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AVISHAI COHEN TRIO

artist AVISHAI COHEN

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


ベース奏者、作曲家として類まれな才能を発揮するアヴィシャイ・コーエンが、昨日から新曲を多数含む渾身のパフォーマンスを繰り広げています。昨年8月26日に紀尾井ホールで行なわれた意欲的かつ感動的なリサイタル"アヴィシャイ・コーエン トリオ with 17ストリングス"から半年、彼の創造意欲はますます高まるばかりのようです。

マーク・ジュリアナ、シャイ・マエストロ、ニタイ・ハーシュコヴィッツ、オムリ・モールなど彼のバンドからは数々の逸材が登場していますが、今回演奏するニュー・トリオのメンバーはエルチン・シリノフ(ピアノ)とノーム・ダヴィド(ドラムス)です。紀尾井ホール公演でも大きくフィーチャーされていたエルチンはアゼルバイジャンのバクー生まれ。アーロン・ゴールドバーグ、ケヴィン・ヘイズ、ジャン=ミシェル・ピルクらにジャズ・ピアノを師事、いわゆる"ムガーム・ジャズ"(ヴァギフ・ムスタファザデとアジザ・ムスタファザデの父娘ピアニストがパイオニアとされる)の第一人者でもあります。アヴィシャイはエルチンの強烈なリズム感が大好きなのだそうです。アヴィシャイと同じくイスラエル出身のノームは古くからのアヴィシャイ・ファンにもおなじみでしょう。"16歳の頃から一緒に演奏している。彼は紛れもなくグレイテスト・ジャズ・ドラマー・イン・ザ・ワールドのひとりだね"と、アヴィシャイはライヴのMC中に彼を賞賛しました。通常のドラム・セットにボンゴやカウベルを付け加え、右のタムタムの上の皮を思いっきりゆるくして"ズボッ、ズボッ"と中低音を響かせるところなど、ユニークであると同時に実に効果的です。

ステージでは2011年のアルバム『Seven Seas』からの「Dreaming」なども聴かせてくれましたが、メインは6月リリース予定という新作からのナンバー。それをしっかり日本のファンの前で披露したいという、アヴィシャイの気迫がサウンドから溢れてくるようでした。アルコ(弓弾き)、ピチカート(指弾き)、スラップ奏法のすべてを駆使した「Face Me」、どこかブラジルのショーロを思わせる優雅な「Arvoles」、"アヴィシャイ流ファンキー"と呼びたくなる「Simonero」(途中では4ビートで激しくスウィングするパートも盛り込まれました)などなど、アヴィシャイ、エルチン、ノームの三位一体には引き込まれるばかりでした。そしてクラシックも含むベース愛好家の方には、以前のライヴよりもさらに"アルコ率"が増していることも特筆しておきましょう。公演は3日まで休みなしで行なわれます。

ところでアヴィシャイは90年代初頭、チック・コリアのバンドに迎えられて世界的な存在になりました。そのチックが60年代後半によく共演していたベース奏者、ミロスラフ・ヴィトウスもトリオを率いて「コットンクラブ」に登場します(3月7日、8日)。そしてチック自身もクリスチャン・マクブライド、ブライアン・ブレイドとのトリオで4月4日から8日までブルーノート東京に出演します。アヴィシャイ、ミロスラフ、チックがそれぞれ率いるトリオをライヴで体験したとき、我々はさらなるベース~ピアノ~ドラムス・トリオの新たな地平を見ることになるのではないでしょうか。
(原田 2019 3.1)
Photo by Yuka Yamaji

SET LIST

2019 2.28 THU.
  
1st
1. ELLI
2. DREAMING
3. FACE ME
4. ELCHINOV
5. ARVOLES
6. WINGS
7. SIMONERO
8. REMEMBERING
EC. SEVEN SEAS
 
2nd
1. NOSTALGIA
2. ELCHINOV
3. GESTURE#2
4. WINGS
5. ARVOLES
6. GESTURE#1
7. FACE ME
8. SIMONERO
EC1. REMEMBERING
EC2. BÉSAME MUCHO

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