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CHARLES LLOYD "Kindred Spirits"

artist CHARLES LLOYD

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


御年81歳。生涯何度目かのピークを確実に迎えている巨星チャールズ・ロイドが、新プロジェクト"Kindred Spirits"(気の合う仲間たち)で来日中です。共演メンバーはジュリアン・ラージ(ギター)、ジェラルド・クレイトン(ピアノ)、そして10年以上ロイドのお気に入りであり続けているルーベン・ロジャース(ベース)とエリック・ハーランド(ドラムス)のコンビ。彼らは9月1日に日本最大級のジャズフェス「東京JAZZ」でカマシ・ワシントンのグループとダブルビル公演を行ない(カマシとロイドを結びつけるキーワードは"ビリー・ヒギンズ"だと思います)、9月3日にブルーノート東京における初日の幕を開けました。

ステージは最新アルバム(チャールズ・ロイド&マーヴェルズ名義)『Defiant』から、そのタイトル曲で始まりました。2メートル近い長身のロイドはマイクから少々離れ気味に立ち、サブトーン(息の音)を生かしながらテナー・サックスを揺さぶるように演奏します。枯淡の境地をそのまま音像化したようなプレイが終わると、今度はクレイトンやラージの清流のようなソロが新たな流れを創り出します。"黒人国歌"の異名をとる「Lift Every Voice」を導入部にして始まったのは「Nu Blues」。ここではメンバー全員の長尺のアドリブがフィーチャーされましたが、誰もがインスピレーションのかたまりです。ハーランドは他のソリストがプレイしている間、ほぼ全拍で鈴の乗っかったハイハットを踏み(アート・ブレイキーなど往年のモダン・ジャズ・ドラマーのように2拍、4拍ではなく)、自身のソロになるとバスドラも4つ打ちにしつつ、両手で自由奔放なフレーズを送り出します。豊かなヴォリューム・コントロール、まるで歌っているかのようにメロディアスなフレーズと音程、複数あるシンバルそれぞれのキャラクターの立ったトーン、まさに現代ジャズ・ドラムの美しさがここにありました。

ステージ中盤でロイドは突如、オーネット・コールマン作「Peace」のメロディを演奏しました。おそらく予定になかったであろうことは、各メンバーの反応からわかりましたが、十数秒の間に彼はテナー・サックスからフルートに持ち替え、くねくねしたメロディを持つブルース・ナンバーに取り掛かります。'60年代からの愛奏曲「Third Floor Richard」と「Island Blues」を混合したような展開といえばいいでしょうか。ロイドの後を受けたラージのギターがまた、圧巻でした。オーネットの「Dancing in Your Head」のフレーズを転調しながらこれでもかと高速で繰り返し、テレキャスターを引き倒す勢いのピッキングで空間を埋め尽くし、最後はチョーキング交じりの豪快なプレイで締めました。上昇気流の者だけが持つオーラが、彼のプレイから放たれている印象を受けました。弾き終えたとたん、猛烈な拍手が起こり、椅子に座って演奏を眺めていたロイドも破顔一笑です。

キース・ジャレットやミシェル・ペトルチアーニがいた頃のロイド・バンドには間に合いませんでしたが、ぼくは'94年に新宿で行なわれたECMレーベル設立25周年コンサート以降、来日のごとに彼のライヴを体験しています。そして、この"Kindred Spirits"は自分が接してきたロイドの実演中、最高峰にランクされる演奏内容であり、ユニットであると断言できます。公演は本日も行なわれます。あまりにも素晴らしい世代間交流を、ぜひ手の届く距離でお楽しみください!

(原田 2019 9.4)
Photo by Yuka Yamaji

SET LIST

2019 9.3 TUE.
     
1st
1. DEFIANT
2. LIFT EVERY VOICE AND SING
3. HYPERION WITH HIGGINS
4. REQUIEM
5. THIRD FLOOR RICHARD
6. AY AMOR
 
2nd
1. DREAM WEAVER
2. OF COURSE, OF COURSE
3. THE SONG MY LADY SINGS
4. TONE POEM
EC1. HOW CAN I TELL YOU
EC2. AY AMOR

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