【JAM vol.240】Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN
text = Kazunori Harada
世界トップのアーティスト10組が集う奇跡の二日間
国内最大級のジャズフェス、今年も盛大に開催
ヴォーカルからオーケストラまで、ライヴで映える多彩な顔ぶれ
DAY 1は、ヴァレリー・ジューンのパフォーマンスから始まった。ローリング・ストーンズのオープニング・アクトを経験、ノラ・ジョーンズとも交友のあるシンガーソングライターだ。「ラヴ・アンド・レット・ゴー」「ジョイ・ジョイ」などニューアルバム『アウルズ、オーメンズ・アンド・オラクルズ』の収録曲に、「スモークスタック・ライトニン」「ローリン・アンド・タンブリン」といったブルースの古典を織り交ぜたセレクションでアリーナを盛り上げていく。彼女の声が持つアタックの鋭さや豊かな伸びは、ライヴの場でいっそう映えるようだ。歌いながらつまびかれるギターやバンジョーの軽やかな響きにも聴き惚れてしまった。
続いてはブラジルのピアニスト、アマーロ・フレイタスのステージだ。来日のたびに人気がさらに上昇している印象を受けるが、この日も熱い拍手に迎えられてのステージ。シヂエル・ヴィエイラ(ベース)、ホドリゴ・ブラス(ドラムス)とのレギュラー・トリオで紡ぐ、太古・現在・未来を行き来するような雄大な音世界が広がる。演目は「Ayeye」、「Y'Y」等。あの広い有明アリーナが、アコースティック楽器を奏でる3人の響きに満たされた。

ドン・ウォズ&パン・デトロイト・アンサンブルは、"ローリング・ストーンズやボブ・ディラン作品のプロデューサー""ブルーノート・レーベルの社長"としてもおなじみであろうドン・ウォズがひとりのベーシストとして、歌手のステファニー・クリスティアンや巨匠サックス奏者のデイヴ・マクマレイ等、故郷デトロイトゆかりの面々と結成したファンキーなユニット。かつて主宰していたウォズ(ノット・ウォズ)の「ホイール・ミー・アウト」やオーケストラ・ウォズの「エイント・ガット・ナッシン・バット・タイム」などがセットリストに入っているのも嬉しさを倍増させた。
次もまた、わくわくさせられるプログラムだ。アカペラの代名詞ともいえる6人組ヴォーカル・グループのテイク6と、特別編成による挾間美帆ジャズ・オーケストラとの共演。挾間の初期の楽曲である「トーキョー・コンフィデンシャル」がオーケストラ単独でプレイされ、そこにテイク6が合流して、いよいよ「フィールズ・グッド」、「ホワッツ・ゴーイン・オン」、「エヴリデイ・アイ・ハヴ・ザ・ブルース」等、"声のオーケストラ"と"実際のオーケストラの融合"が始まる。新鮮な企画がそのまま、実りある音楽的出会いにつながった印象だ。

ノラ・ジョーンズが究極のメンバーとパフォーマンスを展開
DAY 1のヘッドライナーはノラ・ジョーンズが務めた。共演は、サーシャ・ダブソン(ノラと共にプスン・ブーツのメンバーでもある)、サミ・スティーヴンス、ジョシュ・ラタンジー、ブライアン・ブレイドと、究極の面々。ノラはピアノ、エレクトリック・ピアノ、エレクトリック・ギターも演奏し、バックの面々がつけるヴォーカル・ハーモニーも非常に彩り豊かだ。目下の新作『ヴィジョンズ』収録曲である「パラダイス」や「ランニング」から、不滅のデビュー作『ノラ・ジョーンズ』に入っている「カム・アウェイ・ウィズ・ミー」や「ドント・ノー・ホワイ」までを含む充実のひととき。観客ひとりひとりの心をそっと温めるようなノラのステージングでフェス初日は幕を閉じた。

グルーヴの魔力に引き込まれるプログラム
DAY 2のオープニングは、SOIL&"PIMP"SESSIONS with special guest 長岡亮介。しょっぱなからフェス2日目のボルテージを極限まであげていこうということなのだろう。社長のアジテーションは猛烈な勢い、楽器奏者たちも1曲目の「フラー・ラヴ」(アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズのカヴァー)から熱気を振りまく。スペシャル・ゲストの長岡亮介はペトロールズのギタリスト/ヴォーカリストにして、椎名林檎や星野源からも絶大な信頼を得る才人。この日はOriginal Loveの「接吻」や、オジー・オズボーン追悼を兼ねたブラック・サバスの「プラネット・キャラヴァン」など、まさかと声をあげたくなるようなレパートリーでも共演を繰り広げた。
UKからやってきたのは、アシッド・ジャズ~ジャズ・ファンクの重鎮グループ、インコグニート。4人のヴォーカリスト、3人で構成されたホーン・セクションを有する大所帯の彼らが登場すると、有明アリーナの広いステージがいっそう賑やかになる。46年間、このバンドを率いるギター奏者ブルーイのディレクションを得て、ハッピーでファンキーなパーティが加速し続ける。「スティル・ア・フレンド・オブ・マイン」から「ドント・ユー・ウォリー・アバウト・ア・シング」 まで、誰もが聴きたいであろう代表曲を次々とプレイして盛大な拍手と声援を集めた。

続いては、日本屈指のヴォーカリスト、ダンサーである三浦大知が、場内の熱気をさらに高めていく。ジャズフェス登場に驚きの声もあろうが、逆に言えばそのおかげで、ジャズに重きをおいて耳を傾けているファンも、この卓越したエンターテイナーの実演に触れる機会を得たわけだ。ステージは目下の最新アルバム『OVER』からの「Pixelated World」から開始、ダンサー6名との一糸乱れぬコンビネーションや卓越したライティングを含む、文字通り、見せて、聴かせるステージを構築した。しかもベーシストとドラマーが連携しあって、猛烈なグルーヴを表出する。「このフェスに出たことで、新たな表現が見つけられたように思う」と語る三浦の今後がさらに楽しみになってくるセットだった。
次に登場したのは、説明不要の10人組ブラス・ファンク・バンド、タワー・オブ・パワー。結成は1968年、テナー・サックスのエミリオ・カスティーヨとバリトン・サックスのスティーブン"ドック"クプカは今なお健在だ。リード・ヴォーカルは2024年に加入したジョーダン・ジョンが担当(曲によってはギターも演奏)、大ベテランも気鋭も一体となってファンクに没頭する姿は理屈抜きに胸に迫る。「ホワット・イズ・ヒップ」、エミリオのユーモラスな歌とダンスが冴える「ディギン・オン・ジェイムズ・ブラウン」などの人気定番を次々と届けてくれた。

迫力、貫禄、艶。ニーヨによる圧巻のステージ
DAY 2は、R&B界のカリスマ的シンガーソングライター/プロデューサーであるニーヨが締めくくった。今回、関東公演は当フェスのみということもあってか、ワンマンライヴに相当するフルレングスの内容となった。フレンドリーなMCをはさみながら、「ミス・インディペンデント」、「ビコーズ・オブ・ユー」、「ソー・シック」などの代表曲を、時に切れ味鋭いダンスを伴いつつ次々と歌い上げるニーヨ。そのたび我々観客は熱狂したり、うっとりしたり、盛大な拍手を送る。女性ダンサーとの呼吸も心憎いほど合っており、最終曲「ギヴ・ミー・エヴリシング」の後の潔いまでのステージからの去り方も見事。ビッグ・スターの貫禄を浴びた90分間だった。


LIVE INFORMATION
Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN
2025 9.27 sat., 9.28 sun.

