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MICHEL CAMILO TRIO LATINO with RICKY RODRIGUEZ & ELIEL LAZO

artist MICHEL CAMILO

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

超絶技巧が火花を散らす白熱の一夜。至高のパフォーマンスを繰り広げる3人に、こちらの目と耳は釘付けです。ミシェル・カミロ率いる"トリオ・ラティーノ"が、昨日から超満員のオーディエンスを熱狂させています。カミロは先日ニュー・アルバム『エッセンス』をリリースしたばかり。絶好のタイミングでの来日です。

ステージには左からピアニストのカミロ(ドミニカ共和国)、ベーシストのリッキー・ロドリゲス(プエルトリコ)、パーカッション奏者エリエル・ラソ(キューバ)が順に並びます。カミロとラソは2017年にデュオで公演したことがありますが、今回ベースが加わったことで一層アンサンブルが重厚になり、いわゆるジャズのスウィング感もより強く押し出されるようになった、という印象を受けました。オープニングはトランペット奏者、リー・モーガンのヒット曲「The Sidewinder」。モーガンのヴァージョンではビリー・ヒギンズがニューオリンズR&Bに通じるビートを打ち出していましたが(ヒギンズはニューオリンズ出身のエド・ブラックウェルにこのビートを教わったと、ぼくは何かの記事で読んだことがあります)、トリオ・ラティーノの解釈はよりダンサブルでメリハリに富んでいます。カミロのピアノ・プレイは"弾く"というより、"88鍵を制圧する"といった感じ。その場の空気全体に共鳴するかのような雄大なトーン、明快な響きには「すごいなあ」という言葉しか思い浮かびません。驚異的に粒の揃った音色、ナイアガラの滝のようなオクターヴ・ユニゾン(先日ブルーノート東京に登場した、やはり現代屈指の名手であるクリスチャン・サンズの、清流のようなそれと好対照といえましょう)、空手チョップのごとく打ちおろされる左手から放たれる肉厚な和音、チャーミングなアドリブ・フレーズ・・・ソロを弾き終わるとカミロは瞬時に右手を共演者に伸ばし、"今度は君の番だ"とばかりに次のソリストを指示します。そしてラソやロドリゲスは鮮やかなプレイでカミロが高めたテンションを受け継ぎ、観客から盛大な拍手や驚嘆の声を引き出していくのです。

ステージは主にカミロのオリジナル曲と20世紀のジャズメン・オリジナルで構成されていましたが、ジョン・コルトレーンの「Naima」における解釈もまた、強く印象に残るものでした。一音一音をかみしめるように弾くカミロ、滑らかにボトムを支えるロドリゲス、マレットでバスタムを叩きつつハイハットや足カウベルでアクセントをつけるラソ。この「Naima」はコルトレーンの演奏(公式盤では2度プレイしています)よりも、相当にあでやかだなあと思いながら聴いていたら、サウンドの色調は徐々に変化し、後半部分ではラソの"チャント"がフィーチャーされました。かつてチャノ・ポソやサブ―・マルティネスが行なった"朗詠"を彷彿とさせる力強く、張りのある声は鳥肌もの。"カヴァー"というよりも、近年よく使われる言葉でいうなら"リイマジンド"という表現がぴったりの「Naima」でした。このトリオの公演は29日まで行なわれます。

そしてカミロは9月に再来日、今度はビッグ・バンド編成で最新作『エッセンス』収録曲を中心とするステージを開催するとのことです。"大好きな場所に、今年は2回も戻ってくることができて嬉しいよ"と語ったカミロ。絶好調を更新し続ける彼のパフォーマンスは、いつだって必見必聴です。


(原田 2019 4.27)

Photo by Makoto Ebi


●MICHEL CAMILO with BIG BAND
2019 9.5 thu., 9.6 fri., 9.7 sat., 9.8 sun. ブルーノート東京
詳細はこちら

SET LIST

2019 4.26 FRI.
1st
1. THE SIDEWINDER
2. YES
3. A PLACE IN TIME
4. MONO
5. YOU AND ME
6. AND SAMMY WALKED IN
7. NAIMA
8. PAPRIKA
EC1. THE FILM FRAM SAUCE
EC2. TAKE FIVE
 
2nd
1. PIECE OF CAKE
2. LA COMPARSA
3. THEN AND NOW
4. PARA VIGO ME VOY
5. JUST LIKE YOU
6. MONGO’S BLUES
EC. ON FIRE

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