上原ひろみ、駆け抜けた16日間の軌跡 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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上原ひろみ、駆け抜けた16日間の軌跡

上原ひろみ、駆け抜けた16日間の軌跡

ライヴだからこその"一期一会"

 "SAVE LIVE MUSIC"をテーマに掲げ、16日間にわたり4プログラム計32公演が行われた前代未聞のロングラン公演。全日程を無事に終えたばかりの上原ひろみに、ライター原田和典が話を聞いた。ライヴの場を何よりも重視してきた上原ひろみが、ブルーノート東京を舞台に駆け抜けた貴重な16日間を、今あらためて振り返る。

interview & text = Kazunori Harada
live photography (Spectrum) = Takuo Sato
live photography (Place To Be) = Tsuneo Koga
live photography (BALLADS) = Yuka Yamaji
live photography (Since 2003) = Makoto Ebi

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 最後の一音が空気に溶け去るが早いか、観客は総立ちとなって熱烈このうえない拍手を送ります。そして演奏家は、それまで没頭していた演奏世界から現実に降り立ったかのようにピアノの椅子から立ち上がり、満面の笑顔で両腕を突き出すように高く掲げて、どこまでも深くお辞儀をします。ファンの誰もがマスクの中で「良かった、楽しかった」「素晴らしい体験をした」「新型コロナウイルス下の、ゆううつな気分を吹き飛ばすことができた」「やっぱりライヴは最高だ」などなど、それぞれ内なる声を発して家路についたに違いありません。

20200825HiromiUehara_image01.jpg from "Spectrum"

 ピアニスト、上原ひろみがブルーノート東京で開催したロングラン・ライヴ"SAVE LIVE MUSIC"が9月16日に千秋楽を迎えました。コロナ禍に苦しむライヴ業界の救済の一助になればと、オーディエンスを前にしたパフォーマンスを何よりも重視してきた彼女みずから企画・構成した長期公演が、ついに完結したのです。計16日間・32ステージに及んだプログラムは、次のように構成されていました。

★最新ソロ・ピアノ・アルバム『Spectrum』からの楽曲で綴られた第1シリーズ"~Spectrum~"(8月25日~29日)

20200825HiromiUehara_image02.jpg from "Spectrum"

★2009年にリリースされた初のソロ・ピアノ・アルバム『PLACE TO BE』の楽曲を現在の視点で解釈する第2シリーズ"~PLACE TO BE~" (9月4日~7日)

20200825HiromiUehara_image03.jpg from "Place To Be"

★初めて全編をバラード・ナンバーで構成した第3シリーズ"~BALLADS~" (9月10日~11日)

20200825HiromiUehara_image04.jpg from "BALLADS"

★2003年のデビューから現在までのキャリアを、ジャズ・クラブへの感謝を込めて紡いだ最終シリーズ"~Since 2003~"(9月12日~16日)

20200825HiromiUehara_image05.jpg from "Since 2003"

 現地に足を運ぶことのできない方のために、各シリーズの1セットづつ動画でも配信されました。また、ピアノは全セットを通じて同一の楽器YAMAHA-CFXが、米澤裕而氏による入念な調律を経たうえで使用されました。「同じ場所でずっと同じピアノを弾けることは、ピアノもその環境に慣れ、私もそのピアノのその場所での鳴りに慣れてくるので、とても贅沢な環境でした」と、上原ひろみはこの長期シリーズを振り返っています。全シリーズを通じて、彼女はこのピアノから様々なトーン、ヴォイス、カラーを引き出し、それをブルーノート東京という空間、空気の中に解き放ちました。そして観客はそれに聴き入り、熱狂し、惜しみない拍手を送ります。

20200825HiromiUehara_image06.jpg from "Since 2003"

「オスカー・ピーターソンなど、たくさんの尊敬するアーティストを見てきた神聖な場所であるとともに、大好きな仲間の働く、とても大切な場所であるブルーノート東京。そこで自分もスタッフも、誰一人体調を崩すことなく、無事ライヴを完走できて、とにかくホッとしています」と語る上原ひろみ。"SAVE LIVE MUSIC"公演は確実に、ミュージック・ピープルが日常に戻っていくための力強い第一歩を記しました。ライヴならではの"一期一会"が、世界のあらゆるところで繰り広げられる日が来ることを願うばかりです。


原田和典 (はらだ・かずのり)
音楽ジャーナリスト/米ジャズ誌「ダウンビート」国際批評家投票メンバー。ブルーノート東京のHP等に執筆のほか、グルーヴ・ミュージックの謎に迫る『コテコテ・サウンド・マシーン』(スペースシャワーブックス)など著書多数。

☆各プログラムのセットリストはこちら

~Spectrum~
2020 8.25 tue., 8.26 wed., 8.27 thu., 8.28 fri., 8.29 sat.

1. Kaleidoscope
2. Yellow Wurlitzer Blues
3. Once In A Blue Moon
4. Blackbird
5. Rhapsody In Various Shades Of Blue
EC. Spectrum

<Live Report & Photo Gallery>
https://www.bluenote.co.jp/jp/reports/2020/08/26/save-live-music-hiromi-spectrum.html

~PLACE TO BE~
2020 9.4 fri., 9.5 sat., 9.6 sun., 9.7 mon.

1. BQE
2. Sicilian Blue
3. Choux a la Creme
4. Pachelbel's Canon
5. Show City, Show Girl
6. Daytime in Las Vegas
7. The Gambler
EC. Place To Be

<Live Report & Photo Gallery>
https://www.bluenote.co.jp/jp/reports/2020/09/05/save-live-music-hiromi-place-to-be.html

~BALLADS~
2020 9.10 thu., 9.11 fri.

1. Somewhere
2. Wake Up and Dream
3. Whiteout
4. Firefly
5. 月と太陽
6. 悲愴
7. Green Tea Farm
EC. Sepia Effect

<Live Report & Photo Gallery>
https://www.bluenote.co.jp/jp/reports/2020/09/11/save-live-music-hiromi-ballads.html

~Since 2003~
2020 9.12 sat., 9.13 sun., 9.14 mon., 9.15 tue., 9.16 wed.

1. Haze
2. What Will Be, Will Be
3. My Favorite Things
4. Seeker
5. Cantina Band
6. Love and Laughter
7. Dancando No Paraiso
EC. 上を向いて歩こう

<Live Report & Photo Gallery>
https://www.bluenote.co.jp/jp/reports/2020/09/13/save-live-music-hiromi-since-2003.html

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