【JAM vol.239】KASSA OVERALL

text = Kazunori Harada
最高を更新する天才肌の
ドラマー/クリエイターが
最強の気鋭たちとともに再登場
新作発表直後のライヴが持つ生々しさは格別だ。できたての楽曲を届けたいミュージシャンと、それを一刻も早く体験したいオーディエンスの"気"がぶつかりあって、とてつもない高揚感が生まれる。そのミュージシャンが絶好調の気鋭であれば、与えられる感触はさらに飛び切りのものになる。
全身これ音楽の才能というべき逸材、カッサ・オーバーオールがニューアルバム『CREAM』を携えてブルーノート東京に戻ってくる。彼についてはあらゆるところで称賛されていることと思うが、"ジャズ、ポップス、ヒップホップなどをアヴァンギャルドな実験精神でシームレスに融合させる"と評されるスタイルは、まさに"現代を呼吸する音楽人"ならではのもの。幅広い視野で物事を捉え、わくわくする、興味深いと感じたものを率直に、だが厳格な自己のフィルターを通して質の高い音楽表現に昇華させている感じだ。そして彼は自らのドラム・プレイに、ジャズの豊かな歴史を内包する。私がカッサの音楽にときめくきっかけとなったのは、ピアニストのジェリ・アレンをリーダーとする作品『Geri Allen & Timeline Live』冒頭の「Philly Joe」という楽曲。天衣無縫の叩きっぷりでモダン・ジャズ黄金期を活気づけたドラマーであるフィリー・ジョー・ジョーンズへのトリビュートだろうが、偉大なる先輩を敬愛しつつも決してヘコヘコせず、「俺はこうやりますよ」的にカッサなりの天衣無縫を繰り広げるのだから、脱帽である。
9月にリリースされる『CREAM』は、カッサが青年時代に情熱を注いだヒップホップ、そしてエルヴィン・ジョーンズの流れを汲むジャズ・ドラムにオマージュした意欲作。来日公演にはカッサの全作品に参加するベンジ・アロンセ(父親はなんと"タブー・コンボ"のハーマン・ナウ)、昨年ジュリアス・ロドリゲスのバンドでやってきたエミリオ・モデストらも同行するというから期待はさらに高まる。『CREAM』を聴いてからライヴに行くか、ライヴに行ってから『CREAM』を聴くか。どちらにしても音楽のエクスタシーに包まれることは間違いないはずだ。
RELEASE INFORMATION

『CREAM』
(Beat Records / Warp Records)
※2025年9月12日発売
LIVE INFORMATION
KASSA OVERALL
2025 10.8 wed., 10.9 thu., 10.10 fri.
[1st]Open5:00pm Start6:00pm [2nd]Open7:45pm Start8:30pm
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/kassa-overall/
<MEMBER>
ベンジ・アロンセ(コンガ、エレクトロニクス)
エミリオ・モデスト(サックス)
マット・ウォン(キーボード)
ジェレマイア・カラブ・エドワーズ(ベース)