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Blue Note Tokyo 30th Anniversary presents DAVE GRUSIN BIG BAND "THE MUSIC FROM WEST SIDE STORY" -Leonard Bernstein Centennial Celebration-

artist DAVE GRUSIN

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

30周年の「ブルーノート東京」に、生誕100年のレナード・バーンスタインが書いた名曲が響き渡る極上のひとときがやってきました。題材は20世紀を代表するミュージカル/映画の『ウエスト・サイド・ストーリー』、編曲・指揮・ピアノは来年85歳を迎える巨匠デイヴ・グルーシン(ジャズ・フュージョン畑での活躍以外にも、『卒業』『恋のゆくえ』等の映画音楽でも著名)。文字通りのスペシャル・パフォーマンスです。

演奏はグルーシンと共にアメリカからやってきたメンバーと、日本の凄腕たちによるオーケストラ編成で行なわれています。ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラの面々が多数、参加しているのも嬉しいところです。エリック・ミヤシロのトランペットが火を噴く序曲「Prologue」からオーケストラのパワーは全開。ゴージャスなアンサンブル、強烈なリズム、カラフルなアドリブ・ソロの三位一体に引き込まれます。「Something Coming」ではトム・ケネディによる、右手すべての指を使って奏でられる超高速ベース・ラインが唸りをあげ(ぼくにとって彼は、ブライアン・ブロンバーグと並んで"アップライト・ベースの上限"を極めているように感じられます)、トムのベースと吉田治のバリトン・サックスがユニゾンで印象的なフレーズを奏でる「Cool」では、全員一体となってファンキーにスウィング。リー・リトナーのサブスティテュートを務めることになった養父貴のギターも快演を繰り広げます。

『ウエスト・サイド・ストーリー』には"ポーランド系少年少女グループとプエルトリコ系少年少女グループの対立"、その中のメンバーである"トニーとマリアの禁じられた恋"というテーマがあります。ア・カペラ・シンガーとしても人気を集める伊藤大輔は「Maria」や「Somewhere」でマリアへの、弾き語りの分野でも知られる国貞雅子は「Tonight」でトニーへの思いを高らかに歌い上げました。グルーシンの粒のそろったアコースティック・ピアノの音色も絶品です。また、「I Feel Pretty」や「Jet Song」では原作サウンド・トラックに含まれていたラテン音楽の要素を拡大し、エキサイティングこのうえない仕上がりで聴く者を魅了します。冴えわたるブラス・セクション、三沢またろうの軽やかなパーカッション、ボブ・シェパードのフルート等が、次々と聴きどころをつくりました。

ぼくはミュージカルやミュージカル映画をかなり見てきたつもりですが、『ウエスト・サイド・ストーリー』ほど各曲のキャラクターが強烈に立った作品には出会ったことがありません。グルーシンの解釈は自ら"アワ・ヴァージョン"と語るように、映画で流れているテイクを踏襲しているわけではなく、彼独自のタッチをガンガン導入したものですが、それがバーンスタインの書いた"強い"メロディと融合して、得も言われぬ芳香を放つのです。ぼくにはバーンスタインとグルーシンが音楽上で握手しているようにも感じられました。この超巨大スケールの音楽絵巻はブルーノート東京で17日まで開催されます。もしあなたがオーケストラ好きやミュージカル好きであれば、目がうるむほどの感動を得るはずです。

(原田 2018 11.16)

Photo by Yuka Yamaji

SET LIST

2018 11.15 THU.
1st
1. PROLOGUE
2. SOMETHING’S COMING
3. COOL
4. MARIA
5. ONE HAND, ONE HEART
6. TONIGHT
7. I FEEL PRETTY
8. SOMEWHERE
9. JET SONG
10. AMERICA
 
2nd
1. PROLOGUE
2. SOMETHING’S COMING
3. COOL
4. MARIA
5. ONE HAND, ONE HEART
6. TONIGHT
7. I FEEL PRETTY
8. SOMEWHERE
9. JET SONG
10. AMERICA
EC. LUCKY TO BE ME (SOLO)

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