LIVE REPORTS

ARTIST ARCHIVES

MONTHLY ARCHIVE

VIDEO ARCHIVES


AI KUWABARA with STEVE GADD & WILL LEE

artist STEVE GADD , 桑原あい

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


気鋭クリエイターたちとの共演を収めた最新作『To The End Of This World』を8月22日にリリースしたばかりの桑原あい。彼女とウィル・リー、スティーヴ・ガッドによるドリーム・チームが、1年3か月ぶりにブルーノート東京に帰ってきました。桑原にとって、ウィルとガッドは彼女が小学生の時にジャズやフュージョンに開眼して以来のスーパー・ヒーロー。レコード、CD、映像、ライヴなどで何百回も彼らの演奏に魅了され、いつか共演できたらと夢見ていました。それが初めて実現したのは2017年2月のこと。今回のライヴは、記念すべきアルバム『Somehow, Someday, Somewhere』からのナンバーに加え、書き下ろしのオリジナルや、あっと驚くカヴァー曲まで、前回以上に盛りだくさんのステージです。

オープニングはアルバムの冒頭も飾っていた「Somehow It's Been A Rough Day」。片手に2本ずつ、計4本のブラッシュを持ったガッドがコクのあるビートを刻み、ウィルはスラップ奏法やコード弾きを交えながら桑原のピアノ・プレイを盛り立てます。この1曲で相性の良さをたっぷり示した後は、桑原が最も好きなナンバーのひとつだというミシェル・ルグラン作「How Do You Keep the Music Playing?」。"演奏するなら、ぜったいこのふたりとやりたい"と思っての選曲だそうです。パット・メセニーのギター・シンセサイザーを彷彿とさせる音色で展開されるウィルのソロ・パートも絶品でした。

続いては、カンヌ映画祭でパルムドールを獲得した1959年公開映画『黒いオルフェ(Black Orpheus)』からのメドレー。"幸せ"を意味する「Felicidade」ではウィルのポルトガル語ヴォーカルがフィーチャーされ、さらにベースとスキャットのユニゾン・プレイも披露。そのまま抒情的な「Manhã de Carnaval」へと移り、「Samba de Orpheus」ではガッドの華やかなドラムスが場内を大いに沸かせました。左手に2本のブラッシュ、右手に2本のスティックを持ち、さらにカウベル・プレイまで盛り込んだ叩きっぷりの、音色の厚さと太さには聴きほれるしかありません。

3人は他にも新曲「Whereabouts」、「SAW」(3人の名前の頭文字)、デイヴ・ブルーベックのカヴァー曲「Blue Rondo A La Turk」などで抜群のコンビネーションを聴かせ、オーラスでは人気曲「The Back」をしっとりと披露。この曲は桑原がスランプ状態だったときにクインシー・ジョーンズから励ましの言葉を受けたこと、去っていく彼の大きな背中にインスパイアされて生まれたとのことですが、いまではこの"背中"は敬愛するすべての対象を示す言葉であるようです。メロディをいつくしむかのようなトリオのプレイは"慈愛"という表現がぴったり。限りない余韻を残してライヴは締めくくられました。

ウィルは矢野顕子トリオ、ガッドは自身のバンドでブルーノート東京に登場したのも記憶に新しいところですが、それとはまた一味異なる、実に興味深いプレイが満喫できることは間違いありません。百戦錬磨の彼らが、桑原の提供する新しいマテリアルにエキサイトしていることが伝わってくるのです。公演は本日までブルーノート東京、24日はモーション・ブルー・ヨコハマで開催されます。
(原田 2018 9.23)

Photo by Takuo Sato

●AI KUWABARA with STEVE GADD & WILL LEE
2018 9.22 sat., 9.23 sun. ブルーノート東京
詳細はこちら
2018 9.24 mon. モーション・ブルー・ヨコハマ
詳細はこちら

SET LIST

2018 9.22 SAT.
1st & 2nd
1. Somehow It’s Been A Rough Day
2. How Do You Keep The Music Playing?
3. Black Orpheus Medley
4. Whereabouts
5. SAW
6. March Comes in Like a Lion
7. All life will end someday, only the sea will remain
8. Blue Rondo A La Turk
EC. The Back

INDEX