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熱帯JAZZ楽団 / THE 忘年会LIVE 2018

artist カルロス菅野 , 熱帯JAZZ楽団

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

今年もこの時期がやってきました。結成23周年、世界的な支持を受ける熱帯JAZZ楽団が真冬の東京に熱風を運びます。ブルーノート東京で"THE 忘年会 LIVE"を開催するのは今年で4年目。今回も磨き抜かれた演奏、鮮やかなアレンジ、楽しさあふれるMCでエンタテインメントの魅力を届けてくれます。

オープニングはアルバム『熱帯JAZZ楽団 XVII~The Best from Movies~』より、「反逆のテーマ(特別狙撃隊 S.W.A.T.)」。スリルとサスペンスを感じさせるテーマ・メロディを奏で始めてすぐ、超満員の客席から自然発生的に手拍子が巻き起こります。"熱帯JAZZ楽団の突撃隊長"こと藤陵雅裕もアルト・サックスをこれでもかと吹きまくり、これ1曲で場内の空気は完全に"熱帯色"に染まってしまったといっていいでしょう。

続いてはスウィング系ビッグ・バンドの大定番「Sing,Sing,Sing」。約80年前、ベニー・グッドマン・オーケストラがジーン・クルーパのドラムスをフィーチャーした名演を残しています。この曲をとりあげる時、ミュージシャンはその歴史的ヴァージョンに沿って演奏することが多いというのがぼくの見解ですが、熱帯JAZZ楽団はカヴァーというよりも"再創造"という感じです。サックス・セクション全員が立ち上がって華麗なチェイスを繰り広げ、松島啓之も熱気たっぷりのトランペット・プレイを披露。その背後では森村献が素晴らしく粒立ちの良いピアノ・タッチでソリストを鼓舞し、リズム隊全員がうねりにうねります。スウィング系ビッグ・バンドを聴き込んだ方であればあるほど、「この曲にこんな解釈があったのか!」と、快い驚きに包まれるに違いありません。

優れた作曲家を擁しているのも熱帯JAZZ楽団の良さです。自身のバンド"オバタラ・セグンド"でも旺盛な活動を続けるトロンボーン奏者・中路英明が書いた「Ruinas」はホレス・シルヴァーやジェリー・ゴンサレスの音作りも彷彿とさせるナンバー。作者のトロンボーン・ソロを筆頭に、モダン・ジャズとラテンの正面衝突と呼びたくなるサウンドでリスナーを興奮に導きます。佐々木史郎作曲の「Coconuts Baby」では彼のトランペット・プレイはもちろん、バリトン・サックスの中村尚平やコンガの岡本健太など気鋭メンバーのプレイも満喫できました。そしてリーダーのカルロス菅野は今回もパーカッション、ヴォーカル、MC、指揮(今回は指揮棒を用いました)などで大忙しのパフォーマンス。渋い歌声が冴えるヴォーカル・ナンバーは「Fly Me to the Moon」でした。その他、ウェザー・リポートの隠れ名曲「Palladium」("同バンドのサックス奏者ウェイン・ショーターが、ブロードウェイ53丁目にあったラテン系ボールルーム「パレイディアム」に思いを馳せて書いた"ときいたことがあります)、必殺の「September」など、大サービスのプログラムで満腹感を味わわせてくれました。

"THE 忘年会 LIVE"は本日も開催されます。

(原田 2018 12.28)

Photo by Takuo Sato

SET LIST

2018 12.27 THU.
1st
1. S.W.A.T
2. SING, SING, SING
3. RUINAS
4. FLY ME TO THE MOON
5. PALLADIUM
6. COCONUTS BABY
7. CAN’T TAKE MY EYES OFF YOU
EC. GETAWAY
 
2nd
1. S.W.A.T
2. SING, SING, SING
3. RUINAS
4. FLY ME TO THE MOON
5. PALLADIUM
6. COCONUTS BABY
7. CAN’T TAKE MY EYES OFF YOU
EC. SEPTEMBER

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