原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

ゴールデンウィークもいよいよクライマックスに近づいてきました。スムース・ジャズの最高峰に位置するサックス奏者デイヴ・コーズの、陽気で華やかなステージが昨日から始まっています。共演メンバーは相変わらず豪華で、ベースは長くアル・ジャロウの音楽監督を務め、オーネット・コールマン＆プライム・タイムにも所属したことのあるクリス・ウォーカーが担当。キーボードには新たに注目株のカーネル・ハレル（先日ブランドン・コールマンのバンドでも来日しました）が加わっています。そしてゲスト・ヴォーカリストはモータウン・レーベルを代表するシンガー・ソングライターのヴァレリー・シンプソン！　夫婦デュオ"アシュフォード＆シンプソン"(残念ながらアシュフォードは2011年に亡くなってしまいました)での公演以来、ちょうど10年ぶりとなるブルーノート東京への登場です。

前半はインストゥルメンタルによるパフォーマンスが続きます。デイヴはテナー・サックス、アルト・サックス、カーヴド・ソプラノ・サックス（先日は、アンドレア・モティスがこの楽器を演奏していましたね）を曲ごとに持ち替えて、時おりクリス・ウォーカー、ギタリストのアダム・ホーリーと一緒にダンスしながら快い音色を届けます。人気曲「Together Again」等で場内を盛り上げたあと、いよいよ"ザ・レジェンド"ヴァレリー・シンプソンの登場です。アシュフォード＆シンプソンの全米ヒット・チューン「Solid」をキーボードの弾き語りでパワフルに聴かせた後は、チャカ・カーンやホイットニー・ヒューストンも歌った「I'm Every Woman」へ。この名曲を書いた人物こそヴァレリーなのです。まさか彼女による自作自演を目の前で味わえるとは。バンド・メンバーも細心のサポートでヴァレリーの歌唱を盛り立てます。

最新ソロ・アルバム『Double Vision』が好評のアダムは、その中から「Can You Feel It」を披露。続いてはクリスがベースの弾き語りで、アル・ジャロウに捧げて「Mornin'」を届けます。前半ではまるでアルが甦ったかのような節回しを聴かせ、徐々に自分流の歌い方に移行していくあたり、さすがというしかありません。再びヴァレリーがバンドスタンドに登場すると、お待ちかねのモータウン・メドレーが始まります。「Ain't Nothing Like the Real Thing」、「Ain't No Mountain High Enough」など永遠の定番を、現在のヴァレリーの自作自演で楽しめる喜び。歌の合間に入るデイヴのオブリガートが、また絶妙です。

大の親日家であるデイヴは、必ず日本語のMCをはさみ、機会があれば、その来日時期に合った日本の曲を演奏します。今回、ブルーノート東京につめかけた超満員のファンにプレゼントされたのは「こいのぼり」。カーヴド・ソプラノで流麗にメロディを綴り、そこからジャクソン5のヒット曲「I'll Be There」へ。ヴァレリーの熱唱、デイヴのサックス・ブロウ、オーディエンスの合唱が一体となって、約90分に及ぶエンタテインメント・ショウは幕を閉じました。公演は6日まで続きます。
(原田 2019 5.2）
Photo by Yuka Yamaji