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TRIO "Cu-Bop" featuring AXEL TOSCA, AMAURY ACOSTA & BRANDON LANE

artist AMAURY ACOSTA , AXEL TOSCA

REPORT

 注目のプロジェクト『トリオ・キューバップ』のブルーノート東京公演がスタートした。このバンドは私が監督したキューバ音楽のドキュメンタリー映画『Cu-Bop』から派生したコレクティブで、映画の主演アーティストであるアクセル・トスカ(p)、アマウリ・アコスタ(ds)、の2人を核に、気鋭の若手奏者ブランドン・レーン(b)を迎えた、現在のNYジャズシーンの一端を象徴するトリオである。

 拙作映画をご鑑賞いただいた方、またNYの最先端ジャズシーンに関心のある方には、アクセル、アマウリの名前はミクスチャー・ジャズ・ユニット『(U)nity』の双頭リーダーとして認識されているだろう。『(U)nity』は2人の出自であるキューバの豊穣な音楽をNYならではの先端表現で紡いだ、ジャズシーンの今を象徴するユニットだが、今回はアクセルとアマウリがトリオ編成で向かい合ったことで、より彼らの音楽性の豊かさ、演奏能力の高さが浮き彫りとなる最上級のステージパフォーマンスが展開された。

 オープニングはアクセルのオリジナル『FULANI in LOVE』。ともすれば"弾きすぎ"の傾向が強いキューバ人ピアニストのなかにあって、傑出した音楽的教養を持つアクセルは、3者の音の輪郭が一番美しい放物線を描くクロスポイントを即興的にさぐりだし、抑制と爆発が微妙なバランスで共存するようステージで指揮をとる。そのエキセントリックな外見や言動からは想像できないが、彼はNYの名門音大『ニュースクール』の大学院を、学費全額免除の特待生として卒業した音楽エリートである。

 続く『Prince of Darkness』は、彼らがNYのクラブでのセッション時にたたき台とする曲で、後半のキューバのサボール(味わい)をたっぷり含んだピアノソロのモントゥーノで客席から大きな歓声が上がる。日本初登場となるブランドンは、レジー・ワークマンに捧げたナンバー『1-4-Walkman』で卓越したウォーキングベースによるソロを展開。米国ジャズシーンの人材の豊かさに改めて唸らされた。そして、演奏家としてこの日一番の輝きを見せたのはドラムのアマウリだ。アフロキューバンジャズのナンバーでは、精緻で厳格なクラーベのリズムを基調に奔放なドラムソロを爆発させ、実験的なナンバーでは聴き手が基本となるリズムを忘れるほどの複雑な変拍子を際限なく叩き出す。天才奏者として来場した観客に強い印象を残したはずだ。

 この1stステージは90分ギリギリまで行われ、なお演奏を続けようとするメンバーが名残惜しそうに楽屋に戻るほど、白熱したものとなった。初日の緊張が溶け、さらなる自由度を獲得した彼らは、今日はどんな演奏を聴かせてくれるのか。今晩が実に楽しみだ。
(2019 4.16)


text : 高橋慎一(フォトグラファー/ライター/フィルムメイカー
)
2015年にドキュメンタリー映画『Cu-Bup』を初監督。製作、撮影と一人三役をこなし、日本・キューバ・アメリカのスタッフ、ミュージシャンが入り乱れる本作を完成にこぎ着けた。
https://takahashishinichi.com/


Photo by Makoto Ebi

SET LIST

2019 4.15 MON.
1st
1. FULANI IN LOVE
2. PRINCE OF DARKNESS
3. HORIZONS
4. LUPE
5. 1-4-WORKMAN
6. LAMENTED
7. HOLOGRAM
8. VALDEZ IN THE COUNTRY
9. D’AXEL’S DREAM
 
2nd
1. MOOD
2. AVENUE 15
3. INTRO
4. HOLOGRAM
5. 1-4-WORKMAN
6. PRINCE OF DARKNESS
EC. FULANI IN LOVE

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