現代ジャズ屈指のサックス奏者クリス・ポッターが3日連続公演 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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現代ジャズ屈指のサックス奏者クリス・ポッターが3日連続公演

現代ジャズ屈指のサックス奏者クリス・ポッターが3日連続公演

 自己の作品のみならず、パット・メセニー、ポール・モチアン、スティーリー・ダンなどとの共演でも知られるサックス奏者クリス・ポッターが単身来日。日本を代表する面々と繰り広げる3日連続公演の内容は?

text = Koji Murai
Photo by Dave Stapleton

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 コンテンポラリー・ジャズ・シーンを代表するテナー・サックス奏者といえば、マーク・ターナー、ジョシュア・レッドマン、クリス・ポッターの名前が真っ先に挙がるだろう。3人とも素晴らしいミュージシャンだが、個人的な好みとしてはクリス・ポッターが一番のごひいきだ。パワフルなトーンと精緻なテクニック、オーソドックスな演奏からファンクなプレイまでの幅の広さ、コンポーザーとしての才能など、ポッターの音楽には広い意味でのジャズの魅力がぎっしりと詰まっている。11月23日から25日までの3日間、ポッターが単身来日して、日本の一流ミュージシャンたちとの共演を行うことになった。23日は若手たちとのコンボ・セッション、24日25日はエリック・ミヤシロ率いるブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラとの共演で、しかも24日は「コンテンポラリー」、25日は「アコースティック」とそれぞれ演奏曲目が違うのだ。これは3日続けて通うしかない、と盛り上がっている方も多いはずだ。もちろん私もその一人です。

 クリス・ポッターは1971年1月1日、イリノイ州シカゴ生まれ。10歳のときにサックスを始め、ニューヨークのニュースクールとマンハッタン音楽院を卒業後、レッド・ロドニー(トランペット)のバンドでプロとしての活動を開始した。初リーダー作は1993年の『Presenting Chris Potter』。それ以後、最新作『Sunrise Reprise』(2021年)まで、23タイトルのリーダー作をリリースしている。興味深いことにポッターは、エレクトリックな要素が強いアルバムと、アコースティックでリリカルなサウンドの作品を、ほぼ同数発表していて、たとえば『Ultrahang』(2009年)『Circuits』(2019年)『Sunrise Reprise』は前者に相当し、『The Sirens』(2013年)『Imaginary Cities』(2015年)『The Dreamer Is the Dream』(2017年)は後者に相当する。後者の3作は、いずれもECMレコーズからのリリースで、その内『Imaginary Cities』にはポッターが編曲を担当した弦楽合奏が参加している。また、コロナ禍が始まった2020年には、サックスやフルートだけでなく、キーボード、ギター、ベース、ドラムスなど、すべてをポッター一人で演奏したアルバム『There Is A Tide』を発表して話題を呼んだ。ちなみにポッターはパット・メセニーのユニティ・バンドに参加していたのだが、ライヴではメセニーに命じられて(?)アコースティック・ギターも弾いていた。

 このように、自己プロデュースや作編曲を含むトータルなミュージシャンとしてのスキルが非常に高いポッターだが、ライヴでの聴きどころは、なんと言ってもパワフルでスピーディで中身の濃いサックス演奏、特にテナー・サックスのプレイだろう。今回の3日間で、スリリングな即興演奏の応酬が特に期待できるのは、23日に行われる井上銘(ギター)、須川崇志(ベース)、石若駿(ドラムス)とのセッションだ。今最も生きのいいこの3人が、現代ジャズ・シーンに君臨するサックス・マスター、ポッターとどのように切り結ぶのか、想像しただけでも興奮してくる。また、ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラと共演する2日間は、ポッターのオリジナル曲以外に、コンテンポラリー・ジャズのよく知られた曲やスタンダード曲がいろいろ登場することになりそうだ。ファンが大喜びするあの曲やこの曲が、ゴージャスでダイナミックなビッグバンドにアレンジされて、その上でポッターがサックスを吹きまくる、という感動のステージになることは間違いない。

 これまでも、アメリカの超一流サックス奏者が単身来日して、日本を代表するミュージシャンたちと共演したライヴは、後々までの語り草になる名演が多かった。ジョー・ヘンダーソン、フィル・ウッズ、スティーヴ・グロスマン......。このクリス・ポッターとの3日間も、歴史に残る名演になるに違いない。


村井康司(むらい・こうじ)
音楽評論家。1958年生まれ。著書『あなたの聴き方を変えるジャズ史』『JAZZ 100の扉』『現代ジャズのレッスン』『ページをめくるとジャズが聞こえる』他。尚美学園大学講師『ジャズ史』。

LIVE INFORMATION

20221123ChrisPotter_image01.jpg

クリス・ポッター meets 井上銘、須川崇志&石若駿 "Front Line of Jazz"
2022 11.23 wed.
[1st]Open4:00pm Start5:00pm
[2nd]Open7:00pm Start8:00pm
※2ndショウのみインターネット配信(有料)実施予定
※配信チケット販売期間:11.23 wed. 9:00pmまで
※アーカイブ配信視聴期間:11.26 sat. 11:59pmまで
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/chris-potter/

<MEMBER>
クリス・ポッター(サックス)
井上銘(ギター)
須川崇志(ベース)
石若駿(ドラムス)

20221123ChrisPotter_image02.jpg

クリス・ポッター meets ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラ directed by エリック・ミヤシロ
2022 11.24 thu., 11.25 fri.
[1st]Open5:00pm Start6:00pm
[2nd]Open7:45pm Start8:30pm
※各日でショウの内容/テーマが異なります。
11.24 thu. "Contemporary"
11.25 fri. "Acoustic"
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/chris-potter-bnt-all-star-jazz-orchestra/

<MEMBER>
クリス・ポッター(サックス)
エリック・ミヤシロ(トランペット、コンダクター)
本田雅人(サックス)
米澤美玖(サックス)
高尾あゆ(サックス)
真野崚磨(サックス)※11.24のみ
庵原良司(サックス)※11.25のみ
渡邉瑠菜(サックス)
川上鉄平(トランペット)
山崎千裕(トランペット)
小松悠人(トランペット)
吉澤達彦(トランペット)※11.24のみ
小澤篤士(トランペット)※11.25のみ
中川英二郎(トロンボーン)
半田信英(トロンボーン)※11.24のみ
春木香菜絵(トロンボーン)※11.25のみ
高井天音(トロンボーン)
小椋瑞季(トロンボーン)
宮本貴奈(ピアノ)
川村竜(ベース)
川口千里(ドラムス)※11.24のみ
大坂昌彦(ドラムス)※11.25のみ

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