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KEIKO MATSUI

artist 松居慶子

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

ニュー・アルバム『Echo』がベスト・セラー中のスター・ピアニスト、松居慶子が4年ぶりにブルーノート東京に戻ってきました。アメリカのコンテンポラリー・ジャズ・チャートで1位を獲得(『Deep Blue』、『Journey To The Heart』に続いて三度目)した同作からのナンバーを中心に、多彩なプログラムで徹底的に楽しませてくれます。

共演メンバーは、気鋭ゲイブリエル・ジョンソン(トランペット)、アコースティックとエレクトリック双方に才能を発揮するブラジル出身のJP・モウラン(ギター)、そして重鎮のジェラルド・ヴィーズリー(ベース)と旧友バーニー・ドレセル(ドラムス)。バーニーはゴードン・グッドウィンのビッグ・ファット・バンドやブライアン・セッツァー・オーケストラのドラマーとしても音楽ファンにはおなじみでしょう。ヴィーズリーはフィラデルフィアを拠点に活動する奏者で、ウォルト・ディッカーソンやオーネット・コールマンと共演したり、ジョー・ザヴィヌルの"ザヴィヌル・シンジケート"に在籍したことがあります(その後任がリチャード・ボナです)。このリズム・セクションの柔軟性、うねりがとにかく半端ありません。

セットリストもまた、ものすごくバラエティに富んだものでした。バンド演奏がムードを設定したあとに松居が登場し、クールかつスタイリッシュにメロディを奏でたのは「Unshakable」。ニューヨーク・シティに捧げられた「Moon Over Gotham」ではバーニーが高く張った音の出る小型スネア・ドラムから低めにチューニングされたフロア・タムまで幅広い音域を駆使してソリストを鼓舞し、全米ラジオ・チャートで1位になったシングル曲「Spirit Dance」ではサンバのリズムに乗せて次々と白熱のソロが繰り広げられます。そしてファンキー・ミュージック好きのぼくを徹底的に興奮させてくれたのが、松居慶子史上初めてのブルース・コード・ナンバーであるという「Marlin Club Blues」。まさにメンバーが一丸となって"ブルースの気分"に浸った快演で、立ち上がってピアノとキーボード(オルガンの音色に設定)の双方からコッテリしたフレーズを放ちまくる松居のプレイは、少なくともいままでぼくが観た彼女のライヴからはうかがえなかったものでした。ファンキーという点では2016年作品『Journey To The Heart』から「Moving On」を演奏してくれたのも嬉しかったですし、スパニッシュ・テイスト炸裂の「Casablanca」は鍵盤ハーモニカによる導入部、アコースティック・ギターの打楽器的なアプローチなど前半から聴きどころ満載、山あり谷ありの展開の後、ピアノのグリッサンドから一気にバンド全体の音量が高まって次なる場面に突入、そこでひときわ大きな拍手が起きて、さらに"今しかない"という感じでトランペットの鮮烈な響きが切り込んでますます場内を熱狂させていくあたり、これこそライヴの醍醐味と叫びたくなりました。

ほぼ1曲ごとに登場したMCもわかりやすく楽しく、演奏だけではなく音響や照明にも細心の気遣いが感じられました。演奏者、観客、スタッフが結集して最高峰のステージをつくりあげた、という印象を受けました。超満員のオーディエンスを集めて開催中の松居慶子公演は、本日も圧巻のグルーヴとエキサイトメントを届けてくれることでしょう。

(原田 2019 6.22)

Photo by Yuka Yamaji

SET LIST

2019 6.21 FRI.
1st
1. UNSHAKABLE
2. MOON OVER GOTHAM
3. ECHO
4. MARLIN CLUB BLUES
5. SPIRIT DANCE
6. FOREVER FOREVER
7. MOVING ON
8. RETURN TO ETERNITY
9. CASABLANCA
10. VIVA LIFE
EC. BRIDGE OVER THE STARS

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