ブラックミュージック最前線に立つ男、モーリス "モベッタ" ブラウンのグルーヴ

ジャズとヒップホップ、ふたつのシーンの
最前線で躍動するトランペッター
アンダーソン・パークやチャンス・ザ・ラッパーにも重用されるモーリス"モベッタ"ブラウン。ジャズ、ヒップホップ、ブルースをダイナミックに横断し、ブラック・ミュージックを加速させる男のグルーヴをぜひ体感して欲しい。
text = Shiho Watanabe
ジャズのスピリットとヒップホップのセンスを重ね合わせながら、オリジナルのグルーヴを生み出すミュージシャン、モーリス"モベッタ"ブラウン。トランペットを操り、作曲やプロデュースもこなすモーリスは、1981年、ブルースのメッカであるシカゴ近郊に生まれる。幼少期からトランペットに親しみ、高校生のうちからラムゼイ・ルイスと共演するという機会にも恵まれ、10代のうちにマイルス・デイヴィス・トランペット・コンペティションで優勝。その後、ジャズの聖地でもあるニューオーリンズに活動の場所を移し、2004年には初のリード・アルバム『HIP TO BOP』(これ以上に彼の音楽的ルーツをうまく表すタイトルがあるだろうか!)をリリース。しかし、ハリケーン・カトリーナの被害を受けた後に、モーリスはニューヨークのブルックリンへと拠点を移す。ちなみに、彼の愛称であるモベッタ=Mobettaというフレーズからは、自然とデンゼル・ワシントンがジャズ・トランペッターを務め、スパイク・リーがブルックリンを舞台にメガホンを撮った名作『モ'・ベター・ブルース』(Mo' Better Blues /1990)を思い起こさずにはいられない。
ミュージシャンとしてさらに意欲的に活動することとなったモーリスは、アレサ・フランクリンやワイクリフ・ジョン、デ・ラ・ソウル、ザ・ルーツといったソウル~ヒップホップ・アーティストらの作品に多く参加するように。また、2010年からはテデスキ・トラックス・バンドのメンバーとしても活躍し、彼らの1stアルバム『レヴェレイター』にも参加。そして、2012年には同作がグラミー賞において最優秀ブルース・アルバム賞を獲得し、モーリスはグラミー・アーティストとしてもその名が知れ渡るところとなった。加えて、ロイ・ハーグローヴ率いるRHファクターにも参加し、ますますそのフィールドを広げていくこととなる。2014年には、タリブ・クウェリ、プロディジー、ジーン・グレイといったニューヨークを拠点とする実力派ラッパーたちを招いたアルバム『Maurice vs Mobetta』を完成させ、話題を呼んだ。自身のリーダー作として最新作となる『THE MOOD』(2017年)では、さらにジャンルの垣根を取り払うサウンドを提示。洗練されたグルーヴを聴かせるかと思えば、いきなりボトムの厚いヒップホップ・ビートを展開するなど、よりダイナミックにモベッタ・ワールドを構築している。
近年では、ブルーノ・マーズとアンダーソン・パークが結成したスーパーグループであるシルク・ソニックのメンバーとしても活動中。グラミー賞のステージからラスべガスのアリーナまで、大舞台においてもそのグルーヴを吹き鳴らしている。また、現在は新たなアルバム制作にも取り掛かっているとも言い、日本のステージの上からどんなエナジーを伝えてくれるのか、期待度は十分に高い。
コロナウイルスの影響で5年に及ぶ延期を経た今回は、モーリス自身との共演も多い女性サックス奏者のチェルシー・バラッツ、リタ・オラやマック・ミラーらのサウンドを支えてきたベーシスト、ジョー・クリーヴランド、次世代ジミ・ヘンドリックスとも呼ばれ、すでにいくつもの大舞台を経験している注目の新鋭ギタリストであるブランドン・タズ・ニードラウアー、カマシ・ワシントンやエリカ・バドゥ、ハービー・ハンコックらと共演し、リード・アルバム作品も多数発表しているドラマーのブラックダイナマイトらを従えてのパフォーマンスとなる。そして、キーボードには日本から泉川貴広と宮川純が加わる特別編成だ。どこまでも自由に、そしてグルーヴィーに広がる最先端モベッタ・サウンドを体感する絶好の機会である。
- 渡辺志保(わたなべ・しほ)
- 音楽ライター。主にヒップホップ関連の文筆や歌詞対訳に携わる。共著に『ライムスター宇多丸の「ラップ史」入門」(NHK出版)など。block.fm「INSIDE OUT」などをはじめ、ラジオMCとしても活動。
LIVE INFORMATION
MAURICE "MOBETTA" BROWN
2025 6.24 tue., 6.25 wed., 6.26 thu.
[1st]Open5:00pm Start6:00pm [2nd]Open7:45pm Start8:30pm
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/maurice-brown/
<MEMBER>
モーリス "モベッタ" ブラウン(トランペット、ヴォーカル)
チェルシー・バラッツ(サックス、ヴォーカル)
ジョー・クリーヴランド(ベース)
ブランドン・タズ・ニードラウアー(ギター)
泉川貴広(キーボード)※6.24&6.25
宮川純(キーボード)※6.26
ブラック・ダイナマイト(ドラムス)
- ★6.23 mon.には、BLUE NOTE PLACEにて、SHIN SAKAINOがホストを務めるイベントにゲスト出演!
- "Shindig" host by SHIN SAKAINO
feat. TOMOKI SANDERS, DAVID BRYANT, YUKINO MATSUURA,
with special guest MAURICE "MOBETTA" BROWN
https://www.bluenoteplace.jp/live/shin-sakaino-250623/