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THE HOT SARDINES

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これぞ、晴れの場の表現。ライヴ巧者たちは鮮やかにジャズの華を指し示す。

 古き日のジャズ。そう聞いてどんな音を思い浮かべるだろうか? スウィング・ジャズ、ジャイヴ・ミュージック、ラグタイムやディキシーランド......。そういったモダン・ジャズ登場前の娯楽性の高いジャズ語彙を今の時代に魅惑的に開花させているグループが、ザ・ホット・サーディンズだ。遥か80年も前の、1920〜40年代のジャズ......。ようはジャズがまだダンス・ミュージックとしてダンス・フロアに根ざし、先端のポップ・ミュージックであった頃のジャズ表現のヴァリエーションを彼らは趣味よく取り上げ、洒脱に再提出している。

パリ生まれの女性喉自慢シンガーである"ミズ・エリザベス" ブージュロルと音楽面を取り仕切るピアニストのエヴァン"ビブス"パラッツォが、グループの柱。そこにクラリネット/テナー・サックス奏者とトランペット奏者とトロンボーン奏者からなる3管やリズム・セクション、さらにタップ・ダンサーが加わる実演はまさに絢爛豪華で、サーヴィス精神に溢れる。なんと、今回はリズム・セクションが腕の確かな若い女性に代わっているのは注目点。いいじゃないか! それはバンドに華やかさやリベラルな情緒をおおいに加える。また、ずっとステージ中央に位置し、随所で見栄を切って高速タップを披露するタップ・ダンサーのACリンカーンも本当にエンターテイナー。また、ホーン陣は演奏する一方でコーラス参加もして場を盛り上げる。チーム・ワーク、抜群ですね。

 そんな"スパイシーなイワシたち"のことを広く紹介したのは、ソウライヴやノラ・ジョーンズら2000年代のブルーノート・レコードの広角路線を支えたプロデューサーのイーライ・ウルフ。2019年新作『Welcome Home, Bon Voyage』も彼が制作者についているが、それはNYとトロントで収録されたライヴ盤だ。「こんな時代だからこそ、ライヴ・ミュージックは必要」と、ミズ・エリザベスは日本語でアピールもしていたが、本当に彼女たちはライヴ巧者。もう接していてワクワク、心踊ってしまう。
 
ライヴは晴れの場であり、日常とは一線を画した輝かしい娯楽の場。全8人による人力100%の笑顔の表現は、そうした真理をあっさりと伝える。さらにそれは音楽をやることの尊さや米国大衆音楽文化の積み重ねの豊かさを指し示すのだから、これは一粒で2度も3度もおいしい。さあ、ショータイム! ファッツ・ウォーラーやデューク・エリントンらの曲を取り上げるなどレパートリーを大幅に入れ替えた、彼ら3度目の来日公演は13日まで続く。

text : 佐藤英輔
ロックやR&Bからワールドまで。ジャンルを横切ったプロダクツに快楽を覚える音楽評論家。音楽ライヴや映画についてのブログは、こちらから。JAL国際線機内エンターテインメントAUDIO<ch25ジャズ> を選曲しています。

Photo by Tsuneo Koga

SET LIST

2019 6.11 TUE.
1st&2nd
1. I LOVE PARIS
2. GOIN’CRAZY WITH THE BLUES
3. SOME OF THESE DAYS
4. CRAZY RHYTHM
5. COMES LOVE
6. AFTER YOU’VE GONE
7. YOUR FEET’S TOO BIG
8. BLUE DRAG
9. BILLY BAILEY WON’T YOU PLEASE COME HOME
10. CARAVAN
EN. BEI MIR BIST DO SCHOEN

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