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JOYCE MORENO with special guest CHICO PINHEIRO "celebrating 50th anniversary of debut" @COTTON CLUB

artist CHICO PINHEIRO , JOYCE

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


コンスタントにアルバムを出し、コンスタントに来日してくれる。これはファンにとって本当にうれしいものです。ソロ・デビュー50周年を迎えたブラジルの名花、ジョイス・モレーノが最新作『50』を携えて、明日からブルーノート東京に登場します。ぼくはおととい「コットンクラブ」で行なわれたステージに足を運び、ジョイスをはじめとするメンバーたちの変わらぬ充実ぶり、次から次へと出てくる美しいメロディとリズムに酔いしれました。しかも今回は、ブラジリアン・ジャズの才人、シコ・ピニェイロ(いつか彼自身のリーダー・バンドでも公演してほしいと切望します)をゲスト・ギタリストに迎えての来日ですから、ボサ・ノヴァやMPB好きはもちろん、ジャズ・ファンにとっても必見といっていいでしょう。

『50』は、記念すべきファースト・アルバム『Joyce』の楽曲を現代の感覚で再録した作品です。かつて自分が完成させた傑作絵画をまた新しいキャンバスに描き直すような大胆不敵な試みですが、逆に言えばジョイスはそれほど現在の演唱に強烈な自負を持っているということでもあるのでしょう。プログラムの前半では「CANTIGA DE PROCURA」、「NÃO MUDA NÃO」(変わらないで)、「ANOITECEU」(日暮)などが披露されましたが、とにかく歌もアコースティック・ギターも"みずみずしい"のひとことに尽きます。そしてぼくは新鮮なサウンドに触れて、こうした曲が遥か50年も前に作られていたという事実に改めて驚くしかありませんでした。

シコ・ピニェイロを加えて、まず演奏されたのは「MISTERIOS」。彼のエレクトリック・ギターがジョイスの歌に絶妙なオブリガートをはさみ、ジャズとブラジル音楽を結ぶ第一人者であるエリオ・アルヴェスも鮮烈なピアノ・タッチを聴かせます。続いては、エリオがシコとふたりきりで演奏した「ENCONTRO」。ぼくは"パット・メセニーとハービー・ハンコックがブラジルの空気を吸いながら、ふたりきりで演奏したらこういう感じなのかな"と思いながら楽しみましたが、互いに触発しあいながらも、決して荒っぽくなることなく、優美さを失わぬまま続くパフォーマンスはまさしく絶品でした。

やがてジョイスが戻り、アメリカのジャズ・ジャイアンツに捧げた「MINGUS,MILES & COLTRANE」、「PENALTY」などをバンドと一丸になって披露。十八番の「FEMININA」ではシコが超絶的なアドリブを展開し、ジョイスも低音弦を叩くように鳴らしながらメロディをフェイクして歌います。それを煽るのは夫君、トゥチ・モレーノのドラムスです。"こんなに即興的で、激しい「FEMININA」はこれまで聴いたことがない"・・・オーディエンスの大半がそう実感したのではないでしょうか。オーラスは、大作曲家アントニオ・カルロス・ジョビンの書いた「O MORRO NÃO TEM VEZ」。ボサ・ノヴァの歴史、自身の豊富なキャリアをしっかり見つめながら前進を続けるジョイス。そのスケールの大きさに改めて感服させられたひとときでした。ブルーノート東京公演は10月4日と5日!
(原田 2018 10.3)

Photo by Yuka Yamaji


●JOYCE MORENO with special guest CHICO PINHEIRO
"celebrating 50th anniversary of debut"
2018 10.4 thu., 10.5 fri. ブルーノート東京
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