原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

前回の公演から、ちょうど3年。"ビヨンド・カテゴリー"そのもののトランペッター、クリス・ボッティの5デイズ10セット公演が昨日から始まっています。今回もセミ・クラシック的な楽曲、ハードなジャズ、映画音楽、ソウルフルなバラード、ボサノヴァなど幅広い楽想が惜しげもなく登場、加えてデイヴィッド・フォスターのプロデュースで録音したばかりという新作（リリースが待ち遠しいですね）からのナンバーもいち早く聴かせてくれました。前回、前々回の公演で絶妙なオルガンを聴かせてくれたジョーイ・デフランセスコは昨年、天に召されてしまいましたが、ベースのレジー・ハミルトン、ドラムスのリー・ピアソン、ヴォーカルのサイ・スミスら"ボッティ・ファミリー"というべきメンバーは健在。エンタテインメント性たっぷりの華やかなステージは、満員のオーディエンスから大きな声援と拍手を引き出しました。

1曲目はアイルランド民謡の「Danny Boy」。新たに加入したエストニア出身のピアニスト、ホルガー・マルヤマーだけをバックに、ボッティは朗々とメロディを吹き上げます。"間"を生かした吹奏に濃厚なエコーがかかり、やがてリズム・セクションが加わって「When I Fall in Love」が始まります。2004年に発表され、ジャズ史上最高の売り上げを示したと伝えられるアルバムの表題曲です。来日公演でも必ずといっていいほど演奏されてきましたが、今回はベン・バトラーのロック色の濃いギター、レジー・ハミルトンのファンク調ベースが引き立った、よりワイルドな感触を感じさせるアレンジです。やはり新加入のテナー・サックス奏者、チャド・レフコウィッツ=ブラウンは「You Don't Know What Love Is」でボッティと激しい掛け合いを繰り広げます。エレクトリック・ベースからウッド・ベースに持ち替えたレジーはベース・ソロとスキャットをユニゾンで届け、ピアソンはスティック、マレット、素手を使い分けて躍動感たっぷりのリズムを送り込みます。徹底的に甘くメロウな一面と、こうした熱く強烈な一面の両方を、非常に高いレベルで持っているのがボッティのバンドの大きな魅力です。

サイ・スミスは幅広い声域をフルに使って「Feelin' Good」等を歌い、今回が初来日というシンガーソングライターのジョン・スプリトホフは、パリの印象を綴った「Paris」、今は亡き友人に捧げた「Raye｣で、ギター・プレイも含めて豊かな才能を示しました。ラストは、より良い未来に向けて、「What A Wonderful World」。ボッティの輝かしい音色と、ピアソンのユーモラスなルイ・アームストロング風ヴォーカルが、観客からさらなる笑顔を引き出します。

よく知られている曲を新鮮なアレンジで楽しむ面白さ、ジャンルを超えた音楽世界、メンバー全員に共通する華とエンタテインメント性。見ても聴いても充実感いっぱいのボッティのステージは、20日までノンストップで続きます。
(原田 2023 2.17)

Photo by Jun Ishibashi

★来日公演は2月20日(月)まで！
CHRIS BOTTI
2023 2.16 thu., 2.17 fri., 2.18 sat., 2.19 sun., 2.20 mon.