【JAM vol.239】BIRÉLI LAGRÈNE Sax Trio

text = Kenichi Aono
マヌーシュ・スウィングをアップデートする
ビレリ・ラグレーンの12年ぶりの来日公演
1980年、『Routes To Django - Live At The Krokodil』でアルバム・デビューを果たしたギタリストのビレリ・ラグレーン。1966年フランス・アルザス地方のサヴェルヌでシンティ・ロマの音楽家一家のひとりとして生まれたビレリは早くからその才能を発揮。ファースト・アルバム発売時は14歳(録音は13歳)だったが、1982年発売の日本盤ライナーノーツによれば1981年にはモントルー・ジャズ・フェスティバルで行われた8名のギタリストのショーケースにも出演しているというから驚きである。
アルバム・タイトル、そして彼の出自からもわかるように、マヌーシュ・スウィングの第一人者であるギタリストのジャンゴ・ラインハルトの音楽に大いに傾倒し、やがてウェス・モンゴメリーやジョージ・ベンソンからの影響も加わって、1980年代中盤にはクロスオーヴァー/フュージョンへとシフト。ジャコ・パストリアスやラリー・コリエル、ミロスラフ・ヴィトウスらと共演、録音するなど、より幅広いリスナーからの注目を集めるようになった。以後、折に触れてジャンゴに立ち返りながら、モダンジャズやブラジル音楽と自身のスタイルを融合させた作品を発表している。
今回のブルーノート東京公演は2013年にリシャール・ガリアーノ(バンドネオン)、ディディエ・ロックウッド(ヴァイオリン)とのトリオでのステージ以来、実に12年ぶりとなるもの。編成はフランク・ウルフ(サックス)、ウィリアム・ブルナール(ベース)にビレリのギターというトリオである。ジプシー・ジャズというとヴァイオリンをイメージされる方も多いと思うが、ビレリはビレリ・ラグレーン・ジプシー・プロジェクト名義の2004年のアルバム『Move』でこの編成を取り入れ、マヌーシュ・スウィングを新鮮にアップデートし表現している。本公演はスモール・セッションならではの親密さ、メンバーそれぞれの技巧と聴きどころは多いが、リズム楽器としてのギターの面白さを堪能できるのもポイントではないかと個人的には思う。
LIVE INFORMATION
BIRÉLI LAGRÈNE Sax Trio
2025 11.20 thu., 11.21 fri.
[1st]Open5:00pm Start6:00pm [2nd]Open7:45pm Start8:30pm
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/bireli-lagrene/
<MEMBER>
ビレリ・ラグレーン(ギター)
フランク・ウルフ(サックス)
ウィリアム・ブルナール(ベース)