな機材を使って作られてたから、とくに意識して聴いてた。それにマッドリブ、Jディラ、ロッカフェラ周辺の作品。さらに遡って、マイルス・デイヴィス『ビッチェズ・ブリュー』、サム・リヴァース、ソニー・ロリンズ、ジョー・ヘンダーソン、フレディ・ハバート。あとウータンクラン、N.E.R.D.、クリプス、ザ・ネプチューンズ。結局、音楽が連れていく方向についていっただけなんだ。自分たちが好きなもののための「居場所」を、つねにちゃんと用意してきたって感じかな。

▪︎Butcher Brown - Till It's Done (Tutu) by D'Angelo (Live)

ーーブッチャー・ブラウンは"クレート・ディガー文化(日々レコードを探し求めているコレクターたち)"と関係がありますよね。

Corey:すごく近い場所にいる。実際、DJで俺たちの音楽を好きな人は多いし、俺たちはサンプリングしたくなる、あるいは実際にサンプリングされるような音楽を作ってるからね。DJやプロデューサーの友だちもたくさんいるし、そういう世界にどっぷりな人たちとも繋がってる。だから新しいレコードができたら、さっと渡して「聴いてみて」ってやるのも楽しんでる。彼らの反応を見るんだ。彼らは「いま何がクールか」「何が起きているか」に対する嗅覚がすごく鋭い。それって最高だよね。

Tennishu:それに彼らは嗅覚だけじゃなくて、独自の味覚を持ってる。あれは他のやり方ではなかなか身につかない。そういうセンスは俺たちのサウンドにとって重要なだけじゃなくて、不可欠だと思ってるよ。

Butcher Brown: Select Cuts - "Ibiza" (Official Live Performance)

――ブルーノート東京での来日公演、楽しみにしています。

Corey:めちゃくちゃ楽しみ!早く行きたい。ずっとこの話をしてきたからね。日本のみんなが最高の時間を過ごしてくれたらうれしい。この音楽を直接届けられるのを楽しみにしてる。きっと、いい反応が返ってくると思う。

Tennishu:演奏しに行けるのが本当に楽しみだよ。日本には、音楽に関する独自のエコシステムがある。とくにフュージョンや、こういうタイプの音楽に関してはね。ジャズ・ミュージシャンとして、即興演奏をやる人間として、日本は俺たちと同じ感覚でこの音楽を理解してくれる場所だと思ってる。だから直接音を届けられるのが本当に楽しみなんだ。

LIVE INFORMATION

BUTCHER BROWN

▶︎BUTCHER BROWN

2026 2.24 tue., 2.25 wed., 2.26 thu.
[1st]Open5:00pm Start6:00pm [2nd]Open7:45pm Start8:30pm
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/butcher-brown/

<MEMBER>
テニシュー(ヴォーカル、サックス、トランペット)
モーガン・バース(ギター)
アンディ・ランダッツォ(ベース)
コーリー・フォンヴィル(ドラムス)
サム・フリブッシュ(キーボード)

  
 

★ブッチャー・ブラウンのカバー曲を厳選した特設サイト
Collection of Covers by Butcher Brown

BUTCHER BROWN

柳樂光隆(なぎら・みつたか)
1979年、島根県出雲市生まれ。音楽評論家。DJ。昭和音楽大学非常勤講師。21世紀以降のジャズをまとめた世界初のジャズ本「Jazz The New Chapter」シリーズ監修者。共著に鼎談集「100年のジャズを聴く」など。
https://note.com/elis_ragina/n/n488efe4981be

★このインタビューのフルver.はnoteに掲載
https://note.com/elis_ragina/n/n32965c0c3352

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