【来日直前インタビュー】PAT METHENY | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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【来日直前インタビュー】PAT METHENY

【来日直前インタビュー】PAT METHENY

すみだトリフォニーホールで待望の2デイズ開催
探究し続けてきたソロ・ギターの集大成

 ジャズ界最高の名誉であるNEA(全米芸術基金)の「ジャズ・マスター賞」を受賞し、10種の異なるカテゴリーでグラミー賞に輝く唯一のギタリスト、パット・メセニーが待望のソロ・コンサートを開催する。1970年代から音楽シーンを牽引し、さまざまな編成でジャズをも超越したサウンドを展開しつつ、ソロ・ギターの可能性も探究してきた彼。5月27日、28日、すみだトリフォニーホールでのソロ・コンサートを間近に控えたなかインタビューを行った。

interview & text = Yo Nakagawa
photo = Takuo Sato

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――1年半ぶりの来日コンサートが実現し、あまり間が空いていない今回の来日に、我々ファンはラッキーな気持ちでいっぱいです。

「ぼくの方がよりラッキーなんじゃない?(笑)」

――東京でのソロ・コンサート、それも2010年6月に、かのオーケストリオンをお披露目した"すみだトリフォニーホール"での2 daysです。

「あの時はオーケストリオンの機材すべてを運搬するという課題があり、よ~く覚えているよ。スタッフには苦労をかけたけれど、5年間人に言わずに研究者たちと取り組んできた自動演奏システムだったからやりがいがあり、忘れられないコンサートだった!」

――ホール背面のカーテンが落とされると、壁面一面にバラバラにバラされた楽器が並んでいた!そして展開されるオーケストラルなサウンドに、感無量でした。未だにオーケストリオンのシステムについては、分かりませんが。

「いつでもまた解説するよ(笑)」

――前回東京では、ソロとトリオという2つの編成での演奏でしたが、今回はソロに特化するのですね。

「ソロ・ギターの集大成になるね!今回の公演は、2023年にリリースした『Dream Box』、そしてそのツアー中にナイロン弦を使うことを思いつき、特注のナイロン弦アコースティック・バリトン・ギターで作品にした、24年発表の『MoonDial』。この2枚のアルバムを中心に、東京のお客様の顔を見てから、あれやこれや色々弾こうと思っているよ。前回の2024年初頭の日本ツアーでは、長く日本に滞在でき、北から大阪まで各地を回れたからね!ほんとうに嬉しかった。日本には演奏家にとって演奏しやすく、素敵なホールが沢山あってグレイトだね。各地の音響や設備が素晴らしいホールで演奏できて、とても幸運だった」

――大ホールで演奏する場合と、親密な雰囲気のジャズクラブで演奏するのでは、音量やプログラムの組み立て方などに違いはありますか。

「心構えは変わらないけれど、やはり違うよね。ブルーノート東京は、ぼくが世界でも最も好きなジャズクラブ。でも、クラブ・パフォーマンスの性質上、どうしても時間の制約があるでしょう。知っての通り、ぼくは長く聴いてもらうことでコンサートを構築していくタイプだから。ブルーノート東京でも、ギリギリがんばって長く演奏したけれど、日本や世界の他の都市で行なってきたプログラムの約半分しか披露できなかった。それに対し、今回は、皆さんにフル・コンサート聴いていただける。さまざまなギターを弾くと言ったけれど、『Moon Dial』とバリトン・ナイロン・ギターは2024年のブルーノート東京でも少し弾いたけれど、5月にはそれがプログラムのより大きな割合を占めることになると思う」

――ソロ・ギターでステージに立つということは、グループやトリオでやるときと違いがありますか。

「やはり、あるね。パット・メセニー・グループ、オーケストリオン・プロジェクト、色々なユニティ・プロジェクト、進行中のSide-Eye、バレエとの共演とさまざまなフォーマットでやってきた」

――ブルーノート東京ではビッグバンドとも共演し、日本ではまだですが、オーケストラとの共演もありました。

今は"ギター集中期間"

「思い返すと、ギターはぼくにとって、アイデアを表現するための翻訳装置のようなものだった。いわゆるギターという楽器の役割を超えて、サウンドを生み出す装置だったんだ。それが、ここ2~3年のソロ・ギターによる世界ツアーの多数の公演とパフォーマンスの性質上、これまで以上にギターという楽器に具体的に集中できるようになったんだ。自分自身、これほど"ギターに"向き合った時期は、自分史上なかったと思う。ギター演奏の深みを感じ、その醍醐味を一ギタリストとして感じている。ギタリストとして、ここ数年でかなり前進したのではないかと思っているよ」

――ここ数年頻繁に公演をされてきました。コンサートの後も、一人レコーディングの準備にギターに向かう姿がありました。最近はギターで作曲しているのですか。

「『Mon Dial』については、Yesだね。これは、ぼくにとっては珍しいことでね!先ほども言ったように、今は"ギター集中期間"なので、この期間が終了するまではピアノやキーボードに触れないって、自分に誓ったんだ」

――その集中期間は...

「『Dream Box』ツアーから始まり、今回のツアーの最終地点であるカーネギーホール公演がある、2025年10月まで続くね」

――カーネギーでファイナルとは、相応しいですね。

「カーネギーホールはご存知のように、クラシックの殿堂だ。ドラムを良い音で聴いてもらうには適さないけれど、今回はソロ・ギターだから、良い演奏を聴いていただけると思う」

――パットさんは最近も良い曲を作曲されていますが、何かスペシャルなインスピレーションを受けた曲がありましたか。

「それがね、自分の作曲プロセスを上手く説明できた試しがないんだけど、ぼくにとって音楽はとても抽象的なものなんだ。そして、その抽象性がぼくが音楽を好きなところなんだね」

――パットさんのアルバムが、世界を預言していると感じることがありました。今現在、音楽を通じて何を伝えたいのでしょうか。

「まぁ、アメリカが現在のように混迷を極めた状況になるとは思っていなかったけれどね。質問を再考してみると、"今の音" を表現したいミュージシャンと、将来に向けて"望む音楽" を作っていくミュージシャンがいるんだと思う。ぼくは、おそらく、後者に近いだろうね」

――現在の混沌とした世界で、どんな音楽が求められ、どんな音楽が不要だと思いますか。

「それについては、ぼく自身の音楽に集中するよ。ほかの人が何をしているかについては、一切考えないようにしている」

――ファンの皆さんは、もう次作について知りたいのです。サイドアイでのレコーディングがもう1枚分済んでいると思いますし、かかり始めたとおっしゃっていたヴォーカル・アルバム(さまざまなシンガーがパット楽曲を歌う)にも期待を膨らませています。

「いや、いや、チャンネルはそのままで(笑) 楽しみに待っていて下さい。その前に5月、すみだトリフォニーで会いましょう!練習に励んで、臨みます」

LIVE INFORMATION

HARVEY MASONの公演バナー画像

Blue Note Tokyo Presents
PAT METHENY
Dream Box / MoonDial Tour


2025 5.27 tue., 5.28 wed.
Open6:00pm Start7:00pm

<会場>
すみだトリフォニーホール

<オフィシャルサイト>
https://www.bluenote.co.jp/jp/lp/pat-metheny-2025/

中川ヨウ(なかがわ・よう)/ Yo Nakagawa
音楽評論家、ジャズ研究者@慶應義塾大学アートセンター
'80年代から、ジャズを核にジャンル、国境を超える音楽の応援で高い評価を得てきた音楽評論家/ ジャズ研究者。21世紀の"グローカル"(グローバル+超ローカル)な音楽についての知見も深い。慶應義塾大学アートセンター、油井正一アーカイヴ【拡張するJazz公開研究会】で学生、一般の音楽愛好家とジャズ考察を続けている。洗足学園音楽大学名誉教授、ミュージック・ペンクラブ・ジャパン理事。
#JazzMovesOn

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