【JAM vol.237】NDUDUZO MAKHATHINI / BRANDON WOODY | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

News & Features

【JAM vol.237】NDUDUZO MAKHATHINI / BRANDON WOODY

【JAM vol.237】NDUDUZO MAKHATHINI / BRANDON WOODY

text = Mitsutaka Nagira

気鋭アーティストが続々登場!
名門ブルーノート・レコーズの現在を知る絶好の機会

 2010年代以降、ジャズ・シーンはブルーノート・レコーズがけん引していると言っても過言ではないだろう。CDからストリーミングへとフォーマットが変わり、BLMが起き、パンデミックが起きた。その間にアメリカは何度かの選挙で大きく情勢が変わった。ブルーノートはそんな激動の時代のジャズを一手に引き受け続けている、と言ってもいいのかもしれない。

READ MORE

 ブルーノートの2010年代はロバート・グラスパーやホセ・ジェイムズらがジャズを一気にハイブリッドな音楽へと変えていった時期だった。その流れは2020年代にドミ&JDベックやミシェル・ンデゲオチェロとの契約にも繋がっていった。ブルーノートと言えば、そのイメージが強いが、グラスパーが『Black Radio』を発表したころ、ブルーノートがアンブローズ・アキンムシーレとも契約していたことも重要だった。即興演奏とバンドの対話を重視したアンブローズの音楽が蒔いた種は2010年代末にイマニュエル・ウィルキンスやジョエル・ロスといった若手の台頭という形で実ることになった。今やイマニュエルもジョエルも現在のシーンの最先端に位置するアーティストとして世界的な注目を浴びているが、その音楽にはアンブローズの影響が確実に刻まれている。そんなアンブローズから連なる新世代を世に送り出したのもブルーノートだった。

250627NduduzoMakhathini_image003.jpg

 ブルーノートが新鋭トランペット奏者ブランドン・ウッディをリリースすると聞いて、僕は至極納得した。ワシントンDCやボルチモアを拠点に活動し、そこから全米でも知られる存在になっていったブランドンはブルーノートがサポートし続けている2020年代のコンテンポラリー・ジャズの流れに沿う逸材だ。

250627NduduzoMakhathini_image004.jpg

 ジョエル・ロスの師でもあるステフォン・ハリスや、前述のアンブローズ・アキンムシーレにも師事したブランドンの音楽にも近年のブルーノートがリリースしている作品に連なるものが聴こえてくる。『For The Love Of It All』で聴くことができるリズムやコード進行のチャレンジ、予測ができない展開、繊細な楽器のコントロールによる豊かな情感の表現からは現在的なジャズのあり方がしっかり感じられる。ソランジュやバッドバッドノットグッドにも起用されるようにハイブリッドなサウンドにも適応できるが、その感性をアコースティックなジャズの中で活かしきるあたりにも近い世代との共通点が見える。『For The Love Of It All』は今年屈指の作品になるだろう。

250627NduduzoMakhathini_image001.jpg

 また、2020年以降、ブルーノートは拡張されていくジャズの動きと的確に並走していた。それはアメリカの動きに止まらず、さまざまな地域のアーティストと契約してきたことからも伺える。なかでもUKジャズの隆盛にも反応したこと、そして、イギリス同様にシーンの盛り上がりが世界的に話題になっていた南アフリカのアーティストとの契約に乗り出したことは現在のブルーノートを象徴する出来事だったと思う。

 現代の南アフリカ・シーンのリーダー的な存在でもあるピアニストのンドゥドゥゾ・マカティーニの作品をブルーノートがリリースしたことは2020年代のジャズの重要なトピックのひとつだった。ンドゥドゥゾはアブドゥーラ・イブラヒムやベキ・ムセレクといった南アフリカの先人の音楽を受け継ぎつつ、南アフリカ人がジャズをやることについて現代の視点も交え、さらに踏み込んだ表現やメッセージを組み込んでいる。その音楽に魅了されたUKのサックス奏者シャバカ・ハッチングスはンドゥドゥゾを中心とした南アフリカのミュージシャンとコラボレーションし、シャバカ&ジ・アンセスターズを結成したほど。南アフリカのヒーラー=サンゴマでもあるンドゥドゥゾが奏でる音楽は文字通りスピリチュアルな雰囲気をまとっている。ジョン・コルトレーンやマッコイ・タイナーの音楽の中にあったアフリカ性を独自の視点で炙り出しつつ、そこに南アフリカ由来の精神性をも融合させる。脱植民地のコンセプトにも直結したンドゥドゥゾへの注目度は年々高まっている。

250627NduduzoMakhathini_image002.jpg

 今年のブルーノート東京でのブランドン・ウッディとンドゥドゥゾ・マカティーニの公演はいま、名門ブルーノート・レコーズで何が起きているかを知る絶好の機会になる。

LIVE INFORMATION

250627NduduzoMakhathini_image006.jpg

NDUDUZO MAKHATHINI
2025 6.27 fri., 6.28 sat.
6.27 fri.
[1st]Open5:00pm Start6:00pm [2nd]Open7:45pm Start8:30pm
6.28 sat.
[1st]Open3:30pm Start4:30pm [2nd]Open6:30pm Start7:30pm
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/nduduzo-makhathini/

<MEMBER>
ンドゥドゥゾ・マカティーニ(ピアノ)
ダリスゥ・ンドラーズィ(ベース)
カベロ・マーカタラ(ドラムス)

250627NduduzoMakhathini_image005.jpg

BRANDON WOODY
2025 7.2 wed., 7.3 thu.
[1st]Open5:00pm Start6:00pm [2nd]Open7:45pm Start8:30pm
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/brandon-woody/

<MEMBER>
ブランドン・ウッディ(トランペット)
他メンバー未定

RECOMMENDATION