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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

"ハイブリッド・ワールド・ミュージック"の真髄に包まれた気分です。

スナーキー・パピーのマイケル・リーグを中心とするユニット、ボカンテ(クレオール語で"交流"という意味)が初来日公演中です。カリブ、アジア、ヨーロッパ、北アメリカの血をひくメンバーが集まり、2017年にファースト・アルバム『ストレンジ・サークル』を発表。先ごろメトロポール・オルケスト(ジュールズ・バックリー指揮)との共演盤『ホワット・ヒート』を、ピーター・ゲイブリエル(ロック界のカリスマにして、82年からワールド・ミュージック・フェス「WOMAD」主宰)のレーベル"リアル・ワールド・レコード"からリリースしました。音源やYoutubeで既にボカンテの世界に魅了されている方も数多いとは思いますが、ステージいっぱいにメンバーが並び、アイコンタクトをしながら一丸となってプレイしていくさまは、視覚的にも聴覚的にも圧巻のひとことにつきます。

パーカッション奏者とギター奏者がそれぞれ3人おり、加えてラップ・スティール・ギターが大きくフィーチャーされるという独特の楽器編成。そしてリード・ヴォーカルのマリカ・ティロリエンは主にクレオール語でときにリズミカルに、ときにリリカルに歌いあげます。ハーモナイザーを駆使したマリカの歌声とパーカッションが織りなすポリリズムが見事に絡み合い、その上を泳ぐようにルーズヴェルト・コリアー(LP+配信で出ているリーダー作『Exit 16』も圧巻です)のラップ・スティールが鳴り響きます。このユニットの発起人といえるマイケル・リーグは、ウード(アラブ文化圏で使われる弦楽器)とギターを担当。スナーキー・パピーでのベース・プレイや、ロックの重鎮デヴィッド・クロスビーとのコラボレーションで彼に惹かれた方も、ボカンテでの演奏ぶりにはまた新たな驚きを得ることでしょう。

「All the Way Home」では、ポール・サイモン、デイヴ・リーブマン、ラズロ・ガードニー(山中千尋の師)などと共演を重ねてきた大ベテランのジェイミー・ハダドのきめ細やかなパーカッションが際立ち、「Don't Do It」では2ギター+ラップ・スティール+ベース(ドラマーとして数多くの来日経験があるルイス・ケイトーが担当)が分厚いユニゾン・フレーズを奏でるなか、ボブ・ランゼッティが超絶的なギター・ソロを繰り広げます。バンダ・マグダやJ-Squadでも「ブルーノート東京」に登場したことのある小川慶太は「Réparasyons」で華やかなソロを展開、もうひとりのパーカッション奏者であるスウェーデン出身のアンドレ・フェラーリは「Nou Tout Sé Yonn」(「私達はみんなひとつ」という意味だそうです)で大きな拍手を受けました。

マイケル・リーグの関わるプロジェクトは、とことんミクスチャーの面白みを伝えてくれます。彼もまた、数々の名音楽家がそうであったように、"ミダス・タッチ"の持ち主なのでしょう。ボカンテのサウンドは、現代ジャズのファンはもちろん、アフロビート、ザディコ、カントリー・ブルース、河内音頭などを愛する者の心をも揺らすと思います。必見の公演は本日まで!

(原田 2018 10.11)

Photo by Tsuneo Koga

SET LIST

2018 10.10 WED.
1st
1. O La
2. Fanm 9
3. Limyè
4. Roudesann
5. Chambre à Échos
6. Nou Tout Sé Yonn
EC1. Vayan
 
2nd
1. Bod Lanme
2. All the Way Home
3. Don’t Do It
4. Apathie
5. Jou Ké Ouvè
6. Ré perasyon
7. La Maison En Feu
EC1. Nou Tout Sé Yonn

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