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Blue Note Tokyo 30th Anniversary presents DAVID SANBORN QUINTET featuring MICHAEL DEASE, BEN WILLIAMS, GEOFFREY KEEZER & BILLY KILSON

artist DAVID SANBORN

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

別格のアルト・サックス奏者、デヴィッド・サンボーンが昨日から熱演を繰り広げています。去年のステージではトロンボーンやアコースティック・ベースを入れた新たなバンド編成、モダン・ジャズへのリスペクトを感じさせるサウンド作りでオーディエンスを驚かせましたが、今年はそれがさらに進化し、いっそうハードに、エモーショナルに心をつかみます。

共演メンバーはマイケル・ディーズ(トロンボーン)、ジェフリー・キーザー(ピアノ、キーボード)、ベン・ウィリアムス(アコースティック・ベース)、ビリー・キルソン(ドラムス)。ロイ・ハーグローヴ・ビッグ・バンド等で活動したディーズ、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ('90年にリーダーの死去で消滅)最後のピアニストでもあったキーザーは新加入です。ウィリアムスとキルソンはもちろん、2017年公演と同じく鉄壁のリズム・セクションを構成して、ソリストを煽りに煽ります。

オープニングは盟友マイケル・ブレッカーへのトリビュートも兼ねてか、彼の書き遺したナンバーから「Tumbleweed」と「Half Moon Lane」がプレイされました。いずれも15分ぐらいは演奏されたように思います。サンボーンの切れ味鋭いアルトの音と、ディーズの太く優しいトロンボーンの音がハモリつつテーマ・メロディを提示し、以降はいわゆるモダン・ジャズのようにアドリブ・ソロのリレーが続きます。バックの音が高まっていくにつれ、サンボーンの吹奏はシャウトするように炸裂し、フレーズがどんどんアグレッシヴになっていきます。そういえば彼はセントルイスで活動していた頃、同地のフリー・ジャズ集団"ブラック・アーティスツ・グループ"('68年発足)と交流していたはずだ・・・などと思いながら、ぼくはサンボーン渾身のブロウに酔いしれました。前回参加したワイクリフ・ゴードンや、アンドレ・ヘイワードらと並ぶハード・バップ系トロンボーンの最右翼であるマイケル・ディーズも歌うようなフレーズ、芳醇すぎるほどの音色でクライマックスをつくります。

いわゆるフュージョン時代の大定番「Maputo」も、'80年代の大ヒット・アルバム『ダブル・ヴィジョン』に入っているそれとは味付けがまったくといっていいほど異なっています。アフリカン風味がふりかけられた8分の6拍子で始まりましたが、やがてテンポはどんどん変わり、組曲のような展開に。サンボーンの後ろではブッカー・T&ジ・MGズの「グリーン・オニオンズ」のようなリフとシャッフル・リズムが鳴り響き、それが静まったと同時にディーズが出てきて甘く優しい音色をミュート・トロンボーンから放ちます。後半、ミュートをとり、ソロがさらなる盛り上がりに達すると曲調は一転、キーボードとベースがユニゾンで新たなリフを演奏して、パフォーマンスはさらに発展していくのです。

その他サックス、ピアノ、ベースのトリオ演奏によるバラード「It's All in the Game」('50年代のポップ・ソングですが、どこかAOR風なハーモニーがほどこされていました)あり、ウィリアムスの美しい無伴奏ベース・ソロもフィーチャーされたディアンジェロの「Spanish Joint」ありと、多彩そのもののプログラムで時間を忘れさせてくれました。このニュー・バンドの演奏はまだディスク化されていません。つまりライヴで聴くしかないのです。最新型のサンボーンを、ぜひ満喫していただければと思います。公演は29日まで!

(原田 2018 11.27)

Photo by Tsuneo Koga

SET LIST

2018 11.26 MON.
1st
1. TUMBLEWEED
2. HALFMOON LANE
3. MAPUTO
4. ALL IN THE GAME ~ WHEN YOU WISH UPON A STAR
5. SPANISH JOINT
6. ON THE SPOT
 
2nd
1. TUMBLEWEED
2. HALFMOON LANE
3. MAPUTO
4. ALL IN THE GAME ~ WHEN YOU WISH UPON A STAR
5. SPANISH JOINT
6. ON THE SPOT
EC. THE DREAM

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